あらすじ
高校三年の夏、宮原暁良は季節外れの転校生として信琳高校の土を踏んだ。叶わぬ恋から逃げるようにやってきた暁良を迎えたのは古びた学生寮と上品な寮母、そして耳に残る別れの曲……。ピアノの音を辿った先で暁良は、繊細な音色とは不釣り合いな明け透けな笑みの少年、成瀬祐と出会う。寮で共に過ごすうちに、成瀬の朗らかさと気遣いが暁良の心を癒してゆくが……。子供でも大人でもない少年たちの、不器用な恋の物語。小椋ムク先生の口絵・挿絵、特別付録として電子書籍限定SSも収録。
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Posted by ブクログ
『君を想う鼓動』のために『ギフト』があったような気がする。
「gift」とは(うまれつきの)才能。しかし、何かを与えられていても 与えられなかったものがあるかもしれない。
与えられたピアノの才能に対し、与えられなかったものが 二つ。
お父さんたちの話は 思わせぶりな形でおいてあるのが とても良いと思う。
Posted by ブクログ
高校生もの。設定も展開も至って普通。でもそこがすごく良い。デビュー作の時に感じた、綾さんの良さが詰まった作品。人によっては地味でありがちという評価に落ち着いてしまいそうだけど、だからこそその良さが引き立っていた。二作目以降から、設定の奇抜さで読み手の目を引こうと手を変え品を変え…と迷走していた感があった作家さんでしたが、ド直球の今作は文句なしに響いてきた。内容にひとつも触れないまま、ちょっと褒めすぎじゃないかという気がしないでもないけど、個人的にイエスタディの綾さんが健在で嬉しいという気持ちでいっぱい。どうかこのまま、その良さがつぶされませんように。
Posted by ブクログ
切なくて甘い青春小説でした。
わけあって高校3年の夏に田舎の高校に転校してきた暁良が卒業までの半年という短い季節の中で経験していく寮生活と恋愛を、デリケートに描き出したストーリー。
好きだった陸上も続けられなくなるほどダメージを受けてしまった暁良が逃避したのは昔父親が通っていたという高校。そこで彼はピアノが上手くて人当たりのいい成瀬という同級生と急速に親しくなっていきます。
「ギフト」という言葉には色々な意味が託されています。
暁良は同じ失敗を繰り返したくなくて、成瀬になかなか気持ちを伝えられなかったし、成瀬もまた言えない事があったのだろうけど、卒業の日の出来事には思わず泣いてしまいました。
互いの気持ちが通じ合ってる、両想い!と幸せな気持ちになっても、高校を卒業すれば同じ時間を過ごせなくなるあの時期特有の不安。
成瀬にも好きだからこそどうしても打ち明けられないことがあって。
誤解したり信じられなくなったりする暁良の気持ちに胸が痛くなりました…
なので甘く優しいエンディングには、ほんとに癒されました!
「それから」の二人が幸せそうで何度も読み返しました。成瀬が暁良をお風呂に誘うシーンが甘くてよかったです…!
小椋ムクセンセのイラストも素敵で、大満足できたストーリーです。