【感想・ネタバレ】日本版インダストリー4.0の教科書 IoT時代のモノづくり戦略のレビュー

あらすじ

本質は工場のロボット化じゃない!―― 300以上の国内外の製造業改革プロジェクトを手掛けドイツの現場を調査したプロが、日本製造業に合わせたインダストリー4.0の導入術を解き明かします。

ドイツと米国が火をつけた第4次産業革命。本書では、インダストリー4.0の概念論ではなく、ドイツの現地調査を通して、日本製造業に合わせた具体的な導入論を展開。IoTとインダストリー4.0の本質を見極め、「儲かる製造業」になるための具体的な戦略と導入のポイントをわかりやすく解説します。大企業から地方の町工場まで、すべてのモノづくり企業に生き残りの指針を示す1冊です。

【儲かる製造業になるための教科書です】
■インダストリー4.0の本質をわかりやすく解説。
■日本製造業の事情に合わせた導入術を解説。
■「儲かる日本モノづくり」実現の戦略を解説。
■ドイツの戦略と米国の戦略の特徴を解説。
■中小製造業が生き残るための実践方法を解説。
■日本モノづくりの産業別の留意点を解説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

<読もうと思ったきっかけ>クライアントでIoTに力を入れている会社があって、勉強してみようと思ったため。

<感想>製造業のシステムについては専門的であまり深く理解できなかったが、IoTというものがパラダイムの転換といえるくらいすごいものだと読み進めていくうちに分かってきた。
 Googleが開発している自動運転車や、各自動車メーカーが取り組んでいる電気自動車(EV)というのは、これまでの自動車の延長線上にあるものではなくて、まったく別のスペックの製品だということが分かった。これまで日本企業が強みとしてきた複雑な技術という参入障壁を越えた、新たな自動車なのだ。すでに日本のテレビや携帯がガラパゴス化しすぎて世界で大きなシェアを占めることができないという現象があるが、日本全体として何か戦略的に取り組まないと、同じような現象が他の製品にも広がるのではないかということが容易に予想される。
IoTという今までとは異なるパラダイムに日本企業はどのように取り組んでいくかの提言もなされていて参考になる。

<以下一部抜粋>
・これらの例は、ボリュームゾーンの見極めと、現地消費者のニーズを把握することが、いかに大切かを示している。

・モノづくりにおいてはスペック情報を的確に管理することが大事だと、繰り返して述べてきたが、スペック情報とは、各部門が管理する「設計情報」「顧客要求仕様情報」「要素技術情報」「部品/ユニット・サプライヤー情報」「製造情報」の五つの情報の固まりであることを理解する必要がある。

・では、電気自動車の時代になるとどうなるか。車台に駆動系として単純な構造で軽量のモーターと電池を載せ、車輪とつなぎ、ボディをかぶせるだけで済む。そのボディも鋼鉄ではなく、軽量で成形も自由自在の炭素繊維に置き換わるだろう。他産業の参入を拒んできたエンジンがなくなることで、家電業界でも自動車を造れてしまうことになる。

・自分たちが最高と信じるモノをつくりさえすれば売れると誤解していたのだ。

・世界の常識は、「安くていいものしか売れない」という当たり前の原則だ。

・つまり日本は、仕向地に合わせて商品を投入するという当たり前のことに気づかないで過ごしてきた。

・ナイキやアップルのように「工場を自社で持たない製造業」も生まれつつある。

・まとめていうと、在庫は仕様違いから生じることになる。工程を通じてのスペック・マネジメントは、在庫マネジメントと同義語だ。スペックのマネジメントが重要な理由はここにある。

・モノづくりは、どれだけ投入して、何個の製品がどれだけの速さで出てくるのかというスループットが最も重要なのだ。

・こういう発想が縦割り組織の日本ではなかなか生まれにくい。経営者であれば、一段と高く広い視野で全体を見渡して判断すべきなのだ。

・政府としてはまず、インターネットは基本的で重要な社会インフラだという発想を強く持つべきだ。

・こうした動きから何が読み取れるかというと、モノが先にあって後からネットワークでつなぐという発想から、ネットワークをまずデザインして、そのネットワークの下に実物があるというように流れが変わってきているのだ。製品のスペックは、ネットワークによってコントロールされてるのだ。

・PLMは、顧客ニーズから始まる一連のデマンドチェーン(需要情報の流れ)を共通のスペックデータで管理していく手法だ。

・BOM(Bills of Material=部品表)は、製造業のモノづくりに欠かせない品目情報と製品構成から成る製品のマスターデータ(基礎情報)だ。

・MESとは、基幹業務システムの生産計画を受けて、ロボットや現場の工程に命令を与えるデータシステムのことだ。

・SCADAの方は、その命令がどういう結果を生んだかをアナライズ(解析)しデータ化を打ち返すシステムのことをいう。

・それは「何のために新しい仕組みを導入するか」を見失っているからだ。企業の目的は市場にモノ・サービスを提供して利益を得ることにある。

・顧客は目に見える製品そのものではなく、スペック(製品の機能や仕様)を買っている。だからこそ、売れるスペックの製品をタイミングよく市場に提供し、設けることがモノづくり企業の経営の本質だ。

・アップルのiPhoneと日本のX社のスマートフォンを比べてみると面白いことが分かる。アップルの場合、2007年の市場投入以来の8年間でiPhoneの機種は画面サイズで4種類、機種も10種類にとどまっている。ところがX社は、わずか4年間に画面サイズで19種類、55機種も投入している。

・大きな儲けは固定費からしか生まれないといっても過言ではないだろう。この構図を理解すれば、製造業は先行投資した費用(固定費)を、時間をかけて回収する「固定費回収ビジネスモデル」であることが理解されるだろう。

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2016年10月23日

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