【感想・ネタバレ】増補 民族という虚構のレビュー

あらすじ

“民族”は、虚構に支えられた現象である。時に対立や闘争を引き起こす力を持ちながらも、その虚構性は巧みに隠蔽されている。虚構の意味を否定的に捉えてはならない。社会は虚構があってはじめて機能する。著者は“民族”の構成と再構成のメカニズムを血縁・文化連続性・記憶の精緻な分析を通して解明し、我々の常識を根本から転換させる。そしてそれらの知見を基に、開かれた共同体概念の構築へと向かう。文庫化にあたり、新たに補考「虚構論」を加えた。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

個人ー集合を連続させるものとして、人間という生きものの思考や認識の仕方そのものなどから、「虚構」といういわばシステムを洗い出し、ひとつずつ紐解いてゆく論著に感じた。人間存在の目は生まれつき脳によって「事実と異なってもその前後と連続する記憶」と事実をすり替えやすい構造を待ち、さらには育った集合によって、どうしてもバイアスがかかってゆく。しかしその錯視こそ、集合体をそれたらしめるものであるとのこと。個人的には、「前世代の戦争責任を後の世代が負う責任はあるのか」の章がとても興味深かった。共同体に属することによって利を得ている以上、その共同体の連続に(良しにしろ悪しきにしろ)寄与してきた過去の責任は構成員に受け継がれるだろう、というのが私の読んだ所感で、これはわかりやすかった。
ただ、その「虚構」によって構成される集合体そのものが、お互いに補完しあってまとまる様子から、霊的なものを「役割」に還元してある意味排除してしまうのは、ごく個人的な感想ではあるが、わかりやすくてももやもやが残る。

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2022年12月31日

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