【感想・ネタバレ】アメリカ大統領制の現在 権限の弱さをどう乗り越えるかのレビュー

あらすじ

アメリカの大統領は世界的な注目を集めて就任するが、任期途中で失速することも多い。オバマもそうだった。なぜか。日本やイギリスの首相とは違って、大統領には自由に政策を実現するだけの実験が与えられていないからだ。本書はイギリス植民地以来の歴史と国際比較から、大統領の権限が弱い理由を解明し、カーター、ビル・クリントン、オバマらを分析して、各大統領がこの困難にどう取り組んできたのかを明らかにする。一貫した視点で根本問題から将来像までを見通す、アメリカ政治の正確な理解に欠かせない一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

合衆国大統領に与えられている権限は、その「世界大統領」的なイメージと違って恐ろしく少ない。そもそもが、議会のポピュリズム的な暴走を抑制するために設置された役割であり、合衆国の国力伸張によって求められる役割が変わった後も憲法の条文改正が行われなかったため(司法判例に基づく解釈改憲)行政の役割が増大した今でも、制度的には大統領の権限は恐ろしく制限されているままである。
合衆国大統領の権限がかように小さくても今まで大統領のリーダーシップで国が動かして行けたのは、合衆国の政党及び議員の特性によるモノであり、政党の凝集性が(日本などと比べると著しく低いとはいえ)高まると、政党の枠を超えて大統領が進める政策のための多数派構成が難しくなり、ますます大統領が主導することは難しくなっている。
(更に言うと、現在の共和党多数の議会でも、ティーパーティー系は妥協しないため、結局は多数を確保している利点が現れない。)
著者は、予備選などによる活動的な一部党員の影響力をそぐ方向への改革が、このジレンマを超えるために必要であろうと推察している。活動的な一部党員が政党の凝集性を高め、中道寄りの議員を候補者段階でスポイルしているためである。

予備選の弊害、活動的な一部党員の弊害というテーマは日本でも考えておくべきであろう。

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2018年10月14日

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