あらすじ
「諦めるな、逃げるな、媚びるな」
──こんな日本人がいた──
16年間にわたる執念の交渉の末、誰もが「不可能」と口を揃えたミラノ・スカラ座の引越し公演を日本で初めて実現。ドミンゴ×クライバー「オテロ」の幕が日本で開いた。
また鬼才モーリス・ベジャールに不朽の名作「ザ・カブキ」をつくらせ、世界各国の名門オペラハウスに自らのバレエ団「東京バレエ団」を率いて乗り込み、20年間外部の団体の公演を許可してこなかった、世界中のダンサーが憧れるバレエの聖地、パリ・オペラ座をも制覇。
誰もが不可能と信じていたことを、執念の交渉で次々現実にしてきたタフネゴシエーターは、2016年4月30日、ひっそりとこの世を去った。
その名は佐々木忠次。
世間一般での知名度はそれほど高くないが、オペラやバレエのファンの間では「ササチュー」の愛称で親しまれていた男である。
敗戦国の島国から来たおかしな東洋人と冷たい視線を浴び、日本の官僚の無理解に苦しみながら、各界の大物と一歩もひかずに徒手空拳で直談判してきた佐々木だが、「美」と「本物」への激しい渇望は、同時に己を焼く業火となった。過剰な情熱が巻き起こす周囲との軋轢、美意識をめぐる衝突、盟友との訣別……。劇場に生きた男の孤独な闘い。その誰も知ることのなかった舞台裏が、徹底取材により、今、明らかになる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
エネルギーの塊のような人が、日本に素晴らしい舞台をスゴイ勢いで、作ってくださったのだなぁと、驚きに近い…
一方、日本の政府、役人、政治家は、知的な芸術センスが皆無なのは、
今だになのだなと、恥ずかしくて残念に思う
Posted by ブクログ
【孤独な祝祭 佐々木忠次】
追分日出子著、文芸春秋社、2016年
全く知らなかった。こういう人がいることを。
強烈な個性の持ち主で、世界の一流を巻き込む圧倒的な構想力、展開力、実行力で、戦後の日本に本物のバレエとオペラを持ってくる。
そして、東京バレエ団(正式名称 チャイコフスキー記念東京バレエ団)を本場ロシア、フランスのバレエ通も唸らせるバレエ団に仕立て上げてしまう手腕。
「チャイコフスキー記念」が冠される理由には東西冷戦構造が影響していたり、ヨーロッパ各地で東京バレエ団が公演する際の現地日本大使館の無理解、そして、新国立劇場とバレエ団ができる時の政治的思惑など、日本に芸術文化が根付いていない様がありありと描かれている。
数々の偉業を実現してしまう佐々木忠次の物凄さがギラギラと眩しく、そして、その間に垣間見える寂しさが本書を単なる偉人伝にしていない。
バレエは嫌いじゃないが、東京バレエ団は見たことがなく、佐々木が生きているうちに見たかったと猛省させられた。
#優読書