【感想・ネタバレ】貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまでのレビュー

あらすじ

私たちはなぜこれほど「お金」に翻弄されるのか?――2008年の金融危機の渦中でこんな疑問を抱いたウォール街の投資銀行家が、日本を含む25カ国以上を訪れ、脳科学、行動経済学、歴史学、宗教学、古銭学などの専門家に取材を重ね、「お金」の起源とその魔力に迫る。ポール・ヴォルカー、リチャード・ブランソン、ジミー・カーターら名だたる著名人が賛辞を寄せ、《ニューヨーク・タイムズ》、《フィナンシャル・タイムズ》などの主要メディアで絶賛を浴びたベストセラー。序文・ムハマド・ユヌス(グラミン銀行創設者、ノーベル平和賞受賞者)。

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Posted by ブクログ

こんなに「買う価値のある本」に出会うのは久しぶり。素晴らしく地味な作業の積み重ねと、あらゆる視点からの考察が所狭しと羅列されている。
お金に関わる方とそうでない方両方にオススメしたい本。

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2016年06月17日

Posted by ブクログ

人類が誕生してから我々は800世代目にあたる。
火を使って肉食ができるようになって胃袋は小さくなった。食料を保存できるようになった。

認知バイアス(ヒューリスティック)によって合理的行動仮説は崩される。利用可能性ヒューリスティック、スキルの錯覚、損失回避、貨幣錯覚。

イギリスからアメリカに渡った人の大半は債務者で、債権者から逃れるために船に乗った。

金属主義者=ハードマネー。物々交換によって貨幣が生まれた。
表券主義者=ソフトマネー。債務や信用供与の手段として生まれた。金の裏付けがない。

ヤップ島のフエ。遠くの石灰岩の島から切り出してきたもの。海に沈んでも貨幣として流通した。

古代の原子貨幣は、銀と小麦。
古代エジプトでは労働者が受け取ったのはビールとパン。

リディアの富の源泉は貨幣=シニョリッジを考案した=貨幣の改鋳によって差額を得る。
ドラクマは古代ギリシャにさかのぼる通貨。

カエサルはガリアから金を大量に略奪し、ローマの経済は繁栄した。ネロも同じ。ハードマネーの改鋳は景気を回復させる手段。ルーズベルトのニューディール政策も同じ。

ソフトマネーは利便性が高く抽象性、普遍性がある。
ソフトマネーはインフレを起こす。ゲーテのファウストの悪魔は将来の金の発掘を担保に紙幣の発行を提案する。その結果インフレになる。

中国もドラゴンマネー。貸金庫の証書や受領書が流通した。

フビライの紙幣は、銀による裏付けがあった。折に触れて銀と交換したが、やがて紙幣が大量発行されて信頼性が失われた。
初期のソフトマネーは、悪魔との契約を交わしていて、最終的には支出を膨らませてインフレになる。

フランスのジョンロー。銀行を設立しミシシッピー会社の株を売った=バブルの始まり。やがてはじける。

ベンジャミンフランクリン=土地担保による紙幣の発行を提案した。

リンカーンは戦費調達のため期限付きのグリーンバックスを発行した。しかしハードマネーの裏付けがあるソフトマネーが流通し始めた。

戦争によって、各国は一時的に金本位制を離脱する。戦争が終わると金本位制が復活するが、金為替本位制という修正されたシステム=金の延べ棒としか交換できない=紙幣が金より多くても大丈夫=インフレが発生した。


ニクソンショックによって、世界のマネーがソフト化。10%の外国製品に対する追徴税、金との交換停止。アメリカの株式市場は活況だった。

中央銀行制度はスウェーデンで始まった。
銀行に払い出されたお金は信用創造を産んで乗数効果があるが保険会社から買われた資産は乗数効果は働かない。

1970年代のスタグフレーションは、ニクソンショックによるハードマネーからソフトマネーへの移行が引き金となったのではないか。

アメリカの地下経済は2兆ドル規模。

地域通貨、物々交換、ビズエクスチェンジ。
一部地域ではすでに地域通貨がある。ニューヨーク州イサカのイサカアワー、パークシェアーズ、イコールドル、スイスのWIRなど。
トーマスグレコ「貨幣の終焉と文明の未来」

ビットコインは不安定性に注目すると価値貯蔵手段としての機能を果たせない。ビットコインは金と同様のデフレ効果がある。

ビットコインはプロトコル=これを使ってデジタルなアイテムはすべてコピーされることなく移動できる。
車のキーが携帯電話に入っていれば、車の所有権は携帯電話上を移動できる。

ベラミー「顧みれば」=SF小説。

クレジットカード、モバイル決済、モバイルコマース。
レビューの投稿さえも通貨の代わりになる。

老後の創造写真を見せると貯蓄に励むようになる。

どの宗教も少ないほど良い=足るを知る、を強調している。

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2018年02月11日

Posted by ブクログ

オススメできる。この本を通して、1)お金について考えるべき観点を多く得られる、2)歴史を通してお金というものを全体的に見る事ができる。それによって、お金とは一体何なのか、人間にとってそれが何を意味しているのか、深く考えるキッカケになる。今我々が接しているお金の形が全てではなく、絶えず変化している。これからのお金というものを考える礎になると思う。

ただし、一部説明が不足している(あるいはコンテキストが必要とされており難しい)部分はある。正確に理解しながら読み進めるには時間がかかるかもしれない。また、何か明快な「答え」を探しているのであれば、それは自分で考える必要があるだろう。

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2017年12月30日

Posted by ブクログ

もう1週間経過しましたが、先日行われた英国でのEU脱退を問う国民投票がありました。当日(2016.6.24)オフィスで仕事していましたが、同僚からの中間結果を聞いて、事前情報との相違に驚きました。あっという間に確定情報となり、その前後から為替がものすごい勢いで動き出して、円がドルに対して1日で4円程度動いたのを記憶しています。貨幣の価値というのは、ニュース一つでこのように大きく変わるのだと実感できた貴重な一日でした。

この本には貨幣という観点から見た世界史が、カビール氏によって解説されています。貨幣の本質とは「債務」を明確にしたもの、というのは簡潔かつ明確な文言でした。これを満たすのであれば、貨幣が今後どのように変わっても慌てることがないかも知れませんね。

先週は短期間の上海出張でした。中国人との同僚と食事をしたとき、この2年間で、中国では現金はおろか、クレジットカードを使うことも少なくなってきたとのこと、殆どが「スマホアプリ」で事足りるようです。レストラン、コンビニだけでなく、露店での支払いも可能だとか。日本との違い(遅れ)に少々戸惑いながら帰国してきました。そのような私にとってこの本はとてもタイムリーなものでした。

以下は気になったポイントです。

・人類が大昔に誕生してから、現在の私達は800世代目に当たる、最初の600世代以上は洞窟で暮らし、活字になった文字を見るようになったのは、最後のほんの数世代である(p36)

・貨幣は、エネルギーの代用品として進化した可能性がある、塩は単なる岩塩から、食べ物を保存する手段へとなり、さらには、食べ物の調達量を増やすために必須のアイテムとなった(p47)

・もしも私達の最古の先祖に道具を創造する能力が備わっていたとすれば、別の道具である「言語」も持っていたとも考えられる(p61)

・食料を保存してから調理できるようになると、それをきっかけに先祖たちの胃袋は小さくなったと考えられる。他の霊長類を比較して、人間の胃袋は60%程度(p61)

・大勢の人たちが不動産購入をするのは、名目金利が低くなり、ローンを払う方が有利と推測するから。実際には、実質金利を考慮すべき(p84)

・ベネディクトによれば「お返し」には二つのタイプがある、一つは義務、これは自分が受けた恩を完全には返せない、もうひとつは義理で、これは受けた恩と同程度の恩を返す。義理には、仲間・親族など世間に対する義理と、自分に対する義理(体面・評判・名声を守る)がある(p126)

・結婚式、葬式は二度あってはならないので、贈り物のリボンは「結び切り」というユニークな方法(p127)

・一部の貸付金は、1年を360日とみなす60進法が採用されている、古代ギリシアでは10進法、古代ローマでは12進法に基づいて計算された、そのためギリシアでは利息が元本の10分の1=10%、ローマでは12分の1=8%が設定された(p132)

・イギリスでは1869年にようやく議会で、債務者救済法が制定され、債務による収監は禁止された。イギリスからアメリカに渡った人達の多くは債務者で、債権者から逃げるのが目的であった。(p135)

・紀元前560-547年の古代リディアでは、金銀の交換レートは、金1グラムにつき、銀13.8グラム(p158)

・ラテン語の夜明けを意味する auroraは、金を意味する aurumと同義語で、元素周期表では Auと表現される。(p174)

・世界には170種類以上の通貨が存在するが、通貨取引の85%には米ドルが関わっている。貿易財の価格は、アメリカが取引に参加していなくても、ドルで設定される(p183)

・農民やポピュリスト党員などの債務者は、銀と金による複本位制を提唱した、貨幣供給量が増えるので。債権者は、貨幣の価値が高まるので、金本位制を望んだ(p211)

・欧州数カ国が戦時中に金本位制から離れたのは、戦費を調達するための紙幣を印刷できるため、終わると戦前の成功の再現を目指して、金本位制が復活する。しかし、これは他の金貨との交換ができない(金の延べ棒としかできない)偽りの金本位制であった、アメリカは古典的金本位制を残して、ドルは金と交換された(p212)

・1933年にアメリカは、全ての金貨、金塊、金証券(宝飾品等な一部例外)を、1オンス=20.67ドルで政府に差し出すように命じて懲役刑もあった。1934年に制定された金準備法で、1ドル=35ドルとして、ドル切り下げをした(p215)

・アメリカの動きに対抗して日本は円の変動相場制を採用すると、7%の円高となった。これに10%の追徴税を加えると、アメリカで販売される日本製品の価格は、17%も跳ね上がった(p219)

・イワカアワーには6つの通貨単位があり、1アワー=10ドル、13万ドル以上のアワーが流通している。最も注目すべきは、アワーでの融資には利息が付かないこと、利息を支払うために借金を重ねる必要がない(p241)

・世界の金融機関が破たんしても、5つのアイデアのどれかが採用されるだろう。金属貨幣への回帰、現金利用の増加、物々交換、公共財としての活用、仮想通貨(p249)

・決済関連企業が何百と立ち上げられたが、生き残って多くの消費者から受け入れられたのは、ペイパルだけだろう(p251)

・ビジネスを動かすという点では、評判も、また一種の通貨である(p265)

・映画、インセプションでは、時間が支配的な通貨になっている。年齢が25歳に達すると時計はゼロに向かって動き出し、ゼロになった時点で死を迎える。他人と時間の取引もできる。富裕層は貧困層を犠牲にして時間を蓄積する(p268)

・紀元前1500年に編纂された、古代ヒンドゥー教の聖典ヴェーダによれば、人生には、ブルシャルタ(追い求めるべき目的)が4つある。1)ダルマ(義務)、2)アルタ(富)、3)カーマ(喜び)、そして、最終的な目的である、モークシャ(解脱)である。アルタは、外面的成功や世俗的な富の蓄積で、お金・イメージ・地位を指す、モークシャは、これらの事柄を放棄する意味が込められている、精神的な富である(p308)

・ブルシャルタは、人生の4つの段階に呼応している、1)プラマチャリア(学生)、2)グリハサ(世帯主)、3)ヴァーナブラスタ(隠者)、4)サンニャーシ(世捨て人)、前半2つでは、アルタを追求すべきだが、後半はモークシャを追求すべき(p309)

・デラウェアが合衆国憲法を最初に批准した州である(p322)

・人間にとっての貨幣の起源は、物々交換ではなく、債務であったと指摘した上で、価値の象徴として貨幣そのものを評価する見方がある一方で、単なる計量単位としてのみ評価する見方もある。前者が硬貨などのハードマネー、後者が、紙幣などのソフトマネー(p358)

2016年7月3日作成

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2016年07月03日

Posted by ブクログ

数ヶ月前にビットコインが暴落した時に貨幣について興味が湧いたので、読んだ。筆者が貨幣について調べたありとあらゆることが書いてある。
大変勉強になった気がするが、いかんせん色々な教科書をたくさん抜き書きしてる感じで、いささか退屈なで読み進めるのが辛い時もあった。けど、当初の目的はかなり達成されたので、総じて良い本だと思います。

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2018年03月03日

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