【感想・ネタバレ】台湾とは何かのレビュー

あらすじ

台湾が激しく動いている。戦後日本は台湾に撤退した中華民国と国交を結んだが、後に中華人民共和国と国交正常化を行い、台湾は遠い存在になった。しかし、目覚ましい経済発展と見事な民主化、東日本大震災での日本への巨額の支援もあり、台湾は再び身近で重要な存在になりつつある。台湾は中国にとってのアキレス腱であり、日本にとってのジレンマだ。日中台の複雑なトライアングルの中、台湾は絶妙のバランス感覚で日中と巧みに渡り合う。二〇一六年総統選挙で劇的な政権交代を遂げた最新の姿を、政治、歴史、社会から解き明かし、冷戦期の固定観念から脱した新しい「台湾論」を提言する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「親日国(地域?)台湾」。これが多くの日本人が台湾について語る言葉である。しかし、著者が指摘するように、残念ながら多くの日本人は、台湾の歴史(特に日本との関係)を理解することなく、ただ「思考停止」しているというのが事実ではないだろうか。台湾を等身大の台湾として理解するための入門書。これが、本書の位置づけのようである。

台湾の歴史は複雑だがその分面白い。500年前まで南島語族の先住民族の居住地だったが、16世紀以降、福建系・客家系の南方系漢民族など新たな族群が渡来。「海洋アジア」と「大陸アジア」などが混在する多様性に富んだ民族構成になっている。日本統治50年の結果、日本文化に造詣が深い日本語話者も少なくない。
日清戦争(1894-95)、辛亥革命(1911-12。1912年1月1日南京に中華民国成立)、日中戦争(1937-45)、国共内戦、東西冷戦という、東アジア世界を大きく変えた近現代史の大事件に、台湾は深く絡んでいる。台湾はアジア世界の縮図のような国なのである。

国連との関係も注目すべきだ。常任理事国は国連憲章で規定されており、今も中華民国(The Republic of China)が含まれているのである(第5章-第23条1)。
The Security Council shall consist of fifteen Members of the United Nations. The Republic of China (略) shall be permanent members of the Security Council.
1971年に中華人民共和国が加盟を果たそうという時、蒋介石総統はアルバニア決議「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」(10月25日)を不服とし、国連を脱退。中華民国の立場を中華人民共和国が引き継いだ形となっているのだ。

尖閣諸島問題について、中国人の領土認識では、尖閣諸島は台湾の一部であり、台湾は中国の一部だから尖閣は中国の一部という論法らしい。そもそも、台湾には中国の権限が及ばないはずなのに。その一方、1895年に無主地である尖閣諸島を「沖縄県」に編入した事実を記載しないのは、明らかに元朝日新聞記者としての偏向の表れだ。

台湾の独立問題で重要なのが「92年コンセンサス」。これは「中国と台湾がお互いひとつの中国を否定しないことを信頼関係の基礎とし、ひとつの中国がそれぞれ同床異夢であることはあえて問題視しない」という確認事項である(p.186)。民進党はこのコンセンサスは存在しないとする。
台湾の独立は、「理想主義」と「現実主義」の対決とも読める。しかし、国民党の「現実主義=現状維持」という言葉によって人を感動させることはできるであろうか。一方民進党は、「いずれは独立」という「理想主義」を持っている。最近は「天然独」と呼ばれる、生まれながらの独立派が増えている。彼らには独立の「理論」はない。ただ「台湾は台湾だ」と考える。
台湾の行く末は、日本に大きな影響があるだけに、思考停止ではいられない。問題は国民だけではない。日本の左派・革新勢力(野党)は台湾との付き合い方において定見を持てず、軸足が定まらないことも問題を大きくしているのだろう(p.254)。

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2018年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【221冊目】元朝日新聞台湾特派員だった筆者が書いた2016年発行の本。筆者がここ10年の台湾を書いたと言っているが、その10年がどのような過去に規定されていたのかという点も簡単にまとめてあるので、台湾(の特に政治)に関する入門書としては最適だと思う。

 読んでいて痛烈に感じたのは、筆者の「かつて、日本においては、台湾について正面から論じることをはばかられる時代があった」という認識。これが文書の端々から感じられる。

 興味深かった指摘の1点目は、今の台湾には大陸から台湾を守る盾が2つあるという話。
 1つ目の盾は、現状維持を望む民意。しかし、アンケート結果から浮かび上がるのは、大陸中国の圧力さえなければ独立を望むという台湾の民意である。「台湾は台湾」という民意は、各種選挙を通じて繰り返し表明され、台湾の政治家もこうした民意に配慮して活動せざるを得ない。結果として大陸中国もこれに一定程度留意せざるを得ず、安全保障上の盾となっているとのこと。
 2つ目の盾は、「台湾は『中華民国』である」ということ。これは、「台湾は台湾」という(最近の)大衆意識と矛盾するようであるが、このロジックの帰結は「台湾は『中華民国』であるからこそ、1つの中国を望む」というものである。大陸中国としては、眼前の的は台湾独立論であり、「台湾=中華民国」が「1つの中国」を望んでくれる限りは台湾独立論よりは御しやすい相手と認識するようだ。このことは「92年コンセンサス(九二共識)」というアプローチに姿を変え、中台関係のキーワードの1つとなっている。

 興味深かった指摘の2点目は、台湾と沖縄、尖閣諸島の関係である。
・1879年に、日本政府が沖縄県設置
・1895年に、日本政府が沖縄県に、尖閣諸島への勝手な渡航を禁止するための杭打ちを認める
・1896年に、日本政府が台湾の割譲を受ける
時系列で並べると、沖縄→尖閣諸島→台湾と、第一列島線に従って見事に南下している。地理的な近接性だけでなく、歴史的な経緯からも沖縄と台湾は、近代日本政府の南下拡張政策の対象だったことが分かる。
 ただし、筆者が、台湾の人が自己決定権を求めているように、沖縄の人も自己決定権を求めているというのには賛成できない。台湾が求める自己決定権は、政治体制や安全保障といった「国家」の根幹にかかわることであるのに対し、沖縄の人は、日本という国に組み込まれていることについては反対していない(地元2紙のアンケート結果からも、60%以上の人がこれを肯定している。)。

 あと、台湾と大陸中国を隔てたものが、近代性だという指摘も面白い。日本の統治により、台湾には近代的な教育や制度、設備がもたらされた。第二次大戦終結とともに台湾は日本の統治から解放され、待ち望んだ中華民国が台湾島に到来した。しかし、実際にやってきた中国兵は鍋を担いでいたという俗話である。ここに中華民国の前近代性が象徴され、日本支配以上に台湾の人々に嫌悪されてしまったという話である。

 台湾と大陸中国を隔てるものの中身は極めて多様かつ複雑であり、ここを理解しない限りは現代東アジアは語れないなと感じた。

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2018年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東南アジアの人たちと近現代史について胸襟を開いて話し合える日が来るのでしょうか。私は隣人である中国、韓国、北朝鮮そして台湾のことを少しでも知っておこうと思い、最近はこれらの国の歴史を少しずつ学んでいます。悲しい事実が多いですが、目を逸らさず偏らず、何が起こったのかを受け止めたいと思います。

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2016年10月23日

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