【感想・ネタバレ】福家警部補の報告のレビュー

あらすじ

天才的技倆を持った漫画家と彼女を潰しにかかる出版社の辣腕営業部長、もとは同人誌で合作していた二人が不幸な結末を迎える「禁断の筋書」、ヤクザが仲間割れのあげく相討ちしたように偽装された殺害現場に佇んでいた栗山比奈が目撃証言を拒む理由とは……「少女の沈黙」、車椅子の妻をいたわる夫、息子なきあと一見穏やかな日々を過ごしている老夫婦が悪党どもを爆弾で吹き飛ばし、官憲の捕縛を逃れて痛快なメッセージをよこす「女神の微笑」、以上3編を収録。『福家警部補の挨拶』『福家警部補の再訪』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第3集。/解説=森谷明子

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ネタバレ

 大倉崇裕さんの『福家警部補』シリーズ第3作。今回も動機の面で興味深い3編が揃っている。倒叙ミステリは犯人のキャラが立ってこそ面白い。

 「禁断の筋書(プロット)」。漫画家として成功したみどりの前に、かつての同人誌仲間である真理子が、出版社の営業部長として立ちはだかる。みどりは、生殺与奪を握る真理子を殺害した。同情する面はあるが、もちろん殺してよいわけではない。

 「少女の沈黙」。先代組長の意思に従い組を解散し、元組員の就職先確保に奔走する菅原。情に篤いようで、元ヤクザらしく手段を選ばない冷酷さも持ち合わせる。元ヤクザとはいえ四課が絡んでくるが、淡々と応じる福家警部補。

 「女神の微笑」。銀行強盗計画を決行直前の3人組が、車内で爆殺された。作り話とはいえ被害者に同情はしないが、犯罪者だから殺してよいわけではない。何だかこのシリーズにそぐわない派手な犯行と、犯人像という気がするが…。

 倒叙ミステリには、犯人側と捜査側の根競べという面があり、福家警部補シリーズも真犯人の根負けを待つという展開が多かったが、今回の3編に関しては、最後の最後に詰めの証拠を突きつける、というパターンになっている。

 とはいえ、それらの証拠は偶然の要素が強く、白を切り通そうと思えば切り通せたのでは? という気がしないでもない。かといって、明確すぎる証拠では興醒めすしてしまう。倒叙ミステリとしての匙加減の難しさも感じた。

 通常のミステリに対し、倒叙ミステリは作家としても難易度が高い。おそらく、トリック物よりも。前例が多くはない故に、挑む作家も多くはないのだろう。失礼ながら、メジャーな存在ではない福家警部補シリーズの、末永い存続を祈る。

 それにしても、「女神の微笑」のオチはどうよ。さすがに、福家警部補もはらわたが煮えくり返っているのでは。続きはあるのだろうか。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

福家警部補三作目。

ちょっと長めの短編集。
漫画家の話、ヤクザの話に、犯人に逃げられた話。
漫画家の話では福家警部補のオタクっぷり全開で面白かったが、
ヤクザの話は犯人の男らしい感じが良かったかな。

ちらりちらりと、見えそうで見えない福家警部補の過去が気になる。
ヤクザの若頭や、仲間の警部補と何があったのだろう。
いや、それよりも、福家警部補が捜査で出会う目撃者や証言者たちの人生を
ほんの少し変えていくのが気になる、というか楽しい。

しかし、財布を忘れたり、部下の携帯電話をバッグに入れてしまったり、
警察手帳を食堂のトレイにのせて返してしまったり、
ボケ具合が増してないだろうか?

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2020年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読だったみたい。全部内容を知っていた話だった。第1話は多分ドラマでもやっていたのを見た気がする。第2話の元ヤクザさんは気の毒すぎるね。本人はあれで満足なのかもしれないけど…。殺された人たちはホントに社会の害悪だしねぇ。守った元組員たちがちゃんと生きて行ってくれるといいね。3話目の夫婦はまた出てくるのかな?

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2020年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 総合評価 ★★★★☆
 童顔で小柄な福家警部補が活躍する倒叙ミステリのシリーズ第3弾。第1弾はそこそこ面白かったが,第2段で,話の展開,倒叙としての犯人の追い詰め方に不満があるとして厳しい評価をしていた。しかし,第3弾はうって変わってどの作品もなかなかの完成度を誇る。
 倒叙ミステリは,よほどうまく書かないと意外性はない。形として刑事(探偵)対犯人の構造になるので,主人公と犯人役のキャラクターが大きなポイントとなる。福家警部補は「コロンボ」や「古畑任三郎」に比べるとやや個性がないと思っていたが,シリーズを重ねることで,女性であったり,小柄で童顔といった特徴以外に,さまざまな分野に造詣が深く,特にサブカルチャーに造詣が深いオタクで,事務処理能力や整理整頓はともかく,犯罪捜査については極めて有能。暴力団からも恐れられているとかなり個性が出てきた。この作品では犯人約が,漫画家,元暴力団幹部,元会社経営者の技術者(法の目を潜り抜けた犯罪者を殺害している)といった前作に比べ魅力的な設定になっている。これらの犯人対福家警部補という構造はなかなか面白い。福家が犯人のめぼしを付けるポイント,犯人の追い詰め方もいい感じに描かれている。このシリーズの逆転は,最後,犯人に犯行を認めさせるポイント。この部分が今まで弱かった。この作品でも,ブローチを使った罠,ダイヤにより凶器に傷があったこと,車のウインドウの故障により指紋が残っていたこと…まぁ,及第点ギリギリといった感じ。最後の部分だけでなく,主人公と犯人の魅力,話運びの上手さで読ませるという仕上がりになっている。心に残るような作品ではないが,さらっと読む分には不満の無いデキ。★4としておきたい。

〇 禁断のプロット ★★★☆☆
 漫画家の河出みどりが,かつて一緒に漫画を描いていた友人であり,現在は敏腕編集者として自分を干そうとしている三浦真理子を風呂場での事故死に見せかけて,殺害する。福家警部補は河出みどりのファンだった。福家は,階下の住人が杖の音を聞かなかったこと,ふろ場の水の残り方から三浦真理子が倒れたときは風呂場の出入り口はしまっていたのに,発見時には開いていたと推理したことなどから,三浦真理子は殺害されたと考え,河出みどりを疑う。三浦真理子の靴やペンに指紋がないことなどから,普段から手袋をしている人を疑う。河出みどりは普段から手袋をしていた。ペンの置き方から右利きの人間がいたと推理する(三浦真理子は左利き)。福家は,河出みどりが殺害の後,指をケガしていて,普段と別の指で指紋認証をしていたことなどで,河出みどりをゆさぶる。最後は,細田理恵子と河出みどりの二人しか持っていないブローチを使って河出みどりに対し罠を仕掛け,決定的な証拠を得る。久しぶりに読んだ「福家警部補」シリーズの短編だったが,話運びが上手く,思いのほかたのしめた。相変わらず,最後の決め手となる部分が分かりづらいという欠点はあるが…。★3で。

〇 少女の沈黙 ★★★★☆
 元暴力団の幹部,菅原巽は,自分の姪を誘拐した元組長の息子である次郎を,かつての組の仲間で今はクスリを売っている金沢を利用し,チンピラの仲間割れに見せかけて殺害する。殺害現場を発見したのは交番のお巡りさん。福家は,殺害された次郎がジャケットを着ていたことから,目上の者と会おうとしていたのではないかと推理する。金沢は競馬でかなり設けており,誘拐の手伝いをする必要がない。誘拐された比奈という少女が一人でさらわれたとしか思えない状態でさらわれたことからも疑いを深める。窓に置かれたランタンにより,比奈の発見が早まったことから犯人は優しい人間だと推理し・・・菅原を疑う。ホームレスが金沢のハズレ馬券を車から盗んでいたことなどから,金沢と次郎の共犯関係を疑う。比奈に菅原の面通しをするが,比奈は菅原を庇って別人だという。その後,元暴力団員で菅原を慕う浜田という男が,自分が金沢と次郎を殺害したと自首してくる。菅原はかつてライバルだった飯森組の檜原の厚意で国外への逃亡を企てる。空港で福家は菅原と最後の対決。次郎と金沢を切ったドスには,ダイヤのような固いものでついた傷があった。その傷は菅原の指輪のダイヤでできた傷だった。この決め手で菅原は犯行を認める。これはなかなかの作品。犯人の人物像もいい。倒叙モノらしく福家が菅原を追い詰めていく小道具の切れもいいし,最後の決め手もスマート。★4で

〇 女神の微笑
 後藤秀治と喜子は,犯罪者を完全犯罪で殺害していた。今回は宝石店強盗未遂犯を爆殺する。福家は,レストランに不自然な予約があったこと,その影響で爆破の影響が少なかったことなどから,単なる誤爆ではなく,爆殺事件があったと考え,爆殺現場の近くにいた元技術者の後藤夫妻を疑う。福家は後藤の家に捜査に行き,後藤夫妻が三帆銀行の名を知らないはずなのに,その名を出したことで疑惑を深める。福家は後藤夫妻がよく行く公園での捜査,宝石店強盗未遂犯の仲間で爆弾を作る技術があると思われる安藤という男の知人の捜査などをする。福家は後藤夫妻についての調査を石松という刑事に依頼する。そして後藤夫妻がこれまでも法の目を潜り抜けた犯罪者を始末していた可能性があることを知る。その後の捜査により,後藤夫妻が宝石店強盗事件の話を公園で唇を読む方法により知っていたことに気付き,後藤夫妻に伝える。最後の決め手は指紋。犯行に使われた車
は窓が壊れており,完全に閉まらなかった。その部分に後藤秀治の指紋が残っていた。後藤夫婦は4課が連行するが,支援者の助けもあり,警察の手から逃亡する。福家のもとに「楽しかったわ。また会いましょう」というメールが来て終わり。これもなかなかの作品。決めてが指紋という点がやや不満だが,犯人,特に喜子が魅力的な犯人として描かれている。★4で。

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2018年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このシリーズ好きです。でもこれが最後っぽい。

福家警部補のように、ぐうの音も言わせない証拠を丁寧な言葉で突きつけられると、犯人はさわやかに降参できそう。たぶんないけど、自分が逮捕されるようなことがあればこんな刑事さんに逮捕されたいです。

短編と長編の間の中編というのかな、読みやすいボリュームで大満足でした。できれば続編を。。。

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2017年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「禁断の筋書(プロット)」
仲良しのままでいれたら、こんなことにはって思う 同じものが好きで同じものを追いかけていてもいつか道は別れる
残された方が何が出来るかー編集の道に入った真理子は正しかったけど、復讐だけが目的になっちゃうと悲しい
色んなところから綻びは出る

「少女の沈黙」
これは殺される方が悪いーって言っちゃいけないけど、変われないと困ることがたくさんあって、立ち止まることがいいことにはならない。あと子どもに怖い思いさせちゃダメだし…この子は
守りたくなる少女の気持ちがわかっちゃいけないんだろうけど、色んな人が守ろうとしたものが彼の人柄なのかも 生きるの難しい

「女神の微笑み」
1番怖い犯人
そして、英雄になりやすい犯罪者
罪に問われなかった悪人に罰を
こうならないように、最初にちゃんと罪は暴かれて罰を受けなくちゃならん
最後が怖すぎる

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2024年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2016年 文庫
.禁断の筋書
  犯人は漫画家みどり
  営業部長で高校からの友人を殺害
  この友人がちょっと..意地悪すぎるので
  犯人に同情した
.少女の沈黙
  犯人は元ヤクザの菅原
  解散した組の親分の娘が誘拐され
  その誘拐犯等2人を殺害
  この殺された2人も
  余り可哀想には思わず..
菅原に逃げ延びてほしいと思った
こういう人情味厚いけれど
  人を殺す犯人を容赦なく
  追い詰める警部補
.女神の微笑
  爆弾犯の車椅子の犯人と夫
  仕事人の様な動機
  この話が一番面白かった
(犯人と警部補の対決が)
「また会いましょう」で終わったので
  この犯人は又でてくるのかも..

今回の話でわかったのが
福家警部補は..
手帳や物 小銭の管理 整理整頓が
  まず出来ないだろうということ
  ヤクザのNo.3にも
  一目置かれているということ
  恫喝等にもビクともしないところ
  お汁粉が好き

 
  

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2023年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

毎回のやり取りにちょっと飽き飽きしていた前作だったが、
今作は福家警部補のキレっぷりが光って面白かった。威圧感なども出てきて存在感が増している。
最後はこの先も読みたくなる文章で締められており、次も早く読みたい。

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2020年11月04日

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