あらすじ
聖武天皇の御世、後宮で働くべく阿波国から上京してきた若子。同室になった姉御肌の笠女、魔性の春世ともども暮らす宮中は、色と権謀の騒動続きで……。仕事に意地をかけ、乙女心に揺れ、人知れぬ野望を育む先に何が待つ? 平城京を蔭で支えた女官たちをいきいき描く宮廷青春小説!
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Posted by ブクログ
奈良時代、三人の采女たちの青春群像劇であり、難しく弱い立場で生きねばならない彼女たちの、意思と強さの物語。
宮人である彼女たちの、現代の会社勤めに通じるような人間関係や様々な縛り、男女の差、その中でもがきながら友情を育む様がよく、終盤での大きな権力にしたたかに舌を出して守るべきものを守る姿に感動した。というか、素直におもしろいし泣ける!
そして古代史専攻の作者のこと、時代考証もしっかりしていて勉強になる。特に彼女たちのモデルがいて、その記録に触れ、作品がまた広がる感じがよい。
(その後の大事件や疫病を思うと……な部分もあるけどそれも含めて)
Posted by ブクログ
☆4のつもりだったが、最後まで読んで☆3にした。
元々古代の女性官僚について卒論執筆にあたって細かく調べたこともあり、するする読めるし理解も早かった。笠女(笠目)だけその人生の全貌を知っていたため、誰かの妻となったり女を使って出世したりしない部分をもって肩入れして読んでいたが、結局笠女のターンは少なく、その後の出世っぷりも描かれなかったのは残念。
とはいえ若子や春世までしっかり実在していたとは。彼女たちの子供についても調べると面白かった。また『万葉集』の授業をとっていたため、小鹿の登場もなんだか嬉しかった。
Posted by ブクログ
少女たちのお仕事青春小説かと思っていたが、内容はもうちょっと大人だった。
地方豪族の娘は郷里においては名家のご令嬢でも、中央に出てくれば田舎娘。
畿内豪族の娘との格差もあり、女性が職を持つといってもひとりで生きていくことは難しい。
若子は妹の代わりに急遽出仕が決まり、何の覚悟もろくな準備もないまま出てきたために仕事にも慣れずどこかふわふわしている。
それが現実を知ることにより自分の生きる道を見つける。
能力も高く男性に交じって仕事をしたいと思う笠女も、いざ男性官僚の能力を超えられると知られれば女だからとはじかれる。
恋愛に奔放な春世はそうしなければ生きていけなかった。
誘いを断っても受けても何か言われ、女からはやっかまれる。
子供だけが支えだが、ともに暮らせなくても仕事を続けるのは彼女なりの矜持だ。
最後に本当の愛を見つけられたようだがそれも長く続かず、一番世間に翻弄されたように見えた。
夢も未来も定まらなった少女たちが、己の道を見つけて成長していく物語に、当時の宮廷の様子や権力争いなどの政治的な話も加わってとても面白かった。
解説には主人公たちのモデルらしい人物の話もあり、そちらも読みごたえがあって良かった。