あらすじ
美形でボンボンで博識だが、自意識過剰で幼稚で無神経。人生の決定的な局面から逃げ続ける喰えない男、伊藤誠二郎。彼の周りには恋の話題が尽きない。こんな男のどこがいいのか。尽くす美女は粗末にされ、フリーターはストーカーされ、落ち目の脚本家は逆襲を受け……。傷ついてもなんとか立ち上がる女性たちの姿が共感を呼んだ、連作短編集。
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Posted by ブクログ
終始伊藤くんの性格、行動にプチイラ!あとその周りの女性にも少しプチイラ!けどどんどん読み進めちゃって、このイラっときちゃう感情だったりが、この本にのめり込んでるんだなって思ったー!
けどちょっと性的?というかそういうシーン多すぎて、そこまで入れなくてよくない?って思ってた^_^
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軽いタッチの恋愛もの…と思いきや、最後は読み手の心をえぐっていく深い話でした!セックス・アンド・ザ・シティがドンピシャ世代の私には特に刺さりました!
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自分がめっちゃ伊藤くんの思考回路を備えてる!と気付き、泣きたくなった。
自分を傷つけない生き方を選んできたよな・・・失敗してる人を笑ってきたよな・・・
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伊藤くんのように自覚した上でそう生きているわけではないけど、自分だけは傷つきたくない、与えられるのをひたすら待つ姿勢は正直自分にも多分になる気がして辛くなった。周りから自分を見たらこんな風に言語化できるのかと勉強にもなった気がする(?)
伊藤くんみたいにテコでも動かないぞ、という決意はないからこそ、結局どうしたらいいんだろうという戸惑いの中にいる。また読み返して咀嚼したい。
Posted by ブクログ
最初はイケメンクズ男に振り回される、伊藤くん周りの女たちの物語…だと思ってたけど。間違ってはいないけど。でも最後まで読んだ時に、伊藤くんの本性というか底が見えて、ひっくり返された感じ。ホラーとかミステリーじゃないのに(ミステリーなのか!?)恐怖でドキドキした。
聡子の話はずっとイヤ〜〜な感じがしてて、でもどこか既視感。実際に、親友といってる女の子たちの中にもこういう関係はありそうだなぁと思った。嫉妬と僻みって怖い。優劣つけない、つけられない世界にいきたい…。
最後の莉桜の話が強烈だった。現実では分かっているのに、これを辞めたらつなぎ止めている何かが壊れるから辞められない、みたいなものってあるよね。
伊藤くん…こんな人が実在してたら、絶対出会いたくないなぁ…。でもめちゃくちゃ面白かった。
Posted by ブクログ
想像していたのは、伊藤くんをめぐる様々な女の生き様や心情を描く小説。それが、伊藤くんEの章で完全に覆った。女同士の複雑な嫉妬や憧れを絶妙に表現する軸はそもそも秀逸。加えて、生きる中で傷つけられることが何よりも恐ろしいものだとぶちまけ、そうやって傷つけられることを恐れて、自分自身で蓋をしている部分がどこかにあるのでは、と自分の内面を振り返らせてくれる良書。
Posted by ブクログ
どの章も主人公はボロボロになった後、再起して終わるので、読後感は良かった。最終章で、伊藤くんが狂人なりの正論を述べるところ(結局はいつもの強がりだったと判明する)で、読者をグラっと揺るがせに来るが、これに負けるわけにはいかない、てのが人間の生きる道ですよね。最後、脚本家によって人間のクズ的なものの象徴にまで祀り上げられる伊藤くん、滑稽でヒサンだな~。
あと同性愛とか、肉体関係とかがないまぜになった、友情に関する描写が特に新鮮で何度か涙ぐんだ。
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後半になるほど、伊藤くんの、モンスターっぷりが際立つ。(A to E を筆頭とする)登場人物を見ていると、男女問わず、自分を欺き、人を侮った時に、人は伊藤くん化する気がする。クズケンは、表向きのキャラとは裏腹に、伊藤くんとは逆のベクトルの人間であるが、それでも人生が下降局面であるところが、なかなかリアルに感じた。
匿名
最初から最後まで好きになれなかった伊藤君。それぞれの視点から見ても、どの伊藤君も嫌な奴だった。最後だけ伊藤君の本音が聞けて、少し共感する所もあったけれど、ここで共感して自分に満足したらダメだと気づかされました。奥の深いストーリーだと気づきました。
Posted by ブクログ
伊藤くん……!!
クズなのに、モテる伊藤くんの様をAでみて
その魅力を知りたくてBに進むとまた違う伊藤くんの姿があって、どんどん伊藤くんが知りたくなってページを読み進めてしまった。結局は伊藤くんはクズだし、周りの女も割と捻くれている。柚木麻子さんの小説3作目だけど、女同士の友情が儚くて悲しい
Posted by ブクログ
5人の女性から見た伊藤くんの話。
伊藤くんがひたすらクズに見えていたが、最後の方にヒーローではなく白馬の王子様を待ち続けるヒロインだという文言で、なるほどなと腑に落ちた。伊藤くんがクズには変わりないんだけど、メンタルだけで言えば心当たりがある人は男女問わず少なからず居そう。ただクズを笑うだけじゃない、最後は読者にもちょっぴり苦さを残すところがおもしろい作品だった。
あとクズケンにはどうにか幸せになって欲しい。
Posted by ブクログ
伊藤くんを5人の女性の視点から見る物語。。
伊藤君と向き合うことで自分の足りなさとかをみんな見つけてて、それが自分に投影される、、、伊藤くんも◯ソだけど、それぞれの女性たちも◯ソだな、と。そしてわたしもそういう面あるなと、感じさせられる。さすが柚木麻子さんででてくる女性たちが立体になって浮き出てくる感じ。
Posted by ブクログ
最初は、なぜこんな男に、魅力的な女の子達が惹かれるのだろう、そして、何故こんなにもこの男は嫌な奴なんだろうと、不思議を通り越して嫌悪感を感じていた。
しかし、最後の"E"を読んで、すべての謎が解けた。
伊藤は、傷つくことから逃げるため、何も生み出さず、どこにも踏み出さない生き方を選んでいた。
そして、伊藤という男を描くという目的以外に、
全ての短編に共通するテーマがあることに気づく。
この連作は、プライド、傷つくこと、そしてそれらから目を背けることを一貫して描いていた。
それを表現したセリフの中でも、特に印象に残ったのは、修子の親友、マッキーの一言だ。
「世の中なんて嘘ばっかだよ。でも、プロってそういうものなんだよ。(中略)それが大人ってことなんじゃないの」
そして、伊藤は私だ、ということにも気づかざるを得ない。
しかも、それを自覚して一歩を踏み出そうとする莉桜ですらない。それが私だった。
私は、傷つかないための生き方を変えるつもりはなくて、
いつしか救われることを待っている。耳が痛かった。
Posted by ブクログ
どの女性も近くにいそうな感じが親近感が持てた。伊藤くんみたいな人も、実際にいる気がしてならなかったし、そういう人って頭の中で何考えてるんだろう、とか考えたりもした。
登場人物全員がリアルな作品は世界観に入りやすくて好き。
Posted by ブクログ
再読。
イケメンで実家がお金持ち、だけどプライドが高く何者にもなれない男、伊藤くんと関わる5人の女性の短編物語で構成される作品。
どの物語をとっても最低の人物としか思えない伊藤くんに振り回されながらも、それぞれの物語の主人公たちが自分自身と向き合い前に進む姿は読んでいて応援したくなる。
Posted by ブクログ
「カラフル」森絵都作→「伊藤くん A to E」
愛されて、憎まれて。
きちんと言語化できる程の伊藤くんの腹の括りっぷりは、自分にはない信念の強さを感じました。見習えないほどの。
伊藤くんに同性の友人がいないことは容易に想像できるけど、ここまで振り切れてたら、声をかけてしまうかも。食いつかれたら、逃げるけど。そんなゲスい野次馬根性が、モンスターにエネルギーを与えているのかも!
皆さんの感想を読んで、色んな考え方に触れることができて、2度楽しめる作品でした。
カラフルより、ある意味カラフル!
Posted by ブクログ
もっとポップな内容かと勝手に思い込んでいた。雰囲気としてはラブコメっぽいところもあるけれど、なかなかに深く抉ってくるお話。
5人の女性が、伊藤誠一郎という1人の男について語る形式。「伊藤くんA」「伊藤くんD」という感じで描かれる短編連作なので、A to Eというわけだ。
こういう手法は使い尽くされている。ということを皮肉っぽく取り上げる巧さがある。そしてシンプルに面白い。
伊藤くん、マジでクズなのよ。笑
でも何だろう…こういう要素を持った人身近にもいるよな…と思ったりも。
口だけ達者で一見深いものをもっているように見せかけつつ、ボンボン的バックグラウンドを持ち、実は臆病で何も出来ない薄っぺらい男。しかも目を見張るほどのイケメン。
5人のうちの数人は伊藤くんに恋をしているのだけど、彼に振り回されながら、どうしてこの人を好きなのだろうと自問自答する。
何でよ?と思いつつ好きをやめることができないところが恋心の厄介さ。
だけど女は基本男より、潔く過去をばっさり断ち切って前へ進む性質を持つ。という部分を伺わせる描写もある。
自分が好きな女には粘着に近い執着心を見せるけれど、自分を好きでいる女のこと雑に扱う。だけど後者が離れていくと、今度は変に執着する。
臆病で自信がないのに、プライドだけは人一倍。そんな伊藤くん。
伊藤くんに関わる女性たちもなかなかだけど。笑
最終章だけ雰囲気がちょっと違って、伊藤くんのこともその他の登場人物のことも抉って抉ってズタズタにしていく。
その他の章もそういう要素はあって、だけど全章通して前向き感があるので読後は悪くない。
だけど伊藤くん、このまま変わらないで生きていくんだろうなぁ、と思うと、そこだけは痛々しくちょっと切ない。
周りの人間たちは、何かしらの気づきを得ているのだけどね。
Posted by ブクログ
面白かった!
成長も前進もせずただすり減るだけの付き合いの末にほんの少し光が見える不思議。
伊藤くんに出会わないほうが心は平和だけど、出会ったことで心は強くなっている。
伊藤くんを肯定するのはしゃくだけど、彼の存在が確実に何かをもたらしているのが面白い。
何かになりたいともがいても無駄なようで全然違う角度で無駄ではなかったりする。人生ってこんな感じだよなーと思いながら読んでいた。
Posted by ブクログ
伊藤くん、どこか憎めないみたいな人かと思ったら一ミリも好きなところなくて最高。女性陣も完全勝利できるわけでもないし、どっか心にトゲが残る。
安全圏から好き勝手いう人ってやっぱり嫌われて当然なのかも。でも安全圏に居たいよね…
文庫版の表紙の伊藤くんはとっても素敵だったので中身のクズさとのギャップがすごかった。
Posted by ブクログ
昭和の文豪松本清張氏の『花氷』では肉食獣のようなゲス野郎が主役であるが時代は変わり本作ではイケメンで実家が金持ちなのに行動で不快感を与えるという伊藤くんを5人の女性の視点から描いた作品である。有名脚本家クズケンもなかなか屈折しており大抵の話だとこっちが主役になりそうだが伊東くんを主役にしているところに意図を感じる。
女性側の方もB編以外は同情し難い恋愛模様であるが最終編のEで実は恋愛話ではなく根幹というかアイデンティティに関わるので意外性もある。それにしても皆様直ぐにご性交という流れになっており凡夫以下な我が身からすると羨ましい限り。
Posted by ブクログ
アッコさんシリーズとはまた違うテイストの柚木麻子さんの本でした。
もうこれはホラーですね。
AからDまでの女の子から見た伊藤くんもそれなりにグズで最低だったけど、Eはもうホラー。
関わらない方がいい。
親友の男を寝取る意味がよくわからなかった…
Posted by ブクログ
彼氏の苗字が伊藤なので読み始めたが、伊藤くんが予想外に残念で面白かった。
「恋愛だけ」じゃない感じがよかった。
一番最初の子(智美さん)が好きだな。
Posted by ブクログ
伊藤誠二郎
代々木の大手予備校の国語のアルバイト講師。有名なシナリオライターや作家の主催する講演会や講座やワークショップにバイト代のすべてをつぎ込む。シナリオの技術や物語の作り方にはほとんど興味はなく、お金を払ってそこそこの有名人に会い、視線を合わせることだけが目的。二十七歳。代々木の本校をクビになりそうだったのを、戸越銀座の塾長が引き受けた。千葉の大地主の一族。
伊藤くんA
島原智美
伊藤とは合コンで出会い、五年が経つ。二十七歳。デパート勤務。伊藤に粗末に扱われ続ける
三芳
智美の後輩。大阪出身。
うだちん
智美の親友。洋菓子メーカーの開発室に勤務している。
矢崎莉桜
そこそこ名前の知られた若手脚本家。伊藤の先輩。
宮田真樹
マッキー。最近独立したスタイリスト。
シュウ
伊藤が働いている塾の受付。マッキーのルームメイト。伊藤が片思いしているが、シュウは移動を嫌っている。
伊藤くんB
野瀬修子
学習塾の臨時受付スタッフ。新卒で三年働いた品川の美術館がつぶれた。
伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター。
マッキー
修子のルームメイトで美大時代からの親友。有名スタイリストのアシスタントを卒業し、独り立ちを果たした。
瑞穂
修子が働く塾の四歳年下のギャルで先輩。
ノリコ
マッキーが目標としている四十代のベテランスタイリスト。矢崎莉桜が脚本を書いてるドラマの衣装を担当している。
大森玲奈
中学二年生。塾の生徒。
伊藤くんC
相田聡子
中堅洋菓子メーカーに就職し、デパ地下のケーキ店の副店長として働いている。実は甘党ではない。伊藤の童貞を奪う。
神保実希
聡子の親友。聡子が働く洋菓子メーカーのチェリータルトが大好物。大学のサークルOBで六歳年上の伊藤に三年も片思いしている。
一橋
ケーキ店のアルバイト。大学二年生。
鈴原
ケーキ店の店長。
山村ミヨ
聡子の高校の同級生。合コンの幹事を快く引き受ける種類の人間。
江頭加奈子
一橋の彼女。
伊藤くんD
神保実希
処女を理由に伊藤に振られる。父が教授を務める女子大で教務課の職員として働き始めた。友人のクズケンを初体験の相手に選ぶ。
クズケン
久住健太郎。学生時代に売れっ子放送作家になっていた。
相田聡子
実希の親友。
矢崎莉桜
サークルのOGでシナリオライター。
伊藤くんE
矢崎莉桜
伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家。
川北直子
莉桜がかつて所属していた「ドラマ研究会」通称「ドラ研」のメンバー。大学一年生。
杉原瑛太
「ドラ研」のメンバー。大学二年生。
安藤良二
「ドラ研」のメンバー。大学二年生。
久田史朗
「ドラ研」のメンバー。大学三年生。
戸川重之
「ドラ研」のメンバー。大学四年生。
久住健太郎
若手脚本家。
田村伸也
四十代後半の売れっ子プロデューサー。
Posted by ブクログ
いろんな伊藤くんの話かと思いきや、1人の伊藤くんを周りの色んな女性の視点で描いたお話でした。どの話からもクズで無気力でどうしようもない人物だと分かるのが面白い。柚木先生の小説はゆるく読めて好きです。
Posted by ブクログ
もうちょいコメディよりかと思ってたら…なんだかずっと重くて嫌な面突き付けられて気持ちが沈みがちな本だった笑
A・Bぐらいまでは明るく読み終えられたかな。
そして唯一圧倒的な良い人、クズケン。え、え、絶対クズケンと付き合いたいんだが。イチャイチャパート最高だったのにな。
Posted by ブクログ
柚木麻子さんの作品を久しぶりに読んだ。前回のは正直記憶にないんだけど、この方の人間の感情の表し方の巧みさがすごく好きだー!って思った。
この作品は1人の人間に翻弄される人物を各々の角度で綴られたもので、読んでいて点と点が繋がっていって面白かった。伊藤くんの"ヤバさ"を正確に理解できた気はしていないけど、作品として面白かったからよし
Posted by ブクログ
映画にもなったと聞き、ミーハー心が疼いて読破。
伊藤くんダメ男だなー!と思って読んでいたら、伊藤くんEで印象がガラッと変わったのが面白かった。
軟弱軽薄と思っていたら、人として深さが見えたような。
人生で大切なことは、誰からも傷つけられないこと。
傷つくことを恐れず立ち向かえるのは、ほんの一部の強者だけ。だから、みんなが夢を諦める。
恥をかかないために、捨てる。
安全な場所から誰かを笑い続け、自分を主役にした人生を回す。だから、関わった人が勝手に傷付き、倒されていく。
そんな自分をいつか誰かが救い上げてくれる、僅かな可能性を信じるお姫さま。
でも、そんな人でも、自分を見てくれるからと再起する人もいる。
伊藤くんは自分を映す鏡、という解説は難しかったので置いときますー