【感想・ネタバレ】BCG流 戦略営業のレビュー

あらすじ

2016年より最強コンサルティングファーム、BCGの日本代表に就任した気鋭のコンサルタントがロジカルに、時に泥臭く解説。紹介する手法は、すべて著者が実際のコンサル現場で磨き上げ、結果を出してきたもの。どの企業でも応用可能な「型」として普遍化し、具体的なノウハウとして紹介します。

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ネタバレ

『BCG流 戦略営業』統合・詳細レポート

― 営業を「属人的な成果活動」から「顧客価値を継続的に生み出す組織能力」へ変える

著者:杉田浩章
書籍:『BCG流 戦略営業』日本経済新聞出版



0. エグゼクティブサマリー

本書、とりわけ今回読み込んだ「営業TQM」の議論を一言で表現すると、

営業成果を直接追いかけるのではなく、顧客価値を起点に成果が生まれる因果構造を特定し、その原因側にある行動を計測・改善・習慣化することで、営業を再現可能な組織能力へ変える方法論

である。

一般的な営業マネジメントでは、

* 売上
* 粗利
* 受注件数
* 達成率

といった「結果」が管理の中心になりやすい。

しかし、結果は発生した時点ですでに過去であり、結果だけを見ても、

* なぜ成果が出たのか
* なぜ成果が出なかったのか
* 明日から何を変えるべきなのか

は分からない。

そのため、本書では営業マネジメントの対象を、

結果 → 顧客価値 → プロセス → 行動

へ遡らせていく。

さらに、正しい行動を発見するだけでも足りない。

それを、

行動KPI化 → 週次レビュー → ダッシュボード → 現場コーチング → 修正 → 再実行

という短周期の管理サイクルへ組み込み、最終的に「言われなくても自然にできる」レベルまで習慣化する。

営業TQMは、したがって単なるKPI設計論ではない。

その全体像は、

顧客価値を定義し、成果との因果をデータで解明し、その原因となる行動を標準化し、短周期で観測・診断・改善する営業オペレーティングシステム

として理解するのが最も適切である。



1. 本書が問題視する従来型営業マネジメント

営業組織には、典型的に次のような問題がある。

1. 売上目標偏重

「前年比110%」
「今期10億円」
「シェア20%」

といった、自社都合の目標が営業組織に降りてくる。

もちろん売上や利益は重要である。

しかし、それだけを営業担当者の直接目標にすると、

「顧客に価値を提供する」

よりも、

「今期の数字を達成する」

ことが優先される危険がある。



2. 結果しか見ない

売上未達になると、

「なぜ売れなかったのか」
「もっと頑張れ」
「訪問件数を増やせ」

といった指導になる。

だが結果だけを見ても、改善策にはならない。



3. トップ営業への属人化

営業成果が高い人について、

* センスがある
* 人脈がある
* 話がうまい
* 勘がいい

と説明して終わる。

すると、その営業能力は本人に閉じた暗黙知のままであり、組織へ移転できない。



4. KPIが「測りやすさ」で決められる

架電数、訪問数、提案件数など、

測れるからKPIにする

ということが起こる。

だが、

測れる行動 ≠ 成果を生む行動

である。



5. 改革がイベントで終わる

研修を実施する。
新KPIを設定する。
営業会議を変更する。

しかし、数カ月後には元の行動へ戻る。

この根本原因は、習慣化の仕組みが設計されていないことにある。



2. 営業TQMとは何か

TQMは本来、製造業で発展したTotal Quality Managementである。

製造では、

* 品質を定義する
* 工程を分解する
* 異常を検知する
* 原因を特定する
* 工程を改善する
* 再発を防止する

という管理が行われる。

本書の革新性は、この思想を営業へ持ち込んだことにある。

営業も、

人のセンスで売る仕事

ではなく、

成果が生まれる工程を科学し、品質を継続改善できる仕事

として捉える。



3. 営業TQMの全体構造

営業TQMは、3フェーズ・10ポイントで構成される。

第1フェーズ|営業価値メジャーの設定

1. 内向きの力学から外向きの価値へ
2. 事実の力をテコに切り込む
3. 営業の存在価値をメジャーに落とし込む

第2フェーズ|行動KPIの設定

4. 「結果・数値管理」から「行動・プロセス管理」へ
5. 正しい行動のモノサシ=行動KPIをセットする
6. 行動KPIをプラクティカルなものにする①
7. 行動KPIをプラクティカルなものにする②

第3フェーズ|習慣化マネジメントの導入

8. 週次で行動管理サイクルを回す
9. ダッシュボードで「見える化」する
10. 現場マネジャーを再生する

この構造は、

What Value

What Behavior

How to Sustain

という三層構造になっている。



4. 第1フェーズ|営業価値メジャーを設定する



4-1. ポイント1|内向きの力学から外向きの価値へ

「売上」ではなく、その手前の顧客価値を見る

営業組織が最初に問うべきなのは、

われわれの営業組織は、顧客に何の価値を生み出すために存在しているのか

である。

これが営業TQMの出発点となる。

売上や利益は、企業にとって必要だ。

しかし営業担当者の日々の思考を「売上」に固定すると、

* 月末の押し込み
* 不要な商品販売
* 過剰な値引き
* 顧客より社内事情を優先

という行動を誘発する可能性がある。

したがって、

企業都合の成果目標

から、

顧客・市場に対して生み出す価値

へ視点を移す必要がある。



4-2. 健康管理の比喩

本書では健康管理が繰り返し例に使われる。

「体重を減らす」

だけを目標にすると、筋肉まで落ちても目標達成になる。

しかし本来求めているのは健康である。

そこで、

* 体脂肪率
* 血圧
* 運動
* 食事

など、より本質に近い指標を見る。

営業も同様である。

売上だけでは、営業活動の質は分からない。



5. KPIは人間の行動を変える

営業価値メジャーは単なる測定指標ではない。

「何を測るか」は「人に何を考えさせるか」を決める。

例えば、

製品別売上を評価する

なら、営業は、

「どうすればこの製品を売れるか」

を考える。

一方、

顧客当たり売上を評価する

なら、

「この顧客には本当に何が必要か」

を考えるようになる。

つまり、

KPI → 問い → 思考 → 行動 → 文化

という連鎖がある。



6. IBMの事例|製品起点から顧客起点へ

ルイス・ガースナーによるIBM変革は象徴的な事例である。

従来は、

「メインフレームを売る」

ことが営業の中心だった。

それを、

「企業にソリューションを提供する」

という考え方へ転換した。

評価指標も、

製品・サービス別売上
から
顧客当たり売上

へ変える。

これは単なるKPI変更ではない。

営業組織の問いを、

「何を売るか」

から、

「顧客に何を実現するか」

へ変える経営改革だった。



7. 内向き目標と外向き目標

営業TQMでは、次の因果関係を重視する。

顧客への価値提供

顧客満足

継続利用・購買

売上増加

利益増加

つまり、

売上を直接増やそうとするのではなく、売上が増える条件を作る。

これが外向きの目標である。



8. ポイント2|事実の力をテコに切り込む

営業価値メジャーは、経営者や営業責任者の思いつきで決めてはいけない。

必要なのは、

仮説

データ分析

検証

修正

再検証

である。

営業TQMは、いわば、

Hypothesis Driven × Data Driven

の営業改革である。



9. データ分析の役割は「レポーティング」ではない

営業データを分析する目的は、

「現状をきれいに説明する」

ことではない。

目的は、

従来の常識を壊し、意思決定を変えること

にある。

組織には、

* 昔からの成功体験
* 上司の信念
* 業界常識
* 営業の経験則

がある。

その中には正しいものもあるが、環境変化によって誤っているものもある。

データは、その前提を客観的に問い直す。



10. Z社の事例|大口顧客ほど儲かるとは限らない

日用雑貨品メーカーZ社では、市場価格下落によって収益性が悪化していた。

そこで取引先別に、

* 売上
* 販促費
* 人件費
* 流通費
* 隠れた対応コスト

などを再計算した。

その結果、

売上規模と最終収益性には明確な相関がない

ことが判明した。

さらに同程度の売上規模でも、

利益率に最大約20ポイントもの差

が存在していた。



11. 「もっと売る」以外の利益改善

この発見から重要な示唆が得られる。

利益が低い場合、必ずしも、

売上を増やす

必要はない。

例えば、

* 過剰販促を減らす
* 営業工数を見直す
* 物流条件を変える
* サービスレベルを適正化する
* 低収益顧客の商談条件を変える

ことで収益を改善できる。

つまり、

顧客ごとの経済性を理解することが営業戦略になる。



12. ポイント3|営業の存在価値をメジャーに落とし込む

営業価値を理解したら、それを、

組織が追跡可能な数値

へ変換する。

ここでのKPIは、

「営業組織が存在する意味」を数値化したもの

であるべきである。



13. 再春館製薬所|顧客との関係性を測る

再春館製薬所では、

「短期売上」

だけではなく、

顧客と出会ってから1年間の関係性

に着目する。

* 購入回数
* 継続
* 残存率

などを重視する。

こうすると営業担当者の問いは、

「今日どう売るか」

ではなく、

「どうすれば長期的に顧客との関係を築けるか」

へ変わる。



14. 価値観はオペレーションまで落とさなければ意味がない

「顧客第一」
「お客様志向」

と掲げる企業は多い。

しかし理念だけでは行動は変わらない。

営業TQMでは、

価値観

営業価値メジャー

行動モデル

ツール

研修

パイロット

全社導入

まで落とす。

つまり、

理念をOperating Modelへ翻訳する

ことが重要なのである。



15. 第2フェーズ|行動KPIを設定する

ここから、営業価値を生み出す「原因側」へ入る。



16. ポイント4|結果管理から行動・プロセス管理へ

従来の営業管理では、

* 売上
* 利益
* 受注
* 成約率

を見る。

しかしこれらはすべて、

結果指標=Lagging Indicator

である。

結果が出てからでは改善が遅い。

そこで、

結果を生む前段階の行動

を管理する。



17. 健康管理で考える

体重や血圧は結果である。

改善したいなら、

* 1日の歩数
* 摂取カロリー
* 塩分
* 飲酒
* 運動

を見る。

営業も同じ。

行動

顧客価値

商談成果

売上・利益

という構造で管理する。



18. 行動KPIは「操作可能な先行指標」

売上は直接操作できない。

しかし、

* 誰に会うか
* 何を聞くか
* 何を伝えるか
* どれだけフォローするか

は操作できる。

したがって、

営業管理は、コントロール不能な結果ではなく、コントロール可能な行動を対象にすべき

という考え方になる。



19. 営業の暗黙知を形式知化する

トップ営業について、

「センスがある」

で終わらせてはいけない。

例えば、

* 商談前に何を調べるか
* 誰に会うか
* どの順番で質問するか
* どのタイミングで提案するか
* どうフォローするか

まで分解する。

すると、

トップ営業の暗黙知

観察可能な行動

行動KPI

組織標準

へ変換できる。



20. TQMの狙いは「スター育成」ではなく「底上げ」

営業TQMの目的は、

トップ2割をさらに伸ばすだけではない。

むしろ、

中位6割・下位2割を引き上げる

ことで、営業組織全体の平均値を上げる。

つまり、

個人エース依存から組織能力依存へ移る。



21. ポイント5|正しい行動KPIを見つける

重要なのは、

測れる行動をKPIにすること

ではない。

成果との因果関係が強い行動をKPIにすること

である。



22. 架電数・訪問数を安易にKPIにしない

例えば、

* 電話100件
* 訪問20件
* 提案10件

をKPIにしても、成果につながらなければ意味がない。

重要なのは、

何をすると顧客価値が増え、最終成果が上がるのか

である。



23. 行動KPIも仮説である

行動KPIは一度決めて終わりではない。

仮説

試す

成果を見る

因果を検証

修正

を繰り返す。

行動KPI自体も、改善対象である。



24. リクルートエージェントの示唆

行動KPI設定までには、

* 多数のインタビュー
* 行動観察
* 大規模データ分析

などが行われる。

定性情報だけでも、定量情報だけでも足りない。

Qualitative × Quantitative

で成果行動を特定する。



25. ポイント6|行動KPIをプラクティカルにする①

昨日を振り返り、明日を考えられる指標にする

良い行動KPIには、

短い時間軸で結果が把握できる

という条件が必要である。

数カ月後にしか結果が分からない指標では、日常改善には使えない。



26. KPIは短周期のフィードバック装置

理想は、

昨日の行動

今日確認

明日修正

できること。

営業では日次が難しくても、

週次

であれば十分実用的な場合が多い。



27. 「量」だけでなく「質」を見る

訪問回数を増やすだけでは不十分。

重要なのは、

* 誰に会ったか
* 何を話したか
* どんな価値を提供したか

である。

つまり、

Activity
ではなく
Effective Activity

を見る。



28. MRの事例

医薬品営業で重要なのは、

「医師に何回会ったか」

だけではない。

* 適切な医師か
* 必要な情報を伝えたか
* 製品理解を促したか

まで見なければならない。



29. 代理指標=Proxy KPIを使う

最終成果との因果が直接測れない場合は、

代理指標

を用いることもできる。

例えば、

販促資料送付量

数週間後の成約

に安定した相関があるなら、資料送付量を日常行動KPIにする。

重要なのは、

完全性より、操作可能性と検証可能性

である。



30. ポイント7|行動KPIをプラクティカルにする②

複雑さを排し、シンプルにする

営業管理を精緻化しすぎると、

KPIが増殖する。

すると現場は、

* 覚えられない
* 優先順位が分からない
* 何も徹底できない

状態になる。

したがって、

KPIはできる限り少数化・単純化する。



31. 再春館製薬所|現場で使える言葉へ落とす

行動規範を、

誰でも理解できる簡潔な言葉へ翻訳する。

重要なのは、

「精緻なマニュアル」

ではなく、

現場で瞬時に判断できる原則

である。



32. ユニ・チャーム ペットケア|「1P」

重点課題を一つのPriorityへ集約する。

例えば、

主要80社を月4回訪問する

など、誰でも理解できる具体的な目標にする。



33. 「何をやらないか」を決める

優先課題を増やすほど成果が出るわけではない。

むしろ重要なのは、

一つを定着させるまで次を増やさない

こと。

フォーカスとは追加ではなく、選択である。



34. 第3フェーズ|習慣化マネジメント

ここからが、営業改革を一過性で終わらせないためのフェーズである。



35. ポイント8|週次で行動管理サイクルを回す

正しい行動を定義しても、

人は時間が経つと元へ戻る。

これは健康管理と同じである。

* ダイエット
* 禁煙
* 運動

も、「正しい方法を知ること」と「続けること」は別問題だ。

営業改革も同じ。



36. 習慣化は意思ではなく仕組みで行う

営業TQMでは、

実行

週次計測

レビュー

原因確認

次週修正

を繰り返す。

月次では遅い。

日次では負荷が高すぎることが多い。

したがって週次が重要な運用周期となる。



37. 週次レビューは報告会ではない

本来の目的は、

Learning & Decision

である。

前週の数字を読み上げるだけなら価値はない。

確認すべきなのは、

* 何をしたか
* 何が起きたか
* なぜ起きたか
* 次週何を変えるか

である。



38. ユニ・チャーム ペットケアのSAPS

毎週、前週をレビューし、

* 今週の戦略
* 行動計画

を話す。

他者からも意見・助言を受ける。

このサイクルが、

業績管理
だけでなく、
人材育成

としても機能する。



39. 階層別にレビューを入れ子化する

大組織では全員で毎週レビューできない。

そこで、

営業担当 ↔ チームリーダー

チームリーダー ↔ 課長

課長 ↔ 部長

経営

のようにレビューサイクルを階層化する。



40. ポイント9|ダッシュボードで「見える化」する

営業TQMでは、

問題は見えなければ改善できない。

そこで行動KPIをダッシュボードにする。



41. 営業版「アンドン」

製造現場では異常が発生すると、

* ランプが点く
* 問題を知らせる
* 即座に対応する

というアンドンがある。

営業も同じ。

行動KPI異常

可視化

即対応

という仕組みにする。



42. Q社のダッシュボード

支店・課・個人ごとに、

* 顧客訪問数
* セールストーク認知率
* セールストーク当たり売上高

などを表示する。

さらに、

青:目標達成
黄:90%以上
赤:90%未満

と色分けする。

すると、

どこに手を打つべきか

が瞬時に分かる。



43. ダッシュボードは管理資料ではなく行動誘発装置

理想のダッシュボードは、

View

Notice

Diagnose

Act

につながる。

表示して終わりではない。



44. 横比較は組織学習を促す

チーム内で、

「なぜAさんはできているのか」

を考える。

すると、

個人ノウハウ

共有知

組織能力

になる。

見える化には、ナレッジ共有の効果もある。



45. ポイント10|現場マネジャーを再生する

営業TQMの最後の鍵は、

現場マネジャー

である。

どれだけ優れたKPIやITを導入しても、現場管理職の行動が変わらなければ定着しない。



46. マネジャーの5原則

① 結果で詰めずに行動で詰める

売上を詰めるだけでは、

* 言い訳
* 精神論
* 責任回避

が起きる。

本人がコントロールできる行動を確認する。



② 一つずつ、一人ずつ積み上げる

複数課題を一度に解こうとしない。

一課題

改善

定着

次へ

と進む。



③ 同行してコーチングする

数字では原因が分からない場合、

現地現物

で観察する。

顧客との対話、店頭、提案、業務工程を見る。



④ しつこく質問を繰り返す

表面的な理由で止めない。

「なぜ」を繰り返す。



⑤ 全員に同じ行動を続けさせる

理解しただけでは足りない。

理解

実行可能

反復

習慣

まで持っていく。



47. 「なぜ5回」で結果から真因へ遡る

例えば、

なぜ提案が通らなかった?

信頼関係が弱かった

なぜ信頼関係が弱かった?

バイヤーへの接触頻度が低かった

なぜ接触が少なかった?

会いに行くことをためらっていた

なぜためらった?

上位意思決定者へのアクセスが難しいと思っていた

本当に手段はなかった?

他部門から紹介を受ける方法があった

ここまで掘ると、

「営業力が弱い」

という抽象論から、

意思決定者への紹介ルートを作る

という具体的行動へ落とせる。



48. マネジャーは答えを教える人ではない

優れたマネジャーは、

Answer Provider

ではなく、

Thinking Facilitator

である。

本人に考えさせ、

* 原因を言語化
* 次の行動を決定
* 実行
* 振り返り

させる。



49. 「分かった」「できる」「習慣」は違う

営業改革では、

Level 1

分かった

Level 2

言われればできる

Level 3

自分からできる

Level 4

無意識に繰り返せる

まで進める必要がある。

本書が狙っているのはLevel 4である。



50. 営業TQMを閉ループシステムとして捉える

ここまでの議論を統合すると、営業TQMは次の閉ループになる。

顧客価値

営業価値メジャー

成果KPI

行動KPI

実行

短周期計測

ダッシュボード

異常検知

現地現物

原因分析

コーチング

行動修正

再実行

習慣化

組織能力化

これが本書の中核思想である。



51. 営業TQMにおける3種類の指標

実務上は、次の三層で考えると理解しやすい。

層代表指標役割
最終成果売上、利益経済成果
営業価値メジャー顧客継続、顧客当たり売上等顧客価値
行動KPI訪問、情報提供、意思決定者接点等先行指標

最も重要なのは、

三つを因果でつなぐこと

である。



52. 本書から抽出できる「KPI設計7原則」

① Outside-in

顧客価値から始める。

② Causal

成果との因果関係を見る。

③ Actionable

本人が変えられる行動にする。

④ Leading

結果より前に分かる指標にする。

⑤ Short-cycle

短期間で確認できるようにする。

⑥ Simple

少数・明確・共通化する。

⑦ Iterative

KPI自体も修正する。



53. 本書の営業改革は「管理」ではなく「学習」

一見すると営業TQMは厳格な管理手法に見える。

しかし本質は、

Control
ではなく、
Learning

である。

KPIは人を評価するためだけのものではない。

何が機能し、何が機能しなかったかを学習するセンサー

である。



54. 経営OSとして見た営業TQM

営業TQMは、以下の6つの機能を持つ。

1. Strategy Layer

何の顧客価値を狙うか。

2. Measurement Layer

何を成果として測るか。

3. Execution Layer

何を行動するか。

4. Observation Layer

どう計測・可視化するか。

5. Diagnosis Layer

なぜ未達なのか。

6. Learning Layer

次に何を変えるか。

つまり、

Strategy → Execution → Observation → Diagnosis → Learning

をつなぐ経営システムになっている。



55. 営業TQMの実装手順

実際に企業へ導入するなら、次の順序が合理的である。

STEP 1|営業の存在意義を定義

「顧客に何を実現する営業なのか」

STEP 2|営業価値メジャーを設定

顧客価値を数値化。

STEP 3|データ分析

成果との因果構造を探る。

STEP 4|成果行動を仮説化

何をすると成果が出るか。

STEP 5|行動観察

トップ・標準・低成果者を比較。

STEP 6|行動KPI化

少数の先行指標へ。

STEP 7|パイロット

一部組織で実験。

STEP 8|因果検証

本当に成果につながったか確認。

STEP 9|KPI修正

不要指標を削除。

STEP 10|週次レビュー設計

定例運用へ組み込む。

STEP 11|ダッシュボード

一目で異常が分かる状態にする。

STEP 12|マネジャー育成

現地現物・質問・コーチングを訓練。

STEP 13|組織標準化

成功行動を標準化。

STEP 14|継続的改善

環境変化に合わせて更新する。



56. 本書の強み

本書の特に優れた点は、営業改革を、

戦略だけ
でも、
KPIだけ
でも、
営業スキル研修だけ

でも終わらせていないことである。

営業改革を、

価値

行動

データ

マネジメント

習慣

のシステムとして捉えている。



57. 実務上の注意点

一方、本書の思想を導入する際には注意も必要である。

KPIのゲーム化

指標だけ追うと、数字を良くすること自体が目的になる。

したがって常に、

顧客価値との接続

を確認する必要がある。



相関と因果を混同しない

ある行動と成果が同時に起きていても、必ずしも因果とは限らない。

したがって、

* パイロット
* 比較
* 時系列
* 現場観察

を組み合わせる必要がある。



標準化しすぎない

営業には顧客ごとの文脈が存在する。

「共通する型」は標準化しつつ、

顧客固有部分まで過度に固定しない

ことが重要である。



58. 新規事業・コンサルティングへの転用可能性

本書の方法論は営業以外にも応用できる。

例えば新規事業なら、

最終成果
PoC承認、事業化、売上

だけを見るのではなく、

その前段に、

* 顧客ヒアリング
* 仮説更新
* 意思決定者合意
* 検証件数
* 不確実性解消

などの行動指標を置くことができる。

つまり、

最終Gateではなく、Gateを突破する原因側の行動を管理する。

これは事業開発でも極めて有効である。



59. 本書から導かれる最も重要な経営原則

本書の議論をさらに抽象化すると、

成果そのものは管理できない。管理できるのは、成果を生み出す条件である。

という原則に行き着く。

売上を直接操作することはできない。

しかし、

* 顧客価値
* 接触
* 商談
* 情報提供
* 意思決定者へのアクセス
* フォロー
* マネジメント

は変えられる。



60. 結論

『BCG流 戦略営業』が提示しているのは、単なる営業テクニックではない。

それは、

営業を「優秀な人が頑張る仕事」から、「顧客価値が生まれる因果構造を組織的に再現・改善する仕組み」へ変える経営方法論

である。

その中心には、

顧客価値

価値メジャー

行動KPI

実行

見える化

週次レビュー

原因究明

コーチング

修正

習慣化

という閉ループがある。

営業組織にとって最も危険なのは、

「結果だけを見ること」

である。

結果は、原因の最終的な表出にすぎない。

強い営業組織とは、

結果が悪くなってから頑張る組織ではなく、結果が悪くなる前に原因側の異常を検知し、現場で修正できる組織

である。

そして、さらに重要なのは、そこで得られた学びを個人の経験で終わらせず、

個人知 → チーム知 → 組織知 → 標準行動

へ転換することだ。

この意味で営業TQMとは、

営業管理論
というより、

「顧客価値を継続的に創出するための組織学習システム」

と呼ぶ方が、本質を正確に捉えている。

最終的に本書が目指す営業組織は、

売上を追いかけ続ける組織

ではなく、

売上が生まれる条件を理解し、その条件を自ら学習・改善・再生産できる組織

である。



最終要約|『BCG流 戦略営業』の公式

本書の営業TQMを一つの式に圧縮するなら、

営業成果
= 顧客価値
× 正しい営業行動
× 再現性
× 改善速度
× マネジメント習慣

と整理できる。

そして、営業TQMの真のゴールは、

「成果の再現性」を個人ではなく組織に持たせること

にある。

0
2026年08月16日

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