あらすじ
吹き荒れるヘイトスピーチ、嫌韓反中本の数々……。後押しするかのように、行政もまた朝鮮学校へ相次ぐ差別的な措置を下している。しかし、我々はそこに生きる、ひたむきに何かに打ち込む若者の物語に耳を傾けたことがあっただろうか。強豪として知られる朝鮮高校蹴球部出身の安英学(アンヨンハ)、梁勇基(リャンヨンギ)、鄭大世(チョンテセ)……。スーパープレーヤーたちの物語から、彼らを取り囲む日本社会の今が見えてくる。サッカーで、差別は乗り越えられるのか。マイノリティに光を当て、選手たちの足跡を描ききった魂のノンフィクション。【目次】第一章 イマジン 安英学(アンヨンハ)の軌跡/第二章 「国境」を越える安英学/第三章 誠実なるファンタジスタ 梁勇基(リャンヨンギ)・疾走する人間ブルドーザー鄭大世(チョンテセ)/第四章 帰国運動を巡って刻んだ双曲線 キム・ミョンシクとリ・ドンギュウ/第五章 突破する詩人 理事長リ・ガンホン/第六章 レイシズムに抗う 李普鉉(リーボヒョン)/第七章 CONIFAワールドフットボール・カップ1/第八章 日本人オンリー/第九章 CONIFAワールドフットボール・カップ2/エピローグ
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Posted by ブクログ
★個人と民族と国家をまたぐのがまさにスポーツ★以前から疑問だったのは、資本主義の日本で育った選手が北朝鮮代表に入って、チームメイトとどのように交流するのかだった。本書はこの点にはあまり触れていないが、個人の責任とは全く異なる理由で苦境に置かれた選手たちとそれを支えた市政の熱い環境(Tリーグ)、そして離散者とマイノリティーのW杯であるCONIFAのルポは予想を超えたところで興味深かった。特にCONIFAは、参加チームを尊重するがナショナリズムの発揚は拒むところにスポーツの素晴らしさがある。
サッカーを通して民族と国家の狭間を描けるのは、著者ならではの分野だ。
Posted by ブクログ
これまでも、何人かの筆者が、このテーマに取り組んでいる。最初期よりも、選手の活躍の場は広がっている しかし、いつまで経っても、日本社会の偏見は消えないのか。
WBCを見ていると、パスポートに拘るが故に、野球自体は各国に広がってはいないが、それをプレーする者達は、ずいぶんと多様性を持っていることを学んだ。また、ラグビーのように協会主義を取ることによって、より豊かな代表チームが編成できることもある。
Posted by ブクログ
サッカー選手として成功して、サポーターから愛されて、国籍なんてどこでもいいじゃない、なんて軽く考えていた自分を反省。何もわかっていなかったけど、この本を読んで少しわかってきたことがある。もっと知らなければいけないことがたくさんあるな。
Posted by ブクログ
読みたい本リストに『橋を架ける者たち』ってあったから市民社会や社会的企業に携わる人たちの話かと思ったら在日コリアンのサッカー選手やサッカーにかかわる人たちの話だった。在日コリアンも興味・関心があるので、そうかそっち路線の興味・関心で読みたい本リストに入れたということだったか。
日本人ならすることがない苦労や過酷な現実に直面しながら、好きなサッカーで身を立てるために、サッカーを通じて世界をつなぐために奔走する人たち。ただサッカーがうまいだけでなく、人間性のすばらしさに関するエピソードにも驚かされる。在日コリアンの人たちは苦労が常のようなところがあって苦労耐性が強いかもしれないけど、それにしても良く平然と現実を受け入れていけるなあと思わされる。著者は在日コリアンのこともサッカーについても取材歴豊富なジャーナリストのようで全体が丁寧に書かれていて、サッカー自体には何の興味もない自分にとっても読みごたえがあった。