【感想・ネタバレ】スコールの夜のレビュー

あらすじ

第5回日経小説大賞受賞作。日本のエリート社会の典型であるメガバンク。女性総合職第一期生が、本店初の女性管理職に抜擢された。この「出世」が意味するところは? 日本のエリート社会で男性と対等に闘っていけるのか――。「女性の時代」の闇に斬り込んだ、まったく新しい経済小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

165 薫「会社に対する忠誠心はないが、自分の仕事に対する忠誠心はある」
169 ある枠組みのなかで自分のレースを設定し、それに勝ち抜いて達成感というご褒美をもらう。それが環の自己実現のやり方であり、銀行でいえば出世競争だった。上位の役職に昇進して大きな権限、報酬、やりがいが与えられ、成功の味をかみしめる。その達成感こそが環の心の支えてきたのだった。
249 一生懸命成果を上げるほど自分を責めてしまうこの仕事。一切の同情心を排除して任務を遂行できる石田の冷酷さがうらやましく思えたこともある。だが、そんな仕事だって誰かがやらなくては組織が存在しない
251 菊田の辞表
257 自己実現イコール出世だと考え、認められて出世するためには不本意であろうと汚れ仕事であろうと地べたを這いつくばる覚悟でやってきた。だがようやく出世してみると、それが本当に自己実現につながるのか怪しい。女だからという逆差別と、粉飾された人事評価。
258 自分がこの組織に加わってやりたかったことはなんなのか。それはこれまでやってこれたのか、そしてこれからこの組織にいてできることなのか。
設定された枠組みのなかでの競争は得意だが、枠組みの設定自体を作るのは得意ではない。
組織との付き合い方に明確な意識をもってこなかった。親子関係と一緒で、成長するにつれ組織と対等な関係を望むようになる。
280 組織のなかだけで自己実現を目指してきた環にとって、組織の外にもまた自分の力を試すことが可能かもしれないという事実は新鮮な驚きだった
自分がこの20年間所属してきた組織のことを考える。この組織のなかで自分が苦労してやってきたことは世の中の誰の役になったのだろうか。社会に対する有意義な貢献だったのか。自分を成長させてくれたのか。自分はこの組織に愛着をもってきたが、組織はどうなのだろう(正当に評価しているのか)自分のことを必要としているのか?自分はこの組織とどう向き合えばいいのか。組織に対する信頼感があやふやになり、気づかずにいた自分、あるいは気づかないふりをしていた自分を腹立たしく思った
290 誰にも負けることのなかった石田が、経験したことのない苦労と引き換えに言い知れぬやりがいをかんじさせてくれる挑戦だった
295 環「なんのため?売名行為?人道支援?」石田「どちらでもあり、いずれでもないなぁ。仕事ってそんなもんだろう」
どんな仕事も不純な目的や割り切れないしがらみを何がしら抱えながら進んでいる。そんなあきらめを持ちながらこれからも仕事とかかわっていくしかないのかもしれない。


組織の出世競争に機械的に挑む女性総合職第一期生の葛藤。女版の半沢直樹のイメージ。

自分の会社がまだましだ、私には組織への忠誠心はない、仕事への忠誠心が求められているだけまだまし、組織の外で自分の力が試せる可能性の発見が新鮮というのは私にはありえない、どんな仕事にも人間関係の調整、汚れ役はある。仕事ってそんなもの、と割り切れる。

ただ、日本人以外の人には理解不能かも笑。

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2014年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・我々の組織は我々を裏切ることはないと信じてたんだよね
・自らの良心に従い、もはや組織に留まることを潔しとしなかった
・自己実現イコール出世
・社会に対する有意義な貢献
・贖罪?売名行為?それとも本気で人道支援?
・だってお前さあ、仕事ってそういうもんだろう?
玄人はだしの作風。現役高級官僚にしては民間企業の内情を克明に描写している。想像ならどえらい新人。

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2015年04月19日

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