あらすじ
「好きなひとができたから」。これほど人を傷つける残酷な言葉があるだろうか……。人から「好き」と言われるたびに次から次へと女性とつきあい、すぐに「好きなひとができた」と言って、別れを告げる男、神崎登吾。彼はなぜそのような行動を取るのか。彼になぜ女たちは魅かれるのか。そして彼に捨てられた女たちの心情は? 神崎登吾に運命を捻じ曲げられた男たち女たち、かつての友人、親戚たちの証言から、徐々に彼の正体が浮き彫りになっていく。そして、諦めきれず執拗に彼を追い続けるある女、影のようになぜか彼につきまとうある男が引き起こす決定的な事態とは!? 第4回小説現代長編新人賞を受賞してデビューし、『泣きながら、呼んだ人』が盛岡のさわや書店が主催する〈さわベス〉文芸部門第1位を獲得するなど話題の著者が贈る、衝撃と慟哭のミステリー。
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Posted by ブクログ
『衝撃と慟哭のミステリー』
んんん?これは煽り帯だなぁ。(-∀-`; )
一体、誰が主人公なんだ??
連作短編集だから、中心となる人物や背景が変わるからかなぁ。
「好きだから。よかれと思ったから。それが全ての通行券となる。」
このことにまつわる内容がやたらと出てくるけど、、(というかこれがテーマなのか)
異性、同性、親子に関わらず、人に対して深い感情になると、そういう気持ちになるのも分かるような気がする。
でもそれって結局は自己愛だよね。
衝撃と慟哭は感じなかったけど、「人を好きになるということ」という意味を色々考えさせられたかな。。
Posted by ブクログ
別れの言葉で「好きな人ができたから」って言われちゃったらもうアウトですよねー・・・ってことで、これほど人を傷つける残酷な言葉があるだろうか・・・衝撃と慟哭のミステリー!って言われちゃあ読むっきゃないですよねぇ?w
んで、目次を開いてビックリ!
え?まさかの妖怪譚??しかも短編集だったり???
怪訝な面持ちでページをめくる・・・んー、現代だね。ダイジョブ、妖怪譚ではなさそう・・・w
さてさて・・・あ、なーるほど。ふむ、これはなかなか面白いかも~、と読み進める。
むーん・・・いろいろ壊れてるなー。
壊れてる人に関わってると、その人も壊れて行っちゃうのねー・・・という、ね。
背の高い細身の男ってのにリアリティを感じられるともっとよかったんだけど、それが希薄だったのがちょっと残念。
でも、衝撃でも慟哭でもなかったけど、なかなか読ませる感じでよかったです♪
Posted by ブクログ
誰かに告白されるたび、交際中の女性に別れを告げて新しい女性と付き合うということを繰り返す男、神崎登吾。
稀代のプレイボーイなのか、はたまた見た目だけの軽薄男なのか。登吾を知る人たちの証言から、神崎登吾という人間の実像に迫るサスペンスミステリー。
◇
12月はじめの朝、宮原祐史は目抜き通りを勤務先へと急いでいた。
この町には寺が多いせいか、通り沿いには仏具屋や仏壇店が軒を並べていて、古道具屋や古着屋もちらほら見える。その中の1軒が祐史の勤めるリサイクル家具店だ。
家具店に着いたのが9時53分で、始業時間の10時には間に合ったが、店長の宮原貴子の「おはよう」という声は不機嫌そうだ。お気に入りの神崎登吾が辞めたからだろう。
「おはようございます」
そう言って店内の照明を点け、シャッターを上げて開店準備に取りかかった祐史に、貴子の尖った声が飛ぶ。
「もうちょっと早く出社できない? 10時開店って、10時にシャッターを開けることじゃないのよ」
祐史は、はあ、と生返事をして横目で貴子を見る。今日もバチバチの完璧メイクで朝からご苦労さまなことだ。女に生まれなくてよかった。そんなことを考えていると、貴子がさらに追い討つような叱声を浴びせてくる。
「せめて15分は早く来るのが常識ってものでしょう。登吾はそうしてたわよ」
けど、自分が開店作業をしないといけなくなったのは、あんたご贔屓の登吾が急に辞めたお蔭なんですがね、お義姉さん。
祐史はそんな気持ちを込めて貴子に言う。
「神崎くんも、最後は常識がなかったみたいですね」( 第1話「口裂け女」) ※全5話。
* * * * *
職場を去った、問題ありと見られていた人について、第三者の証言を元にその人物像を明らかにする ―― 先日読んだ、同じ加藤元さんの『本日はどうされました?』と手法は同じなのですが、テイストはかなり違っていました。
『本日は〜』では、入院患者の連続不審死事件の真相とその事件に関わる「悪魔の看護師」の正体、という作品のテーマが序章から提示されていて、不穏さの漂うミステリーであることがはじめから明確でした。
だからこちらも、一定の心構えを持って警戒しながら読むことができました。
けれど本作は、中心人物である神崎登吾が回想シーンで少し登場するだけです。しかも中盤までは登吾に執心する女性たちの方が強烈な個性をもって描かれ、登吾の存在感は極めて小さめで、つい警戒心も緩みます。
それが、中盤から明かされていく登吾の過去と登吾に影のようにつきまとうある人物の描写によって、物語は徐々にホラーサスペンスの様相を呈していくのです。
だから読む方も当然、途中から態勢の変更を迫られることになります。ホラーやイヤミスが苦手で、性格的に柔軟性に欠ける私などはなかなか苦労した作品でした。
さて、主人公として登場する神崎登吾について少し触れておきます。
憂いと陰を漂わせる美青年。口数は多くなく他人に対してあまり心を開かないけれど、どこか放ってはおけない風情がある。
神崎登吾はそういう人物として、特に女性の注意を引きつけます。
だから女性たちは登吾に接近してきては何くれと世話を焼き、好きだと告白するに至ります。
登吾はそんな女性を受け容れ、「きみとおれは似ているのかも知れない」とつぶやきます。これが殺し文句となり、女性たちはますます登吾に夢中になっていくのです。
ただし登吾は、二股をかけることはありません。新しく付き合う相手ができるたび、それまでの彼女に「好きな人ができた」と言って必ず別れを告げます。
これだけ読むと、登吾とは優柔不断で移り気な男であるという印象でしかありません。
でも祐史との会話から察するに、登吾はもともと人間不信で警戒心の強い人間です。なのに近づいてくる女性を不用意に受け入れてしまう、その理由こそが、物語の焦点になっています。
ところで登吾は、不用意ではあっても無分別ではありません。
例えば第1話。
店長の貴子が自分に食指を伸ばそうとしていることを察知した登吾は、退職を申し出て行方をくらましてしまいます。
その直前、登吾は貴子について「あの人はおれなんか好きじゃない。 ( あの人が ) 好きなのは自分自身だ」と祐史に告げています。
貴子という女は自己愛の強い自意識過剰な人間に過ぎないと見抜き、その本質を「口裂け女」であると揶揄までしています。
登吾が、かなりの観察眼を持っていることと、真に自分を愛してくれる女性を求めていることがわかります。
自分勝手な愛情を徹底的に嫌う登吾。いったい登吾に何があったのか。それが明かされていく終盤は、なかなか読み応えがありました。 ( 私の苦手な展開ですが…… )
* * * * *
文庫化に伴って、『ほかに好きなひとができた』に改題されたようです。
Posted by ブクログ
ころころ恋人を変える軽い男の話だと思ったら毒親と毒友の環境下で育った悲しい男の話だった
好意は必ずしも良いものではなく、時には身を引くことも大事だと感じた
どうか次の恋から上手く進みますように
そして背の高い男性はどこかで思い止まりますように
Posted by ブクログ
*次から次へと女性とつきあい、すぐに「好きなひとができた」と言って、別れを告げる男。彼のその行動は、周囲の人々、そして彼自身の運命を歪ませていく…。周囲の人々の証言から、浮き彫りになる男の正体とは!?思わぬ結末が胸を打つ!衝撃と慟哭のミステリー*
整った容姿を持つが、子どもの頃から「好きだと言えば、おれを支配する通行券を得られたと思う人々」に嬲られ、苛められ、虐げられてきた男の話。
本物の愛情を求めてすぐに人を好きになるが、そのうち相手から支配や要求が増えてきて、ああまたか・・・と失望し、次の「好きなひと」のところへ乗り換える神崎登吾。溺れる者のような痛々しさが心に染みます。
そんな登吾を追う、昔馴染みのストーカー男と、登吾を諦めきれない元カノのストーカー女を軸にストーリーが進み、最後は・・・いいのか悪いのか・・・ちょっと煮え切らない結末。「好きだと言えば何でも許される」と言う状況にずっと耐え続けてきた登吾の痛ましさが生生しかっただけに、もう少し救いがあっても良かったかな・・・読後感は悪くないですが。
Posted by ブクログ
これはキツい。「好きな人ができました」と言って、次から次へと彼女を変える神崎登吾。彼に振られて執拗に追いかける仁村萠。逃げる男にしつこい女。どっちにもウンザリかと思いきや、そういう話ではなかったと。人を好きになるって、綺麗な感情だけではない。押し付け・支配欲・嫉妬・執着心、時に負の感情も混じるもの。歪んだ愛は凶器に変わり、不要な愛は重荷になる。そこにいじめ・子への虐待描写も絡んで、ちょっと重かった。ところどころは共感できるけど...何だかなぁ。章題の妖怪名もムリヤリ感があって余計。ラストもスッキリしない。
Posted by ブクログ
ゆるいミステリー。真の主人公は想いを語らず、彼に関わる人々の想いや行動、ストーカー彼女の行動で物語が進んで行く。最後の予想は早い段階でつくが、人を好きになるとは難しい事ですな。