あらすじ
絵画は美しいのみならず、描かれた時代の思想・宗教観を密かに映し出している。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、デューラーの『メレンコリア』、ジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』。世界の名画のなかでもとくに謎に満ちたこれらの作品から、絵画の隠された謎をさぐる。画家が本当に描きたかったのは何か、何に託してその意図を伝えたか? 美術研究の成果を存分に駆使しながら、絵画に描かれた思想や意味を鮮やかに読み解くスリリングで楽しい美術史入門。
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作品から思想と意味を読み取る過程が刺激的。そして、優れた芸術ほど、その読み取る作業は万人に開かれている。本書ではミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、ジョルジョーネの作品だけだが、歴史を見る目が変わる。社会、象徴、表現、思想は汲めども尽きない学問の豊かな泉だ。
・自然、宇宙と人体との相関をアントロポモルフィズムという。
・16世紀にメディチが美術学校、アカデミーをつくった。
・アルプスをこえて南に行くことは、単なる空間移動ではなく、文明の源に帰ること。
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キリスト教が厳しく信仰されていた時代に、自然が人間を作り、誕生も死も自然に則って繰り返されるというメッセージがいかに絵画に込められていたのかがわかる一冊。面白かった。これを読んだ後に『Pina』を見たらますます面白く感じた。
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『モナ・リザ』『テンペスタ』『メランコリア』など、有名な作品や図像を、多くの説を挙げながら解説しています。
込み入ったところまで触れてあるのに、専門的な表現を避けた易しい文章で、予備知識がなくても理解することができます。
おもしろい。
美術に対する情熱がにじみ出ています。
これから美術史をはじめたいと思っている方はぜひ。
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印象派以前の絵画には全て意味が込められていた
絵画に込められた様々な意味を読み取ると、絵画はさらに面白くなる
西洋人のものの考え方(宗教とか伝統とか常識) のベースを知ることが重要
図像学のスペシャリスト若桑みどり先生による西洋美術入門書
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美術史入門としての位置づけの本らしいです。
本書を読んで思ったのは、一枚の絵からこんなにも話が広がるものなのか、ということでした。この絵を描いたのは誰で、いつ生まれていつ亡くなって、その時代にはこういうことが起きていて―
そういうことが一つずつ丁寧に説明されています。
美術って見た目の美しさが全てだと思っていましたが、違うんですね。少なくとも中世まで、絵は思想の表現手段の一つだったのだそう。でも、文章表現とは違い、そこに在るものが全てで、表現の幅がとてつもなく広いです。だから、美術を解釈するには、歴史・社会学・民俗学…等々いろんな知識が必要なのだとか。
現代でも、様々な画像やイラストが描かれていますが、一つ一つ、誰かが何かを思って、または考えて描かれているとわたしは知っています。美術も確かにそういうものなのかもしれないと考えるきっかけになりました。
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見えてるだけでは見てることにはならないとは、私の師匠の言葉。絵をその時代背景や作者の考え方から読み解くという美術史。ただ綺麗だ、有名だ ではなく、各々に意味を考えていくのですね。これを学んでイタリアの美術館に赴いたら、より深く絵を見ることが出来たかもしれない。
Posted by ブクログ
初っ端のシスティーナ礼拝堂天井画から本当に暗号解読みたいだなー!と思って感動しました
というのも美術館で天井画含めてルネサンス時代の絵画はそのまま聖書のワンシーンとしてのみ認識していたからです(そういう意味ではちゃんと真の目的は果たせている訳ですが)
言葉じゃ表せないことを美しい創作物として昇華して伝えるなんてロマンチックじゃないですか?色々と数学に通ずる部分ありますよね
その愛と情熱をもって提示されたイメージは、やはりそういう態度で誠意をもって理解しようとするのが受け取り手の義務だなと思いました
ってこれ人とのコミュニケーション上の礼節と本質は変わらんやないかーい
この本の主題からはズレるけどアダムとイブが人間になったときにお互いを恥じるのは裸で性器が丸見えなのを恥じているのではなくてお互いが違う存在だと気付いたことに恥じたんですよね
これって他者と自我の認識=差別の始まりで、この差別でずっと人間は苦しんでるからやっぱり人間の罪なんだなあと改めて思った次第です ただ、どこ読んで思ったかは忘れました
取り敢えずミケランジェロとレオナルドダヴィンチの本漁ります
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もっと勉強したい!という気持ちになれる本。話し言葉なので気軽に読める。ミケランジェロとダ・ヴィンチの同性愛傾向についての言及が偏見入ってて悲しかったけど、読んでよかった。
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本書では、西欧を代表する芸術家たち(ミケランジェロ、ダヴィンチ、ボッティチェリやデューラーなど)の傑作について、描かれた時代の歴史や思想的背景、そして画家の人間に対する思いが綴られています。著者は既に鬼籍に入っていますが、美術史家としての博識はもちろんのこと、芸術家がどういう思いで作品を描いたか、についての洞察に引き付けられました。
ダヴィンチの「岩窟の聖母」と「聖アンナと聖母子」について、前者の画中でキリストのそばに描かれたスミレの表すもの、そして後者で子羊と戯れるキリストを引き寄せようとする聖母の思いについての著者の解釈には心が震える思いがしました。
絵画に対峙するときに、その世界観をどう読むか。指針を与えてくれる素晴らしい本でした。
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クアトロ・ラガッツイの若桑さんの著書。絵画の鑑賞術を美術史の観点から解説するもの。誰もが知っている名画を題材に、歴史、宗教、文化、当時の世相や常識などから、画家のメッセージを解釈する楽しさを教えてくれる。(ここからネタバレ注意)例えばモナ・リザの背景には上部から緑豊かな自然、橋のかかった枯れそうな川、荒野が描かれているが、これは文明が興る以前、文明(建設)、そして滅亡を示唆しているという。そしてモナリザの微笑みは「私だけがそれを知っている」と言うものであり、故に人は惹きつけられるのだと(諸説あり)。こういう見方ができるようになると美術鑑賞が楽しくなるだろう。もっと早く知ってたらと思う。
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ひとつの絵がある。
ただ、美しいだけではなく、その絵を描いた作家の人生はもちろん、生きていた時代背景や、描かれたモチーフの意味など、様々な要素がある。
もちろん解釈はひとつに定まらず、絵という入り口から、さらに世界が広がっている。
絵という間口から、何を想起させるのか、作家がどのようなイメージを受け取って欲しかったのか。
もはやミステリの世界である。
教養があるというのは、みえるものをさらに豊かにするなぁと思った。
美術館に行きたくなる。
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目から鱗が落ちっぱなしでした。芸術は感覚で理解するものではなく、思想的な理解がなされるべきものだ、という主張が根本にあり、それを丁寧にひも解いてくれる1冊です。絵画鑑賞が趣味の私ですが、感覚だけで絵の好き嫌いを判断してしまいます。自分の教養が足りないだけなのですが、それを良しとしていてはもったいない。思想的な理解によって、芸術を何十倍も楽しむことができることを実際の美術作品の読み解きによって教えられました。
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終始ライトな語り口で、だけど押さえるべきところはきちんと押さえて、まさにベスト・オブ・美術史入門。作者の絵画への解釈はどれも興味深かったが、とくに《テンペスタ(嵐)》は必見必読。ヨーロッパを語る上で「火・水・空気・土」はどうやら欠かせない要素らしい。美術をもっと知りたくなる、学びたくなる一冊。
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美術作品を見るのは好きだけれど、どこをどう見ていいのかには、実際自信がない。
自立した読者ならぬ、自立した鑑賞者になりたくて手にした本。
でも、若桑さんの本は、多分これで三冊目。
で、読み終わった結論としては・・・
「自分でイメージを読み解くのなんて、無理」。
イメージの意味を読み解くには、その画家についてや、その時期の文化や思想にまで通じていないといけなさそうだ。
特に、この本は私にとってあまり馴染みのないルネサンス美術を対称にしているから、余計そう思ってしまうのかもしれない。
まあ、でも、最初のイメージを扱う三つの方法論(様式論、図像学=イコノグラフィー、図像解釈学=イコノロジー)について、概要を知ることが出来たのは収穫だったかも。
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大学の講義内容4回分を一冊の本にまとめたもの。
初心者入門編、と銘打ってあるだけに
非常にわかりやすい内容だった。
文庫本だから仕方ないのかもしれないけれど
紹介されている絵がカラーだったらもっとよかった。
こういうの読むと、またヨーロッパで美術館巡りしたくなって困る。
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僕は子どもの頃から絵が下手である。図画も美術も嫌いな科目の一つで、思えば絵をいかに上手く書くかばかりを教えられたような気がする。大学でも美術史なんて履修しなかったし、思えばルーブルも駆け足のように回った。本書を読んだ今となって、この2つを非常に後悔している。絵に読み解きの楽しみがあるなんて知らなかった。歴史好きを自認する僕としては何という盲点。と同時に、人類にとって「イメージ=非言語」が極めて重要な表現方法の一つであることを改めて思えば、やはり絵は上手いほうがいい。というより、上手くなりたい。
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美術史入門の本。若桑みどりさんは語り口がなめらかで日本語がきれい。難しい専門用語がないので素人にもわかりやすい解説となっている。非常に読みやすく、充実した内容の本。
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美術史の入門書として、大学での講義をまとめたのがこの本である。
ある時代までは思想的な意味が絵画には含まれていた。だから絵画を見る為には時代背景を理解していなければならない。
誰もが知っている有名作家を抜粋しての内容なので、美術についてあまり詳しくなくても十分に楽しめる一冊だ。
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内容は美術史入門書だが、歴史好きにも科学好きにも楽しめる。美術史の天才画家たちが後世に残した遺産から、さまざまな事象が見えてくる。素人には中々見つけられないそれを、著者はゆったりと親切に教えてくれる。お絵描き好きの中学生でも楽しめるはず。
絵を描かない人も、電車の中でさらっと読んでみると、意外な発見に多々巡り合える、そんな一冊。
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芸術というものが、その時代のエートスを否応なしに背負ってしまうということを、あらためて再確認することができた。惜しむらくは、取り上げられている主な絵画だけでも、カラー図版で掲載してほしかったこと。さすがに白黒の小さな図版では、せっかくの解説がよくわからないのである。
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ある時代以前(18世紀以前)の絵画はその時代の重要なメディアであり、ある思想や意味を含んで書いていることが多いそうです。その込められた意味を理解することの面白さを説いていました。
レオナルド.ダ.ヴィンチの章が印象的でした。「岩窟の聖母」に書かれたスミレは謙遜の花、イエスの最大の美徳は謙遜であった、それを表現している、いうのは知りませんでした。イエスは神の子でありながら、誰よりも低く地面に座っている、これこそ究極の謙遜を表現しているそうです。ちなみに最大の悪徳は傲慢だそうです。
どんな局面でも傲慢にならず謙虚でいよう、これは太古から変わらぬ教えなのだ、と感じることができました。
作者は、「人間は言語のみならずイメージにより言葉で表せないような意味深いものを表現する、」と言っていました。この本のおかげでその表現を少し理解でき、絵を鑑賞する時のイメージが膨らみそうです。
Posted by ブクログ
北海道大学で5日間にわたっておこなわれた教養の講義をまとめたもの。イコノロジーの方法を用いて、ミケランジェロのシスティナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》、デューラーの《メランコリアⅠ》、ジョルジョーネの《テンペスタ》を順に読み解く。
絵画に描かれた思想や意味を解釈することは、その絵画が描かれた当時の思想史、社会史などについての理解に深く結びついているということが、わかりやすく語られている。
Posted by ブクログ
イコノロジーの入門書と言うより導入書。基礎的な美術知識のない人が読んでも解説が分かりやすい。体系的な知識を得たい人には不向きだが、常に「芸術とは何か?」という問いに立ち返りながら学べるので、導入書としては良本。