【感想・ネタバレ】マキアヴェッリ語録のレビュー

あらすじ

「天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」「いかなる手段もその目的にとって有効ならば正当化される」「人間は必要に迫られなければ善を行わない」……。浅薄な倫理や道徳を排し、ひたすら現実の社会のみを直視した、中世イタリアの思想家・マキアヴェッリ。「マキアヴェッリズム」という言葉で知られる彼の思想の真髄を、塩野七生が一冊にまとめた箴言集。

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ネタバレ

現実の厳しさ

一部ご紹介します。
・人間にとって、いかに生きるべきかということと、実際はどう生きているかということは、大変にかけ離れているのである。
だからこそ人間いかに生きるべきか、ばかりを論じて現実の人間の生きざまを直視しようとしない者は、現に所有するものを保持するどころか、全てを失い破滅に向かうしかなくなるのだ。
なぜなら、なにごとにつけて善を行おうとしか考えない者は、悪しき者の間にあって破滅せざるを得ない場合が多いからである。
・天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。
・人間というものは、自分を守ってくれない、誤りを正す力も無いものに忠誠であることはできない。
・武力がなければ法を守らせることはできない。
・武力のある者が、武力を持たない者に服従することはありえない。
・結果さえよければ、手段は常に正当化されるのである。
・事が祖国の存亡を賭けている場合、その手段が、正しいとか正しくないとか、寛容であるとか残酷であるとか、賞讃されるものか恥ずべきものかなどについて、いっさい考慮する必要はない。なににもまして優先さるべき目的は、祖国の安全と自由の維持だからである。 
・次の二つのことは、絶対に軽視してはならない。
 第一は、忍耐と寛容をもってすれば、人間の敵意といえども溶解できるなどと、思ってはならない。
 第二は、報酬や援助を与えれば、敵対関係すらも好転させうると、思ってはいけない。  
・中ぐらいの勝利で満足する者は、常に勝利者であり続けるであろう。  
 反対に、圧勝することしか考えない者は、しばしば、陥し穴にはまってしまうことになる。 
・やった後で後悔するほうが、やらないことで後悔するよりもずっとましだ。
・私は慎重であるよりは果敢である方がよいと断言する。なぜなら運命の神は女神なのだから。運命は女性に似て若者の友である。若者は思慮に富んでいないがために後々のことなど考えず、より大胆に、より激しく行動し運命の神に対して主導権を得ようとするからである。

#タメになる

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

君主論を初めとしたマキァヴェリの著作から,君主篇,国家篇,人間篇の3つに分けて名言・名文章をまとめたもの。
特に君主篇・人間篇は刺激的。
ただ,その性質上,体系だった本ではない。

「君主にとっては,愛されるのと怖れられるのとどちらが望ましいであろうか。……ほとんどの場合一方を選ぶしかないとなるのだが,わたしは,愛されるよりも怖れられるほうが,君主にとって安全な選択であると言いたい。なぜなら,人間には,怖れている者よりも愛している者のほうを,容赦なく傷つけるという性向があるからだ。」(87頁「君主論」)

「中傷がはばをきかすのは,告発という形式があまり用いられない場合か,それともその共同体内に,告発を受け入れる体制づくりがなされていない場合か,である。」(153頁,「政略論」)
日本は後者か?特にネット中傷。しかし最近は裁判も増えてきた。

「もしも近隣の諸国が,友好関係を保ちたいがために貢納してくるようならば,その国は強国といえよう。反対に,弱体なはずの近隣諸国であるのに,それらの国々に対し金銭をもって援助する関係である場合,その国家の国力は弱いと思うしかない。……つまり,友好関係を売りつけるのではなく,友好関係を買おうとしたにちがいないのだ。」(177頁「政略論」)
日本から見た日米関係は,やはり後者か。

「なにかを為したいと思う者は,まずなによりも先に,準備に専念することが必要だ。」(206頁「戦略論」)
あちこちで同じことが言われている。引用参照。

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2014年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マキアヴェッリの君主論から、塩野さんがその思想・視点を現している部分を抜粋した蔵言集。個人の価値体系から発言するのではなく、実直なまでの第3者的視点で現実のみを見続けたマキアヴェッリの思想がよく分かります。今の生活・社会にも流用できる言葉・考え方に感銘を受けました。

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2014年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

確かに、マキアヴェッリは、批判されそうなことも言っているとは思う。 けれど、組織を保つためには、厳しいこともしないといけない。組織が死んだらみんな死ぬしね。

でも、この人の言葉って、どの範囲の人達がやることなのかな。 最近、その範囲が狭まっているような。

多分、インターネットで始まったグローバル化が関係している気がするけど、良く分からない^^

まあ、今度考えよう。

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2013年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

塩野さんが本書を書いた目的は「マキアヴェッリの思想を、彼が対象にした人々に近い条件で、現代の日本人に提供したかった」とのこと。
この目的は十分果たせている。16世紀に生きたマキアヴェッリの思想を注釈なしで、生々しく感じ取ることができた。
「自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合、いかなる国家といえども、独立と平和を期待することはできない(p82)」
「結果さえよければ、手段は常に正当化される(p103)」
「頼れるのは自力のみということに目覚め、運命が自由勝手にふるまうのを牽制する必要がある(p203)」
きれい事ですまない君主(場合によってはリーダー)の行動様式を説くマキアヴェッリの言葉は、現代の政治家はもとより、組織人にも響く。

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2013年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

古代ローマの歴史小説、イタリア関連の著作で有名な塩野七生氏。彼女の1988年発行の作品。

政治哲学の文脈で度々名前があがるマキアヴェッリの各種著作からのパッセージを抜粋し、君主篇、国家篇、人間篇の三章でまとめた語録。

・・・
塩野氏の歴史小説は幾つか読んでいましたが、本作のような過去の著者からの抜粋(語録)は意外と簡単ではないと感じました。

やはり、時代や背景も異なる国での話。1600年頃のフィレンツェの話を、古代ローマの話を引き合いに出されて説明されるわけです。

ただ、そこは作品の構成が手助けになった気がします。

君主篇は、うちのトップ(部長クラス)の人たちを想像しつつ読み、ああかの部長は器がちいさいなあと嘆きつつ。

国家篇はこれまた会社での雇用関係(リーダーたる会社の重鎮たちと、民衆たる私はじめ一般社員)を念頭に。

そして最後の人間篇は、当然ながら自分の性格を鑑みつつ読んだ次第です。

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マキアヴェッリというと、賢哲による独裁がよいみたいな主張の印象(印象です、すみません)がありますが、厳しい競争社会では温情だけでは生き残れない、みたいな方向性であると理解しています。

その中にあって、幾つか印象的なパッセージを挙げます。

仮に自由な投票制度に支えられた共和制でも、1.権力の適用範囲を限定し、コントロールできる仕組みを整える、2.権力は一定期間に限って与えられる、という2点を強調している政略論からの抜粋(国家篇22、P177-179)は印象深かったです。

フジテレビの某会長を頭に思い浮かべつつ読みました。

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もう一つは少し引用します(作品そのものが“引用”ですから、引用の引用!?済みません)

「いくつかの民族は、なぜ自分たちの土地を捨てて他国に侵入し、そこで国を作るかの理由だが、これは戦争の一種とみるべきであろう。
その人々は、戦乱によるか飢餓のためかして、やむをえず家族ともども侵入してくるわけだが、この種の侵入は、領土欲に駆られてではない。とはいえ、先住民族を追い出したり殺したりすることにおいては、変わりはないのである。だからこそ、通常の戦争よりも残酷な様相を呈する場合が多いのだ。
この、やむをえずにしても新天地を求めて侵入してきた民族がもしも非常に多数の人間からなっている場合は、必ずといってよいほど先住民族を追い出し、殺し、財産を奪った果てに新国家を建設するようになる。
そして建設の後は、モーゼがしたように、またローマ帝国のあちこちに侵入した各民族が行ったように、地名を変える現象が起こる。」(国家篇44, P.200)

ちょうど、旧約聖書読破中につき、やっぱりユダヤのやり方は勝手に見えるという読み方でよいのだよねえ?と確認できたことで個人的に印象が深かったものです。

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ということで、塩野氏によるマキャヴェッリ語録でした。

国家・政治を語るというのは、良識ある国民はするべきやもしれません。

が、窓際で、食い扶持を稼ぎつつ生存競争を勝ち抜くことに血眼な私には、本作、ちょっと大上段に構えたかの様相もありました。

会社の管理職、経営者には響くかもしれませんね。

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2025年02月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

●君主篇
 ・君主は、人間的なものと野獣的なものを使い分ける能力を持っていなければならない
 ・悪しき行為は一気にやってしまう。恩恵は長く味わわせるために小出しに施す
 ・愛される君主像は捨てざるを得ないが、恨みや憎悪だけは避けねばならない
 ・君主にとっての最大の悪徳は、憎しみを買うことと軽蔑されること
 ・人の恨みは悪行からだけでなく、善行からも生まれる
 ・あなたに意見を率直に述べてもよいことにすると、あなたへの敬意を減じてしまう
 ・常に部下たちに君主は必要だと思わせること。そうすれば忠誠でありつづける
 ・偉大なことを成したいと思うならば、権謀術数を習得する必要がある
 ・必要に迫られてやむを得ずやったことでも、自ら進んで選択した結果のように思わせる
 ・話す能力に長じた者が、良い指揮官になれる

●国家篇
 ・敬愛と恐怖、いずれも人を動かすが、恐怖のほうに服従しやすい
 ・過度の敬愛は軽蔑を生み、過度の恐怖は憎悪を生む

●人間篇
 ・謙譲の美徳は相手の尊大さに勝てると信ずる者は、誤りを犯す
 ・人間は、ひとつの野心が達成されても、すぐ次の野心の達成を願う
 ・人間は、必要に迫られなければ善を行わない
 ・賢明で思慮に富む人物は、他者を脅迫したり侮辱したりしない
 ・人物を評価する最も簡単で確実な方法は、どのような人びととつきあっているかを見ること
 ・人間は、権力を持てば持つほどそれを下手にしか使えない
 ・中ぐらいの勝利で満足する者は、常に勝者であり続ける
 ・やったあとで後悔するほうが、やらないことで後悔するよりもずっとましだ(『デカメロン』)
 ・良い面を残そうとすれば、どうしても悪い面も同時に残さざるを得ない

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2012年03月31日

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