あらすじ
差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。むろん通夜も葬儀も行っていない。いったい何故、何のために。記憶を整えると、遠い昔に別れた女の名前が蘇り……。老いの入り口に立った男の憂いと怒り、焦燥、絶望、狂気、そしてエロス。芥川賞作家が円熟の筆で描く珠玉の短篇小説集。
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Posted by ブクログ
短編集。
中高年層の男性の
ありふれた日常の中で、
自分自身の精神、身体にまっすぐに目を向け
対話するように綴られる文章。
華やかな若さを持った時代の男女にはない
心身ともに落ちるように変化する様々な出来事を
クスリと笑えることも、やがて哀しきなんとやら。
こんな風に、下り坂の時代をまっすぐに描いていながら
素敵な文章にできるのは、特殊なことなんでしょうね。
幾つかは、ニヤリと、幾つかは哀しく。
こうやって、誰しも日常を積み重ね老いていくのでしょう。
更年期を迎えた女性が読んでも、
まだまだと思っているおじさんが読んでも
それぞれに、ズンと響く何かがありそうです。