あらすじ
精神障害やアルコール依存などを抱える人びとが、北海道浦河の地に共同住居と作業所〈べてるの家〉を営んで30年。べてるの家のベースにあるのは「苦労を取りもどす」こと――保護され代弁される存在としてしか生きることを許されなかった患者としての生を抜けだして、一人ひとりの悩みを、自らの抱える生きづらさを、苦労を語ることばを取りもどしていくこと。べてるの家を世に知らしめるきっかけとなった『悩む力』から8年。 浦河の仲間のなかに身をおき、数かぎりなく重ねられてきた問いかけと答えの中から生まれたドキュメント。
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Posted by ブクログ
統合失調症を理解するために手に取った。北海道のクリスチャン界では「べてるの家」はわりと有名なのではないかと思う。カトリックのうちの母も知っている。
患者さんたち(みんな統合失調症)のエピソードの中に、病院で同じ入院患者を刺し殺した人と、殺された人の家族のものがあった。重大な事件ではあるが、みんなそろって教会に集まって故人を偲び、被害者の父親はこのままべてるの家を続けて欲しいと訴える。お互いの苦しみが痛いほどわかるからこそ、責めることなく、必要なのはべてるの家のような居場所であることをみんなで再確認する。人はここまで寛大な気持ちでお互いを助け、守り合うことができるのかと驚いた(そして泣いた)。それは病気をとおして得る人間性なのではないかと思う。
Posted by ブクログ
・アイメッセージ
言葉の土壌に、芽が出て、木になり、花が咲く。
・人間アレルギー
死に向きあってしまう。 日本に来た禅僧のネルケ師の話にそっくり。
・治さない
前にも後ろにも立たない、寄り添う立場の精神科医。
・苦労の哲学
何もかも正面から受け止めてきた人が、相談員になってそばにいる。
・しあわせにはならない
言葉は心から出てくるが、その心は自分の心だけでなく、他の人の心と響き合っている。 アウシュビッツの煙突から出る両親を焼く煙を見上げた少年の心が、時と場所を遠く離れて、別の人の口に「僕は幸せになりません」という言葉になる。
彼が結婚するとき、今度は自分の言葉となって耳によみがえる。
この世界は声、光、波、こころに充ちている。