【感想・ネタバレ】罪と罰(上)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

何だこれは。登場人物もストーリーも粗野で荒々しい限りなのに、途轍もない力で小説世界に引き込まれる。名著の筆頭に挙げられるのも納得の圧倒的作品。

1860年代半ば、夏のロシアの帝都ペテルブルグ。学費滞納のため大学を辞めた貧乏青年ラスコーリニコフは、それでも自分は一般人とは異なる「選ばれた非凡人」との意識を持っていた。その立場なら「新たな世の中の成長」のため、一般人の道徳に反してもいいとの考えから、悪名高い高利貸しの老婆アリョーナ・イワーノヴナを殺害する。しかし、その最中にアリョーナの義妹リザヴェータも入ってきたので、勢いでこの義妹も殺してしまう。この日から彼は、罪の意識、幻覚、自白の衝動などに苦しむこととなる。予審判事のポルフィーリーの執拗な追及をかわしたラスコーリニコフだが、下宿の前で見知らぬ男から「人殺し」と言われ立ちすくむ。しかし「人殺し」という言葉は幻覚で、見知らぬ男はスヴィドリガイロフと名乗る男だった…。

みな熱病にうなされたようによく喋る。それは会話というより、長広舌で思いの丈をぶちまけるといった印象。共感できる人物は見当たらないわけですが、とんでもない勢いで物語は転がっていきます。
主人公ラスコーリニコフと予審判事ポルフィーリーとの犯罪論の応酬も見どころですが、老婆を殺した現場に義妹も居合わせていたところや、妹の縁談を壊そうとする主人公、「人殺し」と指摘される幻覚に魘される場面など、異様なリアリティをもつ描写は、エンタメとしても抜群の破壊力。
1861年に農奴解放令が出され、既存の価値観や思想が否定されたというのが時代背景としてよくある解説ですが、それにしても貴族や聖職者などかつての上位身分の権威を否定し尽くすような、ドストエフスキーの描く庶民の溢れるエネルギーに打たれますね。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ドストエフスキーの後期五大作品のひとつ目の作品で、四十歳台半ばで書かれたらしい。言わずと知れた名作だけどこれまで漫画でしか読んだことがなかった。漫画ではさらっと流されているシーンにも、かける熱量が違う。迫力が違う。さすがドストエフスキーだと思った。

主人公・元大学生ラスコーリニコフは極貧にあえぎ、強盗目的で質屋の老婆とその妹を殺す。彼は自分で作った理論のもとに自己を正当化する。人々は凡人と非凡人に分けられ、非凡な人はその非凡を為すために障害を取り除く権利を持つ、というものだ。その理論によればたとえ殺害を犯したとしてもそれは非凡な偉人にとって取るに足りない微細なものだということになる。だが冷徹な切れ者の主人公にも良心があり、事件の後に苛まれることになる。善悪のはざまで揺れ動く主人公の複雑な心理を読者はたどる。普段は冷徹だが、善行を施すときは人情家みたいにもなる主人公。他者に救いを与える一方で、自身も救いを求めているところが人間くさい。主人公の周りの人物も魅力的だが、なかでもおせっかいな友人のラズミーヒンが微笑ましい。下巻はさらに面白くなりそうで楽しみだ。

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2022年02月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めっちゃ面白かった。「老婆を殺した主人公が罪の意識に苛まれる話」だと聞いていたので、序盤に老婆が死んだ時には「あちぁ〜もう死んじゃうのか、今後一体どう展開するんだ?」と思ったが、いや面白い。人物の内面とか情景、寝ている間にみた夢などの深層心理を見せる描写に加えて、会話や個性的な登場人物の見せ場も置いている。言い換えれば、テンポがいい会話劇を見ているような気分にさせたと思いきや、小説ならではの深くて尺をふんだんに使った内面の描写でも魅せてくる。そんな複合的な見せ方を心得た作品だという印象が強い。上巻の最後がとてもいいところで終わったので、続きが気になる。

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2021年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公ラスコーリニコフの中に渦巻いている感情とそれに付随する行動に一貫性がないところが良い。
亭主を喪い路頭に迷うであろうマルメラードフ一家に葬式代として大金を握らせるシーンがあるが、そもそもこの母ですら非常に困窮している中なけなしのお金をなんとか送ってくれたものであり、しかも自分が老婆を殺した理由も困窮からくるものだったのに!美談にも捉えることができるこの行動だが、これは彼が弱い人を見捨てることができないという正義感によるものではないだろうし、非常に自惚れた行いだと思った。
葬式代をあげてしまう突発的な行いそのものには善も悪もなく、その後ラスコーリニコフ自身がどういう人間として位置付けたいのか(「乗り越える」力を持った人間になりたい!)ということが付与されたと考えると、今までの行動も、あと付けあと付けの繰り返しだったからより一層のちぐはぐさがあったのかもしれないと納得する。
「優しい」や「繊細」という言葉が、印象として近いカテゴリにあるけれど意味は違うように、施しの気持ちがあるからといってそれは慈しみや他者への愛情であるとは限らないのかもしれないと思った。
また親友ラズミーヒンでさえ、善良で精神的に安定した好青年の印象があるが、時に人に強く当たったり、誰も彼もにどこかしら過剰な部分がある。彼ら登場キャラクターにはフィクション特有の、一つの理念に基づいた行動の一貫性がない。『罪と罰』は、よく苦悩し渦巻く人間の内面を、否定も肯定もせずただそこにあるように描いている。「人間」であることそのものを肯定し、完璧な「1」にしがみついている人の呪いを解いてくれるセラピー作品なのかもしれない。

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2023年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

殺人を犯してから、
精神が病的に蝕まれていく様が生々しい。

気分が躁鬱のようにころころ変わり、
開き直ったり、怯えたり、自嘲したり、
一貫性がないのが逆に現実的に思える。

人間に対する、各人の様々な主張が物語に厚みを出す。

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2021年09月13日

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