あらすじ
ぼくが1年A組の幽霊になって、一月が経過した――高校に入学したばかりのころの失敗によってクラス内で孤立し、いまでは幽霊扱いされている一居士架(いちこじかける)。惨めな日常を過ごしながらも限界を感じていた架は、十月の席替えで前の席になった玖波高町(くばたかまち)に突然話しかけられる。それは彼の苦しみに満ちた毎日に変化をもたらす、小さくも確かな予兆だった。時を同じくして、校舎の周辺では蝶結びのメッセージを残した動物の死骸が相次いで発見され、休みがちになった高町は何かに思い悩むような様子を見せはじめる……。圧倒的な筆力と繊細な技巧が紡ぎ出す、静謐な感動に満ちた青春ミステリ。/解説=大森望
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
謎を核として展開するミステリではなく、そうなるだろうという予測を気持ちの良いくらいひっくり返す展開で魅せるミステリ。そして、それが一度だけではなく、何度も何度もなのだ。各エピソードだけで短編が書けるのではというネタを惜しげもなく注ぎ込み幽霊と呼ばれる主人公の男子高生と彼が見えて話しかける女子高生の2人の物語を加速度的に盛り上げていく。衝撃の死から以降、終盤に明らかになる感情の発露は衝撃的。下卑た想像を容易に超えていく真実は彼女だからこそ痛いのだろう。家族と青春を語りによって見事に描き出している傑作。ただ、内容の素晴らしさに反して、このタイトルだけはちょっとどうかと思うのだよ。