あらすじ
近年,糖尿病・メタボの新しい治療法(食事療法)として医療現場で注目を集める「糖質制限食」。従来のカロリー制限を主体にした食事療法に大きな効果が見出せない現状のなか,実際の臨床に取り入れている医師が増えてきているが,やり方によっては,将来におけるガンや血液疾患のリスクが増大する可能性が指摘されるなど,エビデンス(科学的裏付け)の面でまだまだ不備が多い。糖質制限食の進め方や,糖尿病・メタボの治療のあるべき姿を,「ゆるやかな糖質制限食」を提唱する日本ローカーボ食研究会(代表:灰本元)が,臨床面,研究面での最新の知見をふまえながらわかりやすく解説していく。
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Posted by ブクログ
色々読んできたが、初心者~専門職(医者)まで幅広く読めるのでは。
糖質制限食についてその入り口から実際の運用(臨床例)まで詳しく説明があるが、本書の良い所は、各章において大見出し、小見出し、詳細な解説、まとめ、というように読む人の(興味・知識量)に応じて、拾い読みあるいは詳細に読み込めるようになっている。
様々な研究データをじっくり読むもよし、そこから導かれた結論だけを読むもよし、こちらの知りたいレベルに上手く応じてくれる。
また、糖質制限食に関しては、様々なレベルや意見があり、それについても比較的客観的な立場で触れてある。
もちろん、本になる以上このローカーボ食研究会の目指す「ゆるやかな糖質制限食」が一番正しい、というスタンスで解説されているが、それありき、ではないのが良い。
いまだ炭水化物制限のシステムも解明の途上のようだし。
この研究会のHPに詳細な内容が記載されているのも後日復習できる意味で良い。
Posted by ブクログ
幕内秀夫の「世にも恐ろしい『糖質制限食ダイエット』 (講談社+α新書)」で紹介されていたので読んでみました。
なるほど、しっかりと実験と臨床データを示してあります。
この本では、主に、糖尿病やメタボリック症候群を中心とした健康状態にない人のために、糖質制限食がどう効果があるかが説かれています。
確かに短期的には、血糖値の減少や減量には効果的のようですが、巷にあふれている「糖質制限食推奨本」のように手放しで誰にでも薦めていいものではないようです。
また、ダイエットについても、数か月であれば糖質制限の方がカロリー制限より効果的ですが、年単位で見ていくと有意差は認められないとのことでした。
また、危険性についてもきちんと指摘されています。
体重が減りすぎる場合がある。
これは、日本人では、BMI20~30が最も死亡危険度が低いため、これ以下になるのは薦められないとの考え方からです。
低血糖の危険性がある。
低血糖は、たった一度でも、将来の死亡の危険や認知機能障害を悪化させます。
また、糖質制限食下で利用されるエネルギーのケトン体の安全性は不明です。
海外の大規模コホートでは、糖質制限食とカロリー制限食とを比較して、炭水化物を制限すればするほど脂肪の危険度が増えるという結果が出ています(6つの研究のうち5つ、うち1つは差異がないとするもの)。
また、厳しい糖質制限食下では、血管の動脈硬化が進みます。これは、糖質制限により血管再生のしくみが壊されるからです。
ただし、糖質制限食下でも、植物性脂質、たんぱく質を中心に食べる人は長生き。
赤肉とその加工食品は死亡の危険を増やします。
つまり、糖質制限食は、血糖値もメタボリック症候群も改善しますが、制限がある程度以上になると死亡の危険が増えるということです。
この本でも、ゆるやかな糖質制限食を進めていました。
さらに、たくさんの本で「飲み放題」とうたわれているアルコールですが、血糖値を上げないという理由からだけで多飲するのは危険で、特に糖尿病の場合は、少な目を心掛けたほうがいいようです。
病気治療のために、ポイント的に体調管理しながら行うのがいいということでしょうね。
この本は、例えば糖尿病の治療に良かれと思って血糖値を下げる努力をした結果、他の病気の基になってしまったという事がないよう意識して書かれています。
良心的な本だと思います。
読みながら思い出したのは、同じく幕内秀夫の「健康のためなら死んでもいいのか?-子育て、食事の誤解と偏見(毛利子来、 幕内秀夫)」でした。
最後に、残念だったのは、炭水化物(糖質)や脂肪、たんぱく質をその量だけで一括りにしてしまっている点です。
人間は三大栄養素だけで生きているのではありません。
また、それらの量が同じであっても、質が違えば自ずと結果も違ってくると思うのです(植物性と動物性・加工食品については少し触れられていますが)。
大規模コホートではそこまでの調査は難しいかも知れませんが、今後の研究に期待したいところです。