あらすじ
女は裸で波間にただよっていた。脳裏をよぎるのは、陵辱されたことではなく、手指の骨を折られたことだった。――そして小石の浜に打ち上げられた遺体が発見される。被害者は長時間泳いだ末に力尽き、溺死していた。一方、死体発見現場から二十キロ以上離れた港町では幼女が保護される。彼女は被害者の三歳になる娘だった。なぜ犯人は母親を殺したのに娘を無傷で解放したのか? 海を恐れ船に乗らなかった女性がなぜ溺死したのか? 凄惨きわまりない事件は、被害者をめぐる複雑な人間関係を暴き出す。現代英国ミステリの女王が放つ稀代の雄篇。/解説=杉江松恋
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Posted by ブクログ
久々のミネット・ウォルターズ。安定感があるなあ。解説をみると、すでに読んだ『囁く谺』と『蛇の形』の間に発表された作品らしい。どうして邦訳が遅れたのかは、謎。さらに、『病める狐』と『蛇の形』の間に発表されたAcid Rowという未邦訳も。そして、2003〜2007年までに3作。その後は…ないのか??
地味だけど人間味のある、好感が持てる警官たちと、被害者・被疑者たちの様々な鬱屈、アンバランスな人間性の対比がくっきり。
所々に出てくる、シンプルだけど含蓄のある言い回し、文章にはっとさせられた。奇をてらわず、勢いだけもなく、地に足の着いた、そういう文章がぐっとくる。