あらすじ
真面目さゆえに他人に振り回されがちな真島。バツイチの冴えない研究者、繁田。彼女のキツイ束縛に悩む、愛想のよさが取り柄の仲杉。少し変わり者の超絶イケメン、斎木。友人でなく、仲良しでもないのに、なぜか一緒に旅に出る四人。その先で待つ、それぞれの再会、別れ、奇跡。他人の事情に踏み込みすぎない男たちの、つかず離れずな距離感が心地好い連作短編集!
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Posted by ブクログ
少し変わったアラサーの4人の男子が、ひょんなキッカケで旅行に行く事から始まる。4人のキャラがうまく出来ていて、絡み合うのが面白い。特に斎木さん。ただ、最後の章の斎木さんが女性と一泊旅行に出掛た夜の場面は、辛くなってしまった。
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最初の真島が前面に出るのかと思いきや、4人全ての人が主人公で それぞれ違うキャラクターで斎木さんだけではない 全員が面白いって事。ラストでも3人が熱海に来ていてまるでそうなるだろう、斎木さんをアシストする感じがする それくらい友情が出来上がって深くつながっているんだな、お互いの内面には踏み込まないけど、どんな人物か、何をすれば良いのか最低限のマナーを守っているんだね。無神経に飲み友達だけでは斎木さんとは旅行なんか出来ない。4人とも父親に義父に嘘だらけな彼女に被害者だ。アルエのフェイントで全て救われたよ
Posted by ブクログ
30歳前後の男性4人の話であるが、それぞれの特徴をよく捉えていて面白い。
好き嫌いでいうと個人的に好きな物語である。
まず、敬語で旅する四人の男ってのが不思議で、成り立つのか、楽しめるのかが実に興味深かった。
いや、スッーと入り込んできたのに驚いた。
よくできている、というかこの四人に好感が持てる。
それぞれが四つの短編小説の主人公になっている。
敬語で旅する四人の男〜両親の離婚はとても複雑な事情だったことから母とは高校卒業後に会ってなくて、旅行というかたちで佐渡島に行く真島。
犯人はヤス〜離婚した妻の実家の京都へ行き、2歳の息子を連れて愛宕山に登る繁田。
即戦クンの低空飛行〜恋人との軋轢や会社でのトラブルでも病み気味の仲杉が、鳥取砂丘に行った理由。
匡のとおり道〜コミュニケーションを取るのが下手な自閉症スペクトラムの一種だとか、高次脳機能障害だとかで特別枠で会社勤めをしている斎木は、人との距離感がわからない。そんな彼が気になる女性と熱海へ。
どれも最後は、男四人の旅のようなかたちで終わるのだが、とにかくゆる〜く温かい気持ちになるのがいい。
男ばかりの旅⁈に偏見を持ってしまったのを恥じたい気持ちだ。
差別も偏見もないその人なりの人格をきちんと認められる世の中になりつつあることは喜ばしいことだと思う。
完全になくなることは難しいかもしれないが、一人一人の意識を変えていくことも大切だと思った。
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四人の男がそれぞれ主人公になる、短編集のような感じですが、気持ちよく読めました。
やはりダントツで斎木くんが印象に残ります。
人の心を推しはかるのが苦手な斎木くん。
でもそんな斎木くんが、母に教わったことを思い出し
実践して何とか対応している姿が、愛おしく思える。
そして他のメンバーも、適度な距離感を持った優しさがあって、みんな良いなと思います。
それぞれが主人公の話の中で、主人公じゃない側の人達の優しさが特にじんわり沁みて心地よかったです。
Posted by ブクログ
短編でそれぞれ主人公が違うけれど
敬語で旅する4人の男が主人公だからわかりやすい。
斎木の言動が気になり過ぎてどんどん読み進めてしまう。
4人の距離感が本当に絶妙!
Posted by ブクログ
ブク友さんの本棚からタイトルに惹かれて。
敬語を使うぐらいの仲同士での旅行って、
これから仲間になって打ち解けていくのだとしたら
ワクワク感があって面白そうと読み始めた。
4人がそれぞれの事情で主人公となって4人で旅をする。微妙な距離感からちょうどいい距離感へ
「即戦クンの低空飛行」鳥取砂丘と最後の話がよかったかな
Posted by ブクログ
ひょんなことから旅をともにすることになった4人のアラサー男たち。
全員に共通するのは不器用で世渡りベタなこと。
微妙な距離感。噛み合わないところを何とか噛み合わせながらの4人の不思議な友情を育む旅を描く連作短編ヒューマンドラマ。第7回小説宝石新人賞受賞作。
◇
真島圭太29歳。会社員。母は圭太の高校時代に父と離婚して現在、佐渡に住んでいる。
その母に夏休みを利用して会いに行くつもりだということを、同僚で中高の先輩でもある斎木匡(30)に話したのが珍道中の発端だった。
旅行に誘われたと思い込んだ斎木が大学時代の友人の繁田樹(33)にも声をかけ、繁田も友人の仲杉幸彦(28)に声をかけして、真島のセンチメンタルジャーニーはゆるいつながりのアラサー男4人旅になってしまったのである。
親友と言えるような間柄ではない。だから会話はすべて「ですます調」になる。相手の個人的事情にまで踏み込まないように気遣いながらのグループ旅行。
特に「母に捨てられた」という意識がある真島は佐渡上陸後しだいにナーバスになっていくが、3人の男たちの微妙な気遣いに触れるうちに……。
( 第1話「敬語で旅する四人の男」)※全4話。
* * * * *
一見お気楽そうな設定なのだけれど、実はいろいろと大変なシチュエーションが描かれていました。
例えば第1話の真島編。佐渡の旅。
真島の母に対する割り切れなさは、母が同性愛者だったことにあるのです。
LGBTQ への偏見が NGなのは当然です。モラリストの真島ならなおさらそう考えているでしょう。しかし、息子としての思いは別物であるだけに大変です。
父から真実を聞かされた時の衝撃はさぞ大きかったに違いありません。(息子に打ち明ける父の心情は察して余りあるし、息子を置いていかざるを得ない母の切なさもわかりますが。)
第2話の繁田編は京都の旅。そこで描かれる、繁田の親離れできない元妻とその実家である京都の旧家の「家」意識も大変です。
その実家。娘が男児を産み、繁田が研究者として東京での採用が決まると、離婚させて娘を幼児ごと引き取りました。孫だが大切な跡取りだって。変だろ、この一家。結婚というものは家のためにあるんじゃないぞ。(ああイヤだ。)
だから京都の文化でもある、遠回しの皮肉や嫌味などを駆使しての「察しろ」攻撃に辟易する繁田や仲杉に対して、相手の気持ちやその場の空気を読めない斎木がズバズバ斬り込んでいくシーンにはスカッとしました。
第3話の仲杉編は鳥取砂丘の旅。仲杉は人の良さにつけ込まれて大変です。
会社では無能上司からのパワハラ。この上司、言いやすい相手には容赦なく責め立てるくせに、ウルサ型の部下には何も言えないクズ中年男です。
プライベートでは束縛型の依存心全開彼女。親から愛情を受けなかったことで愛情飢餓がエスカレートしたとは言え、はっきり拒絶できない仲杉につけこんでのことです。
どちらも現実にいそうなくだらないタイプでゾッとします。(メンタルを病んでいる女性にはかわいそうな気もしますが。)
そして、物語の中心人物でもある斎木を描く第4話の熱海の旅。アスペルガーゆえ能力は高いが人間関係構築に難がある斎木は、人生そのものが大変です。
斎木は障害者枠で会社に採用されているため、それなりの配慮もなされています。それでもやはり働きづらそうです。なにせ生活ルーティンが少しでも狂えば、まったく仕事ができなくなるのですから。
共感力の低い斎木にはプライベートも困難を伴います。
斎木にしては珍しく女性に惹かれるのですが、相手は会社が契約する派遣の清掃員の女性。そして斎木が魅力を感じたのは、彼女の作業の完璧さとムダのない動きの美しさ。
2人はデートもするしお泊り旅行にも出かける仲になるのですが……。 ( 自分の法則でしか動かない斎木は愛想を尽かされるに違いないと思います。)
でも困ったときや行き詰まったとき、敬語で会話するこの4人で過ごす旅の時間は何と言っても格別です。
それぞれが自身を見つめ、現実と自分との折り合いをつけていく、いわば人生に節目をつけていく、そのきっかけに、男4人の敬語での旅はなっているのです。
斎木でさえ(比較的)過ごしやすそうなこのパーティー。その後の4人の人生を見てみたいと思いました。
Posted by ブクログ
「登場人物に発達障害のある人がいる」と知って読んでみた初めましての作家さん。
「スーツケースの半分は」はアラサー仲良し女子4人の旅がテーマの短編集だったけど、こちらは知人以上友人未満の30代男性4人の旅。あとスーツケース~は海外旅行でこっちは国内旅行。「敬語で旅する」距離感が意外と良い。
みんな、過去にやり残したことや心残りと向き合ったり決別したりするために旅をしようと決意するんだけど、なんやかんやで最後は結局四人で旅してるという。
最初はそれぞれがどんな痛みを抱えているのかわかってないから軽い気持ちで読めたけど、読み進めて話の流れがわかってくるとじわじわ染み込んでくる。「即戦クンの低空飛行(謎のタイトル…)」「匡くんのとおり道」泣いた。
旅が始まってはじめて一人一人の抱える辛さとかが描かれて、その辛さがいまの生活を蝕んでるのも分かるんだけど、それがすごいリアルだった。普段はちょっとした悩みや行き詰まりみたいに話してることも、本当は根深いところに誰にも言わずにしまっているものがある、皆そうだよなって。旅の終わりには皆少し前を向いていて、旅ってそういうパワーがあるのは間違いない。
発達障害のことでいえばちょいちょい「?」と思うところはあったけど、私はそれを知り尽くしているわけでもないからそういうこともあるかなって。お母さんのSST、安心ノート素晴らしい。
Posted by ブクログ
斎木さんには踏み込まない人も必要だけど、
踏み込んでくる人も必要なのかも。
ちなみに私はいつも前者。
たぶん前者の方が多いのかな。
非現実なようでけっこう現実的な話で、身につまされた。