あらすじ
2049年、独裁体制は崩れる! 建国100周年の野望を予見! 商社マンとして30年以上中国と関わり、中国大使として2年半中国全土を歩き、政財界の要人とつき合ってきた著者が、「大国の覇権と激動の世界情勢」を語る。いまや中国抜きに国際情勢は語れない。20世紀を支配したアメリカの覇権は翳りをみせ、代わりに中国が経済的にも政治的にも急速に台頭。四半世紀前に比べ経済規模は25倍に膨らみ、中国をうまく活かすことが、日本ばかりか世界が生き残るためには不可欠な時代に――。2016年11月にはアメリカで新大統領が誕生し、2017年秋には中国で指導部人事が改まる。二つの超大国の指導部が入れ替わるこの2年間で、世界秩序は大きく転換する可能性があるのだ。前作、14万部突破のベストセラー『中国の大問題』から2年余り、習近平政権を知り尽くした元・大使が、中国の最新動向を分析して見通す“日本と世界の現在、そして未来”。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
元伊藤忠会長、元中国大使の丹羽宇一郎氏による中国と日本の明日を考える著作。
中国通による、日中関係の見方・読み方について解説するとともにその将来像についてもアツく提言するもの。
・・・
新聞の社会欄に出る程度のことしか存じ上げませんでしたが、著者の丹羽さんはかなりの中国通のようです。そして、その現場志向の考えが本書を読んでいてよく理解できました。
そういう意味では、彼のやり方はおそらく仕事も政治も、現場第一主義。マスコミも信用しない。噂話や評判も片耳を貸す程度。自分の目で見て確かめる、確認する。
そうやって人脈を築き、肌感覚を養った方だから書ける中国論であると感じます。
・・・
本書の内容の太宗は、タイトルにもありますが、中国(習近平)の考え方と方向性の理解、ということであると思います。
我々が報道で見かける中国というのは、反日だったり、強硬だったり、まあネガティブな印象が強いわけです。
首脳会談で中国側の代表が握手はしているもののニコリともしていない絵柄とかありますよね。
でも氏は、全て理由がある、というわけです。
ということで、日本人には不可解な中国のアクションについての理由付けをしていくというのが大雑把な内容であると感じました。
中国は実利優先というのはよくある話で、本作でも幾つか例示されておりました。しかし、実は米国も同様な部分があり、米中対立を印象付ける発言は「出来レース」(P.55)と喝破。
お互いに一定の線引きはできており、それ承知の上での「対立プレイ」をしていると言えましょう。
丹羽氏の謂うことが正しいとすると、そうした見えてない部分を考慮することなくストレートで反応する日本のマスコミはちょっとはずかしいですよね。
自国のコミュニティでは忖度大好きな日本人ですが、その感覚は国際政治を読み解くのに使えるのに、と考えた次第です。
・・・
あと本作、中国の独裁体制は崩れる!と帯にでかでかと書いています。
でもこれは決して嫌中というわけではなく、そうせざるを得ない・ならざるを得ないだろうというのが氏の冷静な読み、であります。
その要諦はひとことで言えば貧富の差。
共産主義という平等を形にした国ではあるべきでないこの格差。これを国民を納得させるためには一定の社会保障や分権、民主主義的な要素を徐々に吹き込んでいくしかないということのようです。
だからこその現在の独裁体制とトップダウンでの政治体制、ということです。こんなのを今始めてしまうと、ウイグルだ内モンゴルだと次々に独立騒ぎになり収集がつかなくなると。
つまり、習近平は(民主的な)国へと中国を変えるために独裁体制を強化している、と誤解を恐れずに言えばこうなります。
・・・
ということで丹羽氏の著作、初めてよみました。貰いものなのですが、非常に面白く読みました。
日本の将来を憂い、中国を仲間として見、自らの足で人脈と見識を稼ぐ人とお見受けしました。一緒に仕事ができたらきっと刺激的で苦しくも楽しい時間が過ごせるのではないか、と文章を読んでいて感じました。
世界経済の行く末に興味があるかた、投資をどっぷりしているかた、お仕事で中国と関係がある方は読んで参考になると思います。
少し古い本ですが、古びない政治経済の見識が語られていると感じました。