本書では、電機メーカーがイノベーションの波に上手く乗れなかった事例としてシャープを挙げた後、より一般的な考察として、日本の大企業中央研究所方式とその衰退と米国のSBIR (Small Business Innovation Research)との比較を行っている。そして、日本固有の現状課題の分析といくつかの提言を行っている。
繰り返しになるが、本書の主題は日本のイノベーション・成長が起きないことに関する課題と、それをどのようにして克服するのかということにある。その前段としてのシャープの事例解説であったが、一方で国家としての成功事例とみなすことのできる米国との政策比較を行っている。著者が高く評価するのがSBIR (Small Business Innovation Research)という仕組みである。米国でも80年代初頭までは、大企業の研究所が科学者がその身を寄せる場として当然のものと考えられていた。日本と同様にベル研究所を筆頭に中央研究所がうまくいかなくなったが、80年代から90年代で確立したSBIRという起業・イノベーション支援の仕組みが、シリコンバレーを中心にいくつものベンチャー企業とともに新規産業が立ち上がった理由であると分析している。一方の日本の中小企業支援の仕組みは、起業やイノベーションをエンカレッジするのではなく、既存企業を保護する方向で利用されたために、上手くいかなかったと分析する。そもそも日本の行政官側に「目利き力」が決定的になく、実績を元に資源配分を行っていたため、米国に遅れて実施した日本版SBIRでは採択企業が逆に2億円の売上減になっており、国費による補助金がイノベーションのサポートよりも衰退企業・事業の本来あるべきでない延命のために使われているのではないかと想定される。