あらすじ
2016年より最強コンサルティングファーム、BCGの日本代表に就任した気鋭のコンサルタントがロジカルに、時に泥臭く解説。紹介する手法は、すべて著者が実際のコンサル現場で磨き上げ、結果を出してきたもの。どの企業でも応用可能な「型」として普遍化し、具体的なノウハウとして紹介します。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
『BCG流 戦略営業』統合・詳細レポート
― 営業を「属人的な成果活動」から「顧客価値を継続的に生み出す組織能力」へ変える
著者:杉田浩章
書籍:『BCG流 戦略営業』日本経済新聞出版
⸻
0. エグゼクティブサマリー
本書、とりわけ今回読み込んだ「営業TQM」の議論を一言で表現すると、
営業成果を直接追いかけるのではなく、顧客価値を起点に成果が生まれる因果構造を特定し、その原因側にある行動を計測・改善・習慣化することで、営業を再現可能な組織能力へ変える方法論
である。
一般的な営業マネジメントでは、
* 売上
* 粗利
* 受注件数
* 達成率
といった「結果」が管理の中心になりやすい。
しかし、結果は発生した時点ですでに過去であり、結果だけを見ても、
* なぜ成果が出たのか
* なぜ成果が出なかったのか
* 明日から何を変えるべきなのか
は分からない。
そのため、本書では営業マネジメントの対象を、
結果 → 顧客価値 → プロセス → 行動
へ遡らせていく。
さらに、正しい行動を発見するだけでも足りない。
それを、
行動KPI化 → 週次レビュー → ダッシュボード → 現場コーチング → 修正 → 再実行
という短周期の管理サイクルへ組み込み、最終的に「言われなくても自然にできる」レベルまで習慣化する。
営業TQMは、したがって単なるKPI設計論ではない。
その全体像は、
顧客価値を定義し、成果との因果をデータで解明し、その原因となる行動を標準化し、短周期で観測・診断・改善する営業オペレーティングシステム
として理解するのが最も適切である。
⸻
1. 本書が問題視する従来型営業マネジメント
営業組織には、典型的に次のような問題がある。
1. 売上目標偏重
「前年比110%」
「今期10億円」
「シェア20%」
といった、自社都合の目標が営業組織に降りてくる。
もちろん売上や利益は重要である。
しかし、それだけを営業担当者の直接目標にすると、
「顧客に価値を提供する」
よりも、
「今期の数字を達成する」
ことが優先される危険がある。
⸻
2. 結果しか見ない
売上未達になると、
「なぜ売れなかったのか」
「もっと頑張れ」
「訪問件数を増やせ」
といった指導になる。
だが結果だけを見ても、改善策にはならない。
⸻
3. トップ営業への属人化
営業成果が高い人について、
* センスがある
* 人脈がある
* 話がうまい
* 勘がいい
と説明して終わる。
すると、その営業能力は本人に閉じた暗黙知のままであり、組織へ移転できない。
⸻
4. KPIが「測りやすさ」で決められる
架電数、訪問数、提案件数など、
測れるからKPIにする
ということが起こる。
だが、
測れる行動 ≠ 成果を生む行動
である。
⸻
5. 改革がイベントで終わる
研修を実施する。
新KPIを設定する。
営業会議を変更する。
しかし、数カ月後には元の行動へ戻る。
この根本原因は、習慣化の仕組みが設計されていないことにある。
⸻
2. 営業TQMとは何か
TQMは本来、製造業で発展したTotal Quality Managementである。
製造では、
* 品質を定義する
* 工程を分解する
* 異常を検知する
* 原因を特定する
* 工程を改善する
* 再発を防止する
という管理が行われる。
本書の革新性は、この思想を営業へ持ち込んだことにある。
営業も、
人のセンスで売る仕事
ではなく、
成果が生まれる工程を科学し、品質を継続改善できる仕事
として捉える。
⸻
3. 営業TQMの全体構造
営業TQMは、3フェーズ・10ポイントで構成される。
第1フェーズ|営業価値メジャーの設定
1. 内向きの力学から外向きの価値へ
2. 事実の力をテコに切り込む
3. 営業の存在価値をメジャーに落とし込む
第2フェーズ|行動KPIの設定
4. 「結果・数値管理」から「行動・プロセス管理」へ
5. 正しい行動のモノサシ=行動KPIをセットする
6. 行動KPIをプラクティカルなものにする①
7. 行動KPIをプラクティカルなものにする②
第3フェーズ|習慣化マネジメントの導入
8. 週次で行動管理サイクルを回す
9. ダッシュボードで「見える化」する
10. 現場マネジャーを再生する
この構造は、
What Value
↓
What Behavior
↓
How to Sustain
という三層構造になっている。
⸻
4. 第1フェーズ|営業価値メジャーを設定する
⸻
4-1. ポイント1|内向きの力学から外向きの価値へ
「売上」ではなく、その手前の顧客価値を見る
営業組織が最初に問うべきなのは、
われわれの営業組織は、顧客に何の価値を生み出すために存在しているのか
である。
これが営業TQMの出発点となる。
売上や利益は、企業にとって必要だ。
しかし営業担当者の日々の思考を「売上」に固定すると、
* 月末の押し込み
* 不要な商品販売
* 過剰な値引き
* 顧客より社内事情を優先
という行動を誘発する可能性がある。
したがって、
企業都合の成果目標
から、
顧客・市場に対して生み出す価値
へ視点を移す必要がある。
⸻
4-2. 健康管理の比喩
本書では健康管理が繰り返し例に使われる。
「体重を減らす」
だけを目標にすると、筋肉まで落ちても目標達成になる。
しかし本来求めているのは健康である。
そこで、
* 体脂肪率
* 血圧
* 運動
* 食事
など、より本質に近い指標を見る。
営業も同様である。
売上だけでは、営業活動の質は分からない。
⸻
5. KPIは人間の行動を変える
営業価値メジャーは単なる測定指標ではない。
「何を測るか」は「人に何を考えさせるか」を決める。
例えば、
製品別売上を評価する
なら、営業は、
「どうすればこの製品を売れるか」
を考える。
一方、
顧客当たり売上を評価する
なら、
「この顧客には本当に何が必要か」
を考えるようになる。
つまり、
KPI → 問い → 思考 → 行動 → 文化
という連鎖がある。
⸻
6. IBMの事例|製品起点から顧客起点へ
ルイス・ガースナーによるIBM変革は象徴的な事例である。
従来は、
「メインフレームを売る」
ことが営業の中心だった。
それを、
「企業にソリューションを提供する」
という考え方へ転換した。
評価指標も、
製品・サービス別売上
から
顧客当たり売上
へ変える。
これは単なるKPI変更ではない。
営業組織の問いを、
「何を売るか」
から、
「顧客に何を実現するか」
へ変える経営改革だった。
⸻
7. 内向き目標と外向き目標
営業TQMでは、次の因果関係を重視する。
顧客への価値提供
↓
顧客満足
↓
継続利用・購買
↓
売上増加
↓
利益増加
つまり、
売上を直接増やそうとするのではなく、売上が増える条件を作る。
これが外向きの目標である。
⸻
8. ポイント2|事実の力をテコに切り込む
営業価値メジャーは、経営者や営業責任者の思いつきで決めてはいけない。
必要なのは、
仮説
↓
データ分析
↓
検証
↓
修正
↓
再検証
である。
営業TQMは、いわば、
Hypothesis Driven × Data Driven
の営業改革である。
⸻
9. データ分析の役割は「レポーティング」ではない
営業データを分析する目的は、
「現状をきれいに説明する」
ことではない。
目的は、
従来の常識を壊し、意思決定を変えること
にある。
組織には、
* 昔からの成功体験
* 上司の信念
* 業界常識
* 営業の経験則
がある。
その中には正しいものもあるが、環境変化によって誤っているものもある。
データは、その前提を客観的に問い直す。
⸻
10. Z社の事例|大口顧客ほど儲かるとは限らない
日用雑貨品メーカーZ社では、市場価格下落によって収益性が悪化していた。
そこで取引先別に、
* 売上
* 販促費
* 人件費
* 流通費
* 隠れた対応コスト
などを再計算した。
その結果、
売上規模と最終収益性には明確な相関がない
ことが判明した。
さらに同程度の売上規模でも、
利益率に最大約20ポイントもの差
が存在していた。
⸻
11. 「もっと売る」以外の利益改善
この発見から重要な示唆が得られる。
利益が低い場合、必ずしも、
売上を増やす
必要はない。
例えば、
* 過剰販促を減らす
* 営業工数を見直す
* 物流条件を変える
* サービスレベルを適正化する
* 低収益顧客の商談条件を変える
ことで収益を改善できる。
つまり、
顧客ごとの経済性を理解することが営業戦略になる。
⸻
12. ポイント3|営業の存在価値をメジャーに落とし込む
営業価値を理解したら、それを、
組織が追跡可能な数値
へ変換する。
ここでのKPIは、
「営業組織が存在する意味」を数値化したもの
であるべきである。
⸻
13. 再春館製薬所|顧客との関係性を測る
再春館製薬所では、
「短期売上」
だけではなく、
顧客と出会ってから1年間の関係性
に着目する。
* 購入回数
* 継続
* 残存率
などを重視する。
こうすると営業担当者の問いは、
「今日どう売るか」
ではなく、
「どうすれば長期的に顧客との関係を築けるか」
へ変わる。
⸻
14. 価値観はオペレーションまで落とさなければ意味がない
「顧客第一」
「お客様志向」
と掲げる企業は多い。
しかし理念だけでは行動は変わらない。
営業TQMでは、
価値観
↓
営業価値メジャー
↓
行動モデル
↓
ツール
↓
研修
↓
パイロット
↓
全社導入
まで落とす。
つまり、
理念をOperating Modelへ翻訳する
ことが重要なのである。
⸻
15. 第2フェーズ|行動KPIを設定する
ここから、営業価値を生み出す「原因側」へ入る。
⸻
16. ポイント4|結果管理から行動・プロセス管理へ
従来の営業管理では、
* 売上
* 利益
* 受注
* 成約率
を見る。
しかしこれらはすべて、
結果指標=Lagging Indicator
である。
結果が出てからでは改善が遅い。
そこで、
結果を生む前段階の行動
を管理する。
⸻
17. 健康管理で考える
体重や血圧は結果である。
改善したいなら、
* 1日の歩数
* 摂取カロリー
* 塩分
* 飲酒
* 運動
を見る。
営業も同じ。
行動
↓
顧客価値
↓
商談成果
↓
売上・利益
という構造で管理する。
⸻
18. 行動KPIは「操作可能な先行指標」
売上は直接操作できない。
しかし、
* 誰に会うか
* 何を聞くか
* 何を伝えるか
* どれだけフォローするか
は操作できる。
したがって、
営業管理は、コントロール不能な結果ではなく、コントロール可能な行動を対象にすべき
という考え方になる。
⸻
19. 営業の暗黙知を形式知化する
トップ営業について、
「センスがある」
で終わらせてはいけない。
例えば、
* 商談前に何を調べるか
* 誰に会うか
* どの順番で質問するか
* どのタイミングで提案するか
* どうフォローするか
まで分解する。
すると、
トップ営業の暗黙知
↓
観察可能な行動
↓
行動KPI
↓
組織標準
へ変換できる。
⸻
20. TQMの狙いは「スター育成」ではなく「底上げ」
営業TQMの目的は、
トップ2割をさらに伸ばすだけではない。
むしろ、
中位6割・下位2割を引き上げる
ことで、営業組織全体の平均値を上げる。
つまり、
個人エース依存から組織能力依存へ移る。
⸻
21. ポイント5|正しい行動KPIを見つける
重要なのは、
測れる行動をKPIにすること
ではない。
成果との因果関係が強い行動をKPIにすること
である。
⸻
22. 架電数・訪問数を安易にKPIにしない
例えば、
* 電話100件
* 訪問20件
* 提案10件
をKPIにしても、成果につながらなければ意味がない。
重要なのは、
何をすると顧客価値が増え、最終成果が上がるのか
である。
⸻
23. 行動KPIも仮説である
行動KPIは一度決めて終わりではない。
仮説
↓
試す
↓
成果を見る
↓
因果を検証
↓
修正
を繰り返す。
行動KPI自体も、改善対象である。
⸻
24. リクルートエージェントの示唆
行動KPI設定までには、
* 多数のインタビュー
* 行動観察
* 大規模データ分析
などが行われる。
定性情報だけでも、定量情報だけでも足りない。
Qualitative × Quantitative
で成果行動を特定する。
⸻
25. ポイント6|行動KPIをプラクティカルにする①
昨日を振り返り、明日を考えられる指標にする
良い行動KPIには、
短い時間軸で結果が把握できる
という条件が必要である。
数カ月後にしか結果が分からない指標では、日常改善には使えない。
⸻
26. KPIは短周期のフィードバック装置
理想は、
昨日の行動
↓
今日確認
↓
明日修正
できること。
営業では日次が難しくても、
週次
であれば十分実用的な場合が多い。
⸻
27. 「量」だけでなく「質」を見る
訪問回数を増やすだけでは不十分。
重要なのは、
* 誰に会ったか
* 何を話したか
* どんな価値を提供したか
である。
つまり、
Activity
ではなく
Effective Activity
を見る。
⸻
28. MRの事例
医薬品営業で重要なのは、
「医師に何回会ったか」
だけではない。
* 適切な医師か
* 必要な情報を伝えたか
* 製品理解を促したか
まで見なければならない。
⸻
29. 代理指標=Proxy KPIを使う
最終成果との因果が直接測れない場合は、
代理指標
を用いることもできる。
例えば、
販促資料送付量
と
数週間後の成約
に安定した相関があるなら、資料送付量を日常行動KPIにする。
重要なのは、
完全性より、操作可能性と検証可能性
である。
⸻
30. ポイント7|行動KPIをプラクティカルにする②
複雑さを排し、シンプルにする
営業管理を精緻化しすぎると、
KPIが増殖する。
すると現場は、
* 覚えられない
* 優先順位が分からない
* 何も徹底できない
状態になる。
したがって、
KPIはできる限り少数化・単純化する。
⸻
31. 再春館製薬所|現場で使える言葉へ落とす
行動規範を、
誰でも理解できる簡潔な言葉へ翻訳する。
重要なのは、
「精緻なマニュアル」
ではなく、
現場で瞬時に判断できる原則
である。
⸻
32. ユニ・チャーム ペットケア|「1P」
重点課題を一つのPriorityへ集約する。
例えば、
主要80社を月4回訪問する
など、誰でも理解できる具体的な目標にする。
⸻
33. 「何をやらないか」を決める
優先課題を増やすほど成果が出るわけではない。
むしろ重要なのは、
一つを定着させるまで次を増やさない
こと。
フォーカスとは追加ではなく、選択である。
⸻
34. 第3フェーズ|習慣化マネジメント
ここからが、営業改革を一過性で終わらせないためのフェーズである。
⸻
35. ポイント8|週次で行動管理サイクルを回す
正しい行動を定義しても、
人は時間が経つと元へ戻る。
これは健康管理と同じである。
* ダイエット
* 禁煙
* 運動
も、「正しい方法を知ること」と「続けること」は別問題だ。
営業改革も同じ。
⸻
36. 習慣化は意思ではなく仕組みで行う
営業TQMでは、
実行
↓
週次計測
↓
レビュー
↓
原因確認
↓
次週修正
を繰り返す。
月次では遅い。
日次では負荷が高すぎることが多い。
したがって週次が重要な運用周期となる。
⸻
37. 週次レビューは報告会ではない
本来の目的は、
Learning & Decision
である。
前週の数字を読み上げるだけなら価値はない。
確認すべきなのは、
* 何をしたか
* 何が起きたか
* なぜ起きたか
* 次週何を変えるか
である。
⸻
38. ユニ・チャーム ペットケアのSAPS
毎週、前週をレビューし、
* 今週の戦略
* 行動計画
を話す。
他者からも意見・助言を受ける。
このサイクルが、
業績管理
だけでなく、
人材育成
としても機能する。
⸻
39. 階層別にレビューを入れ子化する
大組織では全員で毎週レビューできない。
そこで、
営業担当 ↔ チームリーダー
↓
チームリーダー ↔ 課長
↓
課長 ↔ 部長
↓
経営
のようにレビューサイクルを階層化する。
⸻
40. ポイント9|ダッシュボードで「見える化」する
営業TQMでは、
問題は見えなければ改善できない。
そこで行動KPIをダッシュボードにする。
⸻
41. 営業版「アンドン」
製造現場では異常が発生すると、
* ランプが点く
* 問題を知らせる
* 即座に対応する
というアンドンがある。
営業も同じ。
行動KPI異常
↓
可視化
↓
即対応
という仕組みにする。
⸻
42. Q社のダッシュボード
支店・課・個人ごとに、
* 顧客訪問数
* セールストーク認知率
* セールストーク当たり売上高
などを表示する。
さらに、
青:目標達成
黄:90%以上
赤:90%未満
と色分けする。
すると、
どこに手を打つべきか
が瞬時に分かる。
⸻
43. ダッシュボードは管理資料ではなく行動誘発装置
理想のダッシュボードは、
View
↓
Notice
↓
Diagnose
↓
Act
につながる。
表示して終わりではない。
⸻
44. 横比較は組織学習を促す
チーム内で、
「なぜAさんはできているのか」
を考える。
すると、
個人ノウハウ
↓
共有知
↓
組織能力
になる。
見える化には、ナレッジ共有の効果もある。
⸻
45. ポイント10|現場マネジャーを再生する
営業TQMの最後の鍵は、
現場マネジャー
である。
どれだけ優れたKPIやITを導入しても、現場管理職の行動が変わらなければ定着しない。
⸻
46. マネジャーの5原則
① 結果で詰めずに行動で詰める
売上を詰めるだけでは、
* 言い訳
* 精神論
* 責任回避
が起きる。
本人がコントロールできる行動を確認する。
⸻
② 一つずつ、一人ずつ積み上げる
複数課題を一度に解こうとしない。
一課題
↓
改善
↓
定着
↓
次へ
と進む。
⸻
③ 同行してコーチングする
数字では原因が分からない場合、
現地現物
で観察する。
顧客との対話、店頭、提案、業務工程を見る。
⸻
④ しつこく質問を繰り返す
表面的な理由で止めない。
「なぜ」を繰り返す。
⸻
⑤ 全員に同じ行動を続けさせる
理解しただけでは足りない。
理解
↓
実行可能
↓
反復
↓
習慣
まで持っていく。
⸻
47. 「なぜ5回」で結果から真因へ遡る
例えば、
なぜ提案が通らなかった?
↓
信頼関係が弱かった
なぜ信頼関係が弱かった?
↓
バイヤーへの接触頻度が低かった
なぜ接触が少なかった?
↓
会いに行くことをためらっていた
なぜためらった?
↓
上位意思決定者へのアクセスが難しいと思っていた
本当に手段はなかった?
↓
他部門から紹介を受ける方法があった
ここまで掘ると、
「営業力が弱い」
という抽象論から、
意思決定者への紹介ルートを作る
という具体的行動へ落とせる。
⸻
48. マネジャーは答えを教える人ではない
優れたマネジャーは、
Answer Provider
ではなく、
Thinking Facilitator
である。
本人に考えさせ、
* 原因を言語化
* 次の行動を決定
* 実行
* 振り返り
させる。
⸻
49. 「分かった」「できる」「習慣」は違う
営業改革では、
Level 1
分かった
Level 2
言われればできる
Level 3
自分からできる
Level 4
無意識に繰り返せる
まで進める必要がある。
本書が狙っているのはLevel 4である。
⸻
50. 営業TQMを閉ループシステムとして捉える
ここまでの議論を統合すると、営業TQMは次の閉ループになる。
顧客価値
↓
営業価値メジャー
↓
成果KPI
↓
行動KPI
↓
実行
↓
短周期計測
↓
ダッシュボード
↓
異常検知
↓
現地現物
↓
原因分析
↓
コーチング
↓
行動修正
↓
再実行
↓
習慣化
↓
組織能力化
これが本書の中核思想である。
⸻
51. 営業TQMにおける3種類の指標
実務上は、次の三層で考えると理解しやすい。
層代表指標役割
最終成果売上、利益経済成果
営業価値メジャー顧客継続、顧客当たり売上等顧客価値
行動KPI訪問、情報提供、意思決定者接点等先行指標
最も重要なのは、
三つを因果でつなぐこと
である。
⸻
52. 本書から抽出できる「KPI設計7原則」
① Outside-in
顧客価値から始める。
② Causal
成果との因果関係を見る。
③ Actionable
本人が変えられる行動にする。
④ Leading
結果より前に分かる指標にする。
⑤ Short-cycle
短期間で確認できるようにする。
⑥ Simple
少数・明確・共通化する。
⑦ Iterative
KPI自体も修正する。
⸻
53. 本書の営業改革は「管理」ではなく「学習」
一見すると営業TQMは厳格な管理手法に見える。
しかし本質は、
Control
ではなく、
Learning
である。
KPIは人を評価するためだけのものではない。
何が機能し、何が機能しなかったかを学習するセンサー
である。
⸻
54. 経営OSとして見た営業TQM
営業TQMは、以下の6つの機能を持つ。
1. Strategy Layer
何の顧客価値を狙うか。
2. Measurement Layer
何を成果として測るか。
3. Execution Layer
何を行動するか。
4. Observation Layer
どう計測・可視化するか。
5. Diagnosis Layer
なぜ未達なのか。
6. Learning Layer
次に何を変えるか。
つまり、
Strategy → Execution → Observation → Diagnosis → Learning
をつなぐ経営システムになっている。
⸻
55. 営業TQMの実装手順
実際に企業へ導入するなら、次の順序が合理的である。
STEP 1|営業の存在意義を定義
「顧客に何を実現する営業なのか」
STEP 2|営業価値メジャーを設定
顧客価値を数値化。
STEP 3|データ分析
成果との因果構造を探る。
STEP 4|成果行動を仮説化
何をすると成果が出るか。
STEP 5|行動観察
トップ・標準・低成果者を比較。
STEP 6|行動KPI化
少数の先行指標へ。
STEP 7|パイロット
一部組織で実験。
STEP 8|因果検証
本当に成果につながったか確認。
STEP 9|KPI修正
不要指標を削除。
STEP 10|週次レビュー設計
定例運用へ組み込む。
STEP 11|ダッシュボード
一目で異常が分かる状態にする。
STEP 12|マネジャー育成
現地現物・質問・コーチングを訓練。
STEP 13|組織標準化
成功行動を標準化。
STEP 14|継続的改善
環境変化に合わせて更新する。
⸻
56. 本書の強み
本書の特に優れた点は、営業改革を、
戦略だけ
でも、
KPIだけ
でも、
営業スキル研修だけ
でも終わらせていないことである。
営業改革を、
価値
+
行動
+
データ
+
マネジメント
+
習慣
のシステムとして捉えている。
⸻
57. 実務上の注意点
一方、本書の思想を導入する際には注意も必要である。
KPIのゲーム化
指標だけ追うと、数字を良くすること自体が目的になる。
したがって常に、
顧客価値との接続
を確認する必要がある。
⸻
相関と因果を混同しない
ある行動と成果が同時に起きていても、必ずしも因果とは限らない。
したがって、
* パイロット
* 比較
* 時系列
* 現場観察
を組み合わせる必要がある。
⸻
標準化しすぎない
営業には顧客ごとの文脈が存在する。
「共通する型」は標準化しつつ、
顧客固有部分まで過度に固定しない
ことが重要である。
⸻
58. 新規事業・コンサルティングへの転用可能性
本書の方法論は営業以外にも応用できる。
例えば新規事業なら、
最終成果
PoC承認、事業化、売上
だけを見るのではなく、
その前段に、
* 顧客ヒアリング
* 仮説更新
* 意思決定者合意
* 検証件数
* 不確実性解消
などの行動指標を置くことができる。
つまり、
最終Gateではなく、Gateを突破する原因側の行動を管理する。
これは事業開発でも極めて有効である。
⸻
59. 本書から導かれる最も重要な経営原則
本書の議論をさらに抽象化すると、
成果そのものは管理できない。管理できるのは、成果を生み出す条件である。
という原則に行き着く。
売上を直接操作することはできない。
しかし、
* 顧客価値
* 接触
* 商談
* 情報提供
* 意思決定者へのアクセス
* フォロー
* マネジメント
は変えられる。
⸻
60. 結論
『BCG流 戦略営業』が提示しているのは、単なる営業テクニックではない。
それは、
営業を「優秀な人が頑張る仕事」から、「顧客価値が生まれる因果構造を組織的に再現・改善する仕組み」へ変える経営方法論
である。
その中心には、
顧客価値
↓
価値メジャー
↓
行動KPI
↓
実行
↓
見える化
↓
週次レビュー
↓
原因究明
↓
コーチング
↓
修正
↓
習慣化
という閉ループがある。
営業組織にとって最も危険なのは、
「結果だけを見ること」
である。
結果は、原因の最終的な表出にすぎない。
強い営業組織とは、
結果が悪くなってから頑張る組織ではなく、結果が悪くなる前に原因側の異常を検知し、現場で修正できる組織
である。
そして、さらに重要なのは、そこで得られた学びを個人の経験で終わらせず、
個人知 → チーム知 → 組織知 → 標準行動
へ転換することだ。
この意味で営業TQMとは、
営業管理論
というより、
「顧客価値を継続的に創出するための組織学習システム」
と呼ぶ方が、本質を正確に捉えている。
最終的に本書が目指す営業組織は、
売上を追いかけ続ける組織
ではなく、
売上が生まれる条件を理解し、その条件を自ら学習・改善・再生産できる組織
である。
⸻
最終要約|『BCG流 戦略営業』の公式
本書の営業TQMを一つの式に圧縮するなら、
営業成果
= 顧客価値
× 正しい営業行動
× 再現性
× 改善速度
× マネジメント習慣
と整理できる。
そして、営業TQMの真のゴールは、
「成果の再現性」を個人ではなく組織に持たせること
にある。