あらすじ
過酷な運命を背負って生まれてくる人がいます。この実話物語(ノンフィクション)の主人公もそんな一人です。少女時代に父親から性的虐待(ぎゃくたい)を受けた母。幼き日に目の前で見たその母の自殺、その後、預けられた養護施設での虐待、若くしてのホームレス生活――義務教育もろくに受けられず、拾った新聞などで文字を覚えた彼女が考えつづけた「なぜ、生きなければいけないのか?」という問いへの答えとは? これは、生きづらさを抱えたあなた、失意に沈んだ時のあなた、悲しみにくれる日のあなた――のための物語でもあるのです。
“芸術家は、もともと弱い者の味方だったはずなんだ”――『畜犬談(ちくけんだん)』(太宰治)
「三十一文字が長く細い鎖となって暗闇の底に降りていて、ふと手に取ると歌人が命がけで向こう端につかまっているのがわかるのだ。」(いとうせいこう氏・推薦!)
【編集者より】希望の書であるビリギャル編集後に鳥居氏のお話を伺い、「信じられる人とついに出会えず、自分の人生は失敗だ、と思った時、人はどう生きるのか」という本を手がけたく思いました。壮絶な“家なき子”人生の中、鳥居氏の心を救ったのは芸術。「芸術家は、もともと弱い者の味方だった筈なんだ」という太宰治の言葉を体現したような実話で、皆様の周囲にひっそり生きる弱者とされる人々をかすかに照らす、かがり火のような一冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
今年1番に魂を揺さぶられました。僕のような文章弱者は本作のように鳥居さんの生い立ちを辿りながら、感情移入しながら、作品(短歌)を読む事で理解し、感動する。
鳥居さんの作品を手に取ろう。そして鳥居さんが幸せに暮らせることを東京の端より願います。
Posted by ブクログ
セーラー服の歌人鳥居 岩岡千景 KADOKAWA
教師であった両親と裕福ながらしつけの厳しい中で
父親に性的迫害を受け良妻賢母の母にも突き放されて
家出同然のシングルマザーであった母の服毒自殺に
11歳の少女は学校からの帰宅で出合い
死んだ振りをしているのだと思い
のり弁を水で飲ませようとしたりしながら成すすべもなく何日かを過ごす
保健室の先生に話したその後は
やる気のない行政官とイジメの蔓延した養護施設においての日々の虐待
そこでの楽しみは読み古しの新聞紙で漢字を覚えることぐらい
その後も補助金付きの小間使い目当ての里親や駆け込み寺のDVセンターや
同じように女中扱いでしかない祖母の家に暮らし
八百屋などでアルバイトしながら痴呆になった祖母の垂れ流しの世話をし
祖母が入院した後は
財産を狙う親戚に脅され追い出され
昼間はデパートのトイレで洗濯したりウトウトして
危険な夜は早足に町外れを歩き回るというホームレスになる
そんな中で新聞に載った和歌と出合い自己流で真似事を始め
様々な作家と作品に出合う中で食えない創作に励む
この本の著者は東京新聞の記者であり「作家が生まれるとき」の取材中に
鳥居と出合いその付き合いの中で鳥居の
「キリンの子鳥居歌集」の出版へと流れていく
Posted by ブクログ
過酷な子供時代を過ごした彼女が、短歌に出会ったことで生きる望みを見出し、歌人として活動する話。
鳥居氏のことは、Twitterのフォローはしているものの「セーラー服着たサブカルっぽい雰囲気の歌人」くらいにしか認知していなかったが、この本で彼女の半生を知り、もっと早くこの本に出会いたかったと後悔した。
言葉で命を繋ぎ、また彼女自身も言葉の力で誰かの命を救いたいと活動する姿に感動した。芸術はお腹が膨れるものでも、お金が儲かるものでもないけど、死の境地に立つくらい悩み苦しんでいる人の灯火になる。
彼女の以下の言葉が突き刺さった。
「"自殺したいと思ってしまった人"を踏みとどまらせるには、力づくで生の側へ引き戻すのではなく、死の世界まで一緒に潜って一緒に戻ってくるという手続きを踏まないといけないと思う」
友人が目の前で自殺したという彼女にとって、自死をどうすれば踏みとどまらせるのかは大きな課題だという。
Posted by ブクログ
何やら誤解を招きそうな表紙だけど、単純に鳥居さんの短歌にはハッとさせられる。言葉がぐさっとくるけど、優しい。
大変な苦労をしてきたようだが、彼女はそんな風に言われるのは嬉しくないだろうから、感想は書きづらいなあ。
一度、読んでみて、という感じです。
Posted by ブクログ
以前、記事か何かでこの歌人のことを知り、ずっと気になっていた。
かなり壮絶な体験の持ち主。解離性障害を負っているというほどの過酷さである。よくぞここまで生きていたとすら感じる。
彼女自身の体験から紡ぎだされた短歌は、平易な表現でありながらとても心を揺さぶられる。彼女最初の作品集『キリンの子』も一緒に借りたので読んでみるつもり。
ただ惜しいのは、どうにも本書のノンフィクションとしての仕上がりが今一つなこと。新聞連載をまとめて加筆修正したことがその原因なのか、一冊の本としての読みごたえに不満がのこる。
構成のせいなのか、エピソードの掘り下げ不足なのか、敬体であるせいなのか、はたまた単に文章力のせいなのか、ここが、とうまく言えないのがもどかしいが、何とも中途半端な感じが否めず残念。