あらすじ
突然空が黄色くなった十一歳の日、爆竹を鳴らし続ける十四歳の日……十歳から十九歳の日々を、自由に時を往き来しながら描く、不思議な魅力に満ちた、芥川賞作家の代表作。有栖川有栖氏、柴田元幸氏絶賛!
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Posted by ブクログ
色縛りの連作。
実は緑よりも赤のほうが登場している印象あり。
というのは、地の文が「微温的緑」のままだからこそ、火や火事や血や夕焼けの赤が衝撃的なのだろう。
そいえば語り手も相手も結構熱い台詞を吐いている(どうやったら、ら、かっこよくなれるんかなって、とか、意思があればどこにでも行ける、とか)。
緑と赤の落差、微温と熱の落差、が本全体を不穏にしている。
そして、やはり文体の凄まじさ。
徹底的に過去形しか使わない「寝ても覚めても」と同じ系列だ。
そしてまた、記憶。
決してその時期だけにフォーカスしているわけではなく「その数年後にこうなったからこのときはこうだった」といった行き来も、なきにしもあらず、なので、視点が浮遊しっぱなし。
それが緩さではなく凄みに達するのが、文体の効果ということか。
さらにまた、生活のディテール。
どうしてそんなものに着目して記述できるの、という驚きが、さりげなく組み込まれて、唯一無二の読後感を引き出す。
唐突に出てくる海外ミュージシャンがだいたい関西弁で気さくなのは笑ってしまう。