あらすじ
財政難にあえぐ地方自治体。住民サービスの質を維持するためには、公務員が受け身の姿勢ではままならない。これからの時代、地域社会が元気であるかどうかは、すべて公務員の“やる気”にかかっている。その数およそ350万人。この巨大な人的資源を活用するためには、いたずらにバッシングするのではなく、彼らのモチベーションを改善して積極性を引き出すべきだ。本書では、財源も役職も不要の、「スーパー地方公務員」の育て方を考え、地域社会が豊かになる方途を描く。
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Posted by ブクログ
本業での自分の立ち位置を確認するように読んだ一冊。「もっともっとできるだろ」と思ってしまった。
ネタばれになってしまうが、筆者は、モチベーションの源泉を<自律><承認><夢>だと分析している。分からなくもない。自分が生まれ育ったまちがもっともっとイキイキとしたまちにしていきたいと思うし、被災地支援活動をきっかけとして動き出した地域間交流プロジェクトを通して、様々な地域との橋渡し役になっていきたいと思うようになって、実際にアクションを起こしている。<夢>は実現するためのものであり、そのためのアクションは社会的なバックグラウンドを超えて、様々な方々とのコラボレーションによって、共通の<夢>となり、実現できていけるのだと思う。
もし、<夢>の実現のために「公務員」という職業が足かせとなっているのなら、自分なら組織を改革しようとは思わず、組織を離れようと思う。正直、そこに力を注ぐよりかは、<夢>の実現のためにアクティブに動きたい。組織が大きいければ大きいほど、「組織」というのは改革しようとしてよくなっていくのではなく、世の中の「潮流」に押されるようにして変わっていくものだと思うからだ。
東京は生ぬるい。もっとガツガツいかなけれならないなと思った。
Posted by ブクログ
公務員バッシングが多い中、いかに公務員のモチベーションを高めるか、組織論・心理学の観点から説いている。公務員でも頑張っている人は多いため、ひたすらバッシングをして彼らのモチベーションを下げるのではなく、いかにモチベーションを上げさせるかという視点である。
めざましい成果をあげている自治体に必ずいるキーパーソンを本書では「スーパー公務員」と呼んでいるが、そう呼ばれる人たちは、その自治体業務の枠を超えて活躍している。本来ならば改革派の公務員は組織内では嫌われるが、そのような人たちは本人の思いや努力のみならず、周囲からの理解を得られるという環境があった。周囲の環境については縁の問題もあり、自分の力ではできることに限度があると思うが、組織外の人間と交流を増やし、自身の視野を広げていくことは、「スーパー公務員」になるために必要不可欠であろう。
本書で最も心に残った点は、「退職までこの自治体で」と最初から決めてかかるのではなく、30代、40代で転職することを著者が勧奨していたことだ。
Posted by ブクログ
・別に自分は公務員ではないが、自分の管理・運用系の職種は制度設計し制度運用していく公務員に似たところがあると思ったので、手に取った。とりわけ外部資源の活用の部分に共感した
・外部資源の活用の部分を読んで、公務員と外部(世間)との関わりを増やし、役所を閉鎖的なものからより開かれた形にすることの
重要性を感じ た。これは自分の職種でも同様。外部との関わりとオープンネスである。
・外部との関わりの中で民意を、自分の職種においてはニーズを感じることでニーズに近い仕事に変わっていく。
外部との関わりの中で、承認機会が生み出されていく。
これが仕事のやりがいにつながる。
Posted by ブクログ
とてつもなくモチベーションが高い公務員をスーパー公務員と呼び、そのような公務員が存在しなければ地域社会は良くしていけない。
今の公務員の人事評価では、モチベーションに上限を設けやすく、そこそこでも組織の中では生きられるというものである。
公務員がそこそこだと地域にとってそれは損失であり、スーパー公務員を排出できる体制を取っていかなければならないという内容。
やる気の源は、「自律」「承認」「夢」とあり、自分としては、「夢」がとても大切だと感じた。
当たり前かもしれないが、夢を大きく持つこと、それによって並外れたモチベーションと行動力を生み出される。
それも明確な夢を持つこと。これについてこの本で気づくことができた。
Posted by ブクログ
近年、マスコミの公務員バッシングが激しさを増している。また、公務員をたたいたりポピュリズム型公務員改革を進めたりすることで世論にすり寄ろうとする政治家もいる。これらは理論的・論理的に考えると、公務員の”やる気”を失わせることにつながる。
現在公務員は約345万人おり、さらに政府系企業などを加えると約538万人に達し、雇用労働者数(約5462万人)のほぼ10人に1人は「公務員」であるため、公務員をいかにして動機付けるかは日本全体に関わる重要な問題である。
1.公務員のモチベーションを低下させる要因
①目にみえる待遇悪化
モチベーション理論の一つに、J.S.アダムスらが唱えた「公平理論」がある。人は、自分の仕事に対するインプット(貢献)と仕事をとおして得られるアウトプット(報酬)が、釣り合っていると感じたとき満足する。よって公平とされる基準である人事院や人事委員会の勧告以上に給与等が削減されると、モチベーションが低下し、生産性が低下してしまうおそれがある。
②公務員バッシング
ある社会心理学的研究によると、職業的自尊心と組織的個人的違反には負の相関がある。すなわち、バッシングやクレームにより自尊心が傷つけられてしまうと、違反や不祥事など目に見えないところでのサボタージュが発生する。
③成果主義の導入
行政改革により、公務員にも成果主義が導入されつつある。しかし、先行した民間企業においては、社員の動機付けや生産性向上の面で目立った効果をもたらさなかったうえ、社員の不満や不公平感が大きく、撤回もしくは大幅に見直されている。公務員の場合も客観的な評価は困難であり、評価するとなると、必要のない仕事や会議を行うなど、表面上のやる気をアピールされてしまうだろう。
2.やる気の根源(下記の①~③)とその増加手段
①内発的動機付け(奉仕の精神・夢)
公務員には、住民のために尽くしたいとか、少しでも地域を発展させたいという思いを持っている人が多い。特に、スーパー公務員と呼ばれる人の中には、自分の生まれ育ったまちを豊かにしたり、地域の人たちを幸せにしたりすることを夢見て、それにまい進している人がいる。
②仕事の自律性
やる気を引き出す上で、責任を伴うが自由度が高い、つまりは自律性が高いことが重要である。しかし、以前と比べ裁量権が小さくなっているようだ。要因の一つとしては、管理職過剰がある。上司は手持ちぶさたの中で、自分の存在感を示そうとするので、部下の仕事に細かく口を出したり、頻繁に相談・報告を求めたりする。
改善策としてはポストの削減が浮かぶが、承認欲求を満たすためにも、ある程度のポストは必要である。よって、民間企業同様に、課長クラスまではプレイングマネジャーになってもらい、部下の管理を最小限にとどめてもらうのがよいだろう。
また、仕事の分担を明確化し、その範囲内でできるだけ裁量を持たせる。《ただし、能力に合わせて仕事を割り当てないと、職員間の不公平感が高まるおそれがあると思う。とは言え能力に合わせて仕事を割り当てることは難しい。》
③承認欲求
マズローの欲求五段階説にもあるように、人間には認められたい、ほめられたいという欲求があり、他人から承認されることでやる気が出る。
よって、上司が具体的な事実や客観的な情報に基づいて部下をほめたり、認めたりするとモチベーションが上がる。
また、役所の外でも認められる機会が得られるように、公務員に講演やシンポジウム、マスコミでの発言、専門誌への寄稿などを奨励するのもよいだろう。地味な仕事の場合は、ホームページや広報などで紹介する。