あらすじ
学歴エリートの道を転げ落ち、業病を抱えて朝鮮、満州、京都、神戸、若狭、小豆島を転々、引きずる死の影を清澄に詩いあげる放哉。自裁せる母への哀切の思いを抱き、ひたひた、ただひたひたと各地を歩いて、生きて在ることの孤独と寂寥を詩う山頭火。二人が残した厖大な自由律句の中に、人生の真実を読み解く、アジア研究の碩学による省察の旅。文庫書き下ろし(詳細年譜付き)。
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Posted by ブクログ
学歴エリートの道を転げ落ち、業病を抱えて朝 鮮、満州、京都、神戸、若狭、小豆島を転々、引 きずる死の影を清澄に詩いあげる放哉。自裁せる 母への哀切の思いを抱き、ひたひた、ただひたひ たと各地を歩いて、生きて在ることの孤独と寂寥 を詩う山頭火。二人が残した厖大な自由律句の中 に、人生の真実を読み解く、アジア研究の碩学に よる省察の旅。
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自由律俳句を代表する俳人である、尾崎放哉と種田山頭火。本書を読むまでは、酒で身を持ち崩し死地を探し放浪していたと言う点で、似た者同志という認識しか持っていなかった。
現代風に言うと、2人とも社会不適合なのだと思うが、その背景はまるで異なっていた。幼少期からの不幸な出来事の連続がその後の人格形成にも影響を及ぼした山頭火に対し、放哉は東京帝大を出て一流企業に就職するエリートコースを歩みながらも、自らの酒癖の悪さでそのキャリアをふいにしてしまう。
山頭火がそんな放哉に憧れ、墓参にまで向かったというのがまた面白い。
Posted by ブクログ
常にポケットに鬱屈とした気持ちを抱えた二人。酒に溺れ、現世を憂いた二人は救済としての死を求め続ける。
それでも、拭えない寂寥感や淋しさが彼らを自由律俳句へと導いていったのだろう。
我々が今持つ憂鬱や、「ここではないどこか」を求める気持ちと、人生を通して戦い続けた彼らの人生。少しでもそういった気持ちに心当たりがあるあなたはぜひ読んでみてほしい。
年表ではなく本文に記載の好きな俳句を一つずつ。
放哉
つくづく淋しい我が影よ動かしてみる
山頭火
いつまで死ねないからだの爪をきる
Posted by ブクログ
時空の一瞬を切り取る単律句。
苦悩の代償としての放哉、山頭火。
わらやふるゆきつもる 井泉水
山頭火
鉄鉢の中へも霰
秋風あるいてもあるいても
焼き捨てて日記の灰のこれだけか
大きな蝶を殺したり真夜中
放哉
咳をしても一人
つくづく淋しい我が影よ動かして見る
板じきに夕餉の両ひざをそろへる
にくい顔思ひ出し石ころをける
肉がやせてくる太い骨である
春の山のうしろから烟が出だした
寂しさの中にある、かわいさ。
孤独と、だめな人生と、いとおしさ。