あらすじ
「雪男(イエティ)がいるんですよ」。現地研究者の言葉で迷わず著者はブータンへ飛んだ。政府公認のもと、生物資源探査と称して未確認生命体の取材をするうちに見えてきたのは、伝統的な知恵や信仰と最先端の環境・人権優先主義がミックスされた未来国家だった。世界でいちばん幸福と言われる国の秘密とは何か。そして目撃情報が多数寄せられる雪男の正体とはいったい――!? 驚きと発見に満ちた辺境記。
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Posted by ブクログ
今までブータンという国がどんな所なのか、殆ど知識がなかったので勉強になった。今はこの本が書かれた頃からだいぶ年月が経っているので、どんな風になっているのか興味がある。
最終章で、殆どの国は欧米の影響を受け、近代化に邁進し、自由、人権、民主主義が推進される。個人の自由は広がるが格差は広がり、治安が悪くなる。環境が大事だ、伝統文化が大切だという頃にはそれは破壊されている…
ブータンはこの道を辿らず、先進国の良い所だけを取り入れて、独自の国を作っている、という考察が印象的だった。ブータンだっていい事ばかりじゃないだろうけど、今の日本を見ていると、ブータンの国のあり方をもう少し参考にしたらいいんじゃないかと思ってしまう。
Posted by ブクログ
お気に入りの高野さん。著者の辺境ルポタージュを読む度に思う。もう “冒険者” と言ってもいいのではないかと…。
本書を読むまで恥ずかしながらブータンという国について全くの無知でして、興味深く読みました。
ブータン「国立生物多様性センター」と政府公式プロジェクトとしての生物資源調査の様子を綴った本作品。
…ですが、著者には「雪男」調査という大きな目的があり「むしろそっちがメイン?」と思えた。
中盤までは「雪男(ミゲ)」について。過酷なわりになかなか収穫がなくて何だかちょっと気の毒になってきた…。生物資源調査も然り。
世界の秘境を訪れ多数著書を出されてますが、こんなに過酷で身体は本当に大丈夫なのかと心配になりました。
高野さん、身体張りすぎでは?
ブータンと言っても多民族でそれぞれの暮らしや言語、習慣があっておもしろい。「ゾンカ語」も初耳。あと、おもてなしの酒量が異常すぎる。
東京都八王子市ほどの国土面積、信仰や行政も興味深かった。
動物関連や植物関連の書籍もたまに読むのですが、本書を読んで生物資源開発観点から見たブータンの持つ大きな可能性も感じました。
ただ、本書はどちらかというと「雪男」についての熱量の方がより大きかったなぁという印象。
Posted by ブクログ
ブータンに雪男を探す目的で行ったのだが、いつの間にかブータンという国を明らかにしようとしていたのは面白いなと感じた。
ブータンに伝わる雪男の話から、ブータンという国を理解するように行動が変わっていったという。
高野秀行は元々未確認生命体を探検していたが、どんどんテーマが大きくなりいつの間にか国家をテーマにするようになったと思われる。
ミスチルの桜井が歌う内容が「個人的な恋愛→精神→世界について」と変遷したのと似た感じがする。
人は探求を続けていくうちに、テーマが大きくなっていくものなのだろうか。
あと、高野秀行は豊富な知識から国について明らかにするのが得意なようだ。ただ国を観察するだけでなく、他の国の事例や歴史的背景を踏まえて国の全貌を明らかにしようとしている。
一見、ふざけたような行動からは想像できないほどの緻密さが彼の書く文に表れていると思う。
「中等教育が伝統を壊す」という発言が、この著書に書かれていた。この考え方は、社会科学について精通していなければ生まれることはないだろう。
観察と知識の二つを武器にして生まれる彼の説明はいつも感心するものがある。