あらすじ
スパイス、コーヒー、紅茶、砂糖、奴隷……これら世界史キーワードの陰には、常に暴力装置としての海賊がいた。彼らは私的な略奪にとどまらず、国家へ利益を還流し、スパイとして各国情報を収集・報告し、海軍の中心となって戦争に参加するなど、覇権国家誕生の原動力になった。さらに、国際貿易・金融、多国籍企業といった現代に通じるシステムの成り立ちに深く関与していた。厄介な、ならず者集団であるいっぽう、冒険に漕ぎ出す英雄だった海賊たちの真実から、世界の歴史をとらえ直す。
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Posted by ブクログ
英国が世界制覇していった過程を、16世紀エリザベス一世の時代から、海賊を利用したり、スパイを使ったりした事で具体的に説明してくれる。
うーむ。大変面白かった。英国大好き偏見人間のバイアスを、キレイさっぱり取り払ってくれた。
ある意味英国は賢かったけど、ズル過ぎた、とも言える訳、と言う事が分かりました。
Posted by ブクログ
16世紀から18世紀にかけてのイギリスの歴史について書かれたもの。エリザベス女王がいかに海賊をうまく利用して大国を造っていったかがよくわかる。イギリスでは海賊にも英雄が数多く存在し、貴族にまで叙せられているのは驚きだ。印象的な記述を記す。
「フランシス・ドレーク:海賊の英雄」p8
「ジョン・ホーキンズ:女王陛下の海賊」p22
「爵位:Duke(公爵)、Marquis(侯爵)、Earl(伯爵)、Viscount(子爵)、Baron(男爵)ここまで世襲貴族、Baronet(准男爵)、Knight(騎士)」p24
「1582年英国情報関係費は、国家予算の15%」p66
「王室の資金源:1 海賊に盗ませた略奪品の転売、2 黒人奴隷の密輸、3 海外貿易(スパイス、コーヒー、紅茶)」p108
「ロイズでは客の要望に応える店員を朝から晩まで待機させたから、ウェイター、ウェイトレスとよばれた」p167
「エリザベス女王は、国民に密輸を固く禁じる一方で、自身は海賊と組んで奴隷の密輸を強力に推し進めた」p186
「イギリスは16世紀~18世紀の約270年間奴隷貿易を延々と行ってきた歴史をもつ」p195
Posted by ブクログ
イギリスの急成長には海賊の役割が重要だったんですね。
映画「パイレーツオブカリビアン」や「エリザベス」など、16世紀のイギリスの事を知っていると、もっと楽しめる!海を制するものは世界を制する。
同著書「世界を動かす海賊」も読んでみます。
Posted by ブクログ
英国繁栄の一端を海賊が担っていた、という興味深い話。
世界史の授業で、イギリスが海賊を使って無敵艦隊を破ったと習ったけれど、何故海賊なのか?と素朴に疑問に思っていた。金儲け、仮想敵国の弱体化を狙って国策的に海賊行為をしていたということならば、海戦に参加していてもおかしくない。
スパイスや茶、奴隷についての話も簡単に触れていて勉強になった。
Posted by ブクログ
16世紀のヨーロッパを支配していたのはスペインとポルトガルというカトリックの2大国であり、当時のイギリスは貧しい二流国だった。しかもプロテスタント国家であるイギリスは周囲のカトリック国家からの武力侵攻に怯えなければならない状況で、このまま戦争になればイギリスに勝ち目がないのは明らかだ。どうすれば手っ取り早く強い軍事力を持つ豊かな国になれるだろう。
富国強兵の方法を模索し続けたエリザベス一世が興味を持ったのが「海賊マネー」だ。早速有力な海賊を集めて海賊船団を編成させ、スペインやポルトガルの船を襲撃させた。襲撃した船から高価な商品を略奪して売却すれば現金が手に入るのだ。事実上女王主導の海賊行為だが、さすがに女王が表立つことはできない。そこで民間主導で海賊行為ごとに出資者を募り、秘密裏に女王も大口の出資者として参加するシンジケート方式がとられた。女王が海賊シンジケートの黒幕なのだ。利益が上がれば出資額に応じて分配される。女王の集金マシーンとして大活躍したフランシス・ドレークは世界各地で略奪の限りを尽くし、女王やイギリス国家に巨額な海賊マネーをもたらした。その額は国家予算の3倍にあたるという。
やがてスペインとの戦争が避けられないとなると、海賊たちは集金マシーンにとどまらず、戦闘マシーンとしての使命も背負う事になった。軍事力に劣るイギリスは優れたスパイ組織を作り情報戦を展開し、その情報をもとに海賊がゲリラ的に敵国の船を襲撃して勝利をおさめていった。スペインの無敵艦隊をも破った海賊たちは、イギリスの繁栄に莫大な貢献をしたのだ。エリザベス女王は他国の富を奪うため、そして大国スペインとの戦争に勝利するために海賊たちを大量に動員して活用した。更に海賊を国家の英雄に仕立て上げて人心を掌握したのだ。海賊ドレークは女王からナイトの称号を授かり、特権階級の一員となった。
17世紀に創設され大きな力を持つことになる東インド会社も、設立したのは海賊だった。もちろん主力は海賊船で、当初は略奪とスパイス貿易で富を得た。海賊でもあり貿易商人でもあるホーキンズによる奴隷の略奪と密売から始まった奴隷貿易も莫大な利益をあげた。
16世紀から18世紀にかけてのイギリスはまさに海賊国家であり、その後の繁栄の基を築いたのは海賊たちの略奪行為とそれを国家戦略としたエリザベス一世なのだ。
海賊は間違いなく犯罪者であり略奪は犯罪行為であるにもかかわらず、海賊には英雄とか冒険者などのポジティブなイメージがある。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は大人気だが、それも当時のエリザベス一世の海賊ポジティブキャンペーンの影響なのかもしれない。国際政治学者の目から見た「海賊」という切り口で捉えたイギリス史は驚きがたくさんでとても興味深い。「イギリスは紳士の国」なんて誰が言ったのだろう?
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先日読み終えたのは「世界史に消えた海賊」でした。
今回は「世界史をつくった海賊」。
結論から言えば、世界史、特にエリザベス女王治世下のイギリスにおいて海賊がとっても重要な役割を果たし、それがのちの大英帝国、産業革命、を作り上げたのだということを言っているのは同じ。
「消えた」方は海賊として名をはせた各人物を中心に取り上げているのに対して、この「つくった」方は主にホーキンス・ドレークを要素として取り上げて解説はしているものの、全体的には「毛織物に偏っていた英国の貿易がどのような海賊行為にして発展、変化し、さらには諸外国と外交をしていったのか(英国の、女王の政策としてどうであったのか)」という流れに沿って各章がまとめられていて、とても分かりやすく、そして専門的でもある。
コーヒー、スパイス、奴隷について各章でまとめており、世間一般で信じられている「通説」を否定している点について記述があり、刺激的。
とても面白かった。
Posted by ブクログ
日本が乱世の戦国時代、いっても島国の中で「われこそは」と名乗り合っていたころのお話し。ヨーロッパでは地中海にインド洋、大西洋に渡る地球規模での、植民地と貿易利権をめぐる壮大な海洋戦が繰り広げていたのだ。学校で歴史を習う前にこの本と出会っていたならなぁ。
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イギリスが大英帝国として繁栄するひとつのきっかけが大航海時代のスペイン船を襲った私掠船(海賊)である。その海賊に焦点を絞った一冊。いかに大航海時代のイギリスにとって海賊が重要な存在であったかが読めばわかる。
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海賊ブームもあり、海賊の資料本はたくさん世に出回っていますが、そのほとんどがチャールズ・ジョンソンの「イギリス海賊史」と、フィリップ・ゴスの「海賊の世界史」を下敷きにしたもので、あまり目新しいものはありません。
そんな中、この「世界史をつくった海賊」は海賊と世界経済の関係から切り込んでいます。
ジリ貧国家イングランドが海賊を使って大英帝国に成り上がるまでの道のりをドラマティックに描いています。
海賊が国家を救った〈アルマダ海戦〉から始まり、スパイス、コーヒー、紅茶、奴隷などの密貿易、コーヒーハウスから世界初の保険会社が誕生した経緯まで、実に興味深いお話が満載されています。
Posted by ブクログ
船乗りになりたかったな~職選び間違えたかしら、とか最近思ってるのだけどwオモシロイ本でした。イギリスが資源がないなか、大国にのし上がって行くために海賊をどのように利用したのかがよくわかる。イギリスの諜報活動というのはこのときから盛んなのね。007とかが出てくる背景が理解できた。最近、佐藤優とかがインテリジェンスについて色んな本を書いてるけど、この時代から既に高度な活動が行われてたのね、と感心。歴史の授業では東インド会社がインド支配のために作られたみたいな語られ方がされるけど、ホントは純粋に利益を得るための海賊集団だったのね、ということが分かる。オモシロイ。
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初めて世界周航を個人としてやり遂げたのが、マゼランではなく、ドレークだったというのは、意外と知られていない。しかし、「成り行き」で周回してしまっていたとは。クイーンズ・パイレーツ、恐るべし。
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海賊という犯罪行為によって英国は一流国家へと成長したという事実に衝撃を受けた。エリザベス女王の関与が発覚したとき他国はどんな反応をしたのか、現在の英国ではどういう歴史認識とされているのか知りたくなった。
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イギリスの急成長の裏には海賊が大活躍していた。エリザベス女王お抱えの海賊たちは略奪を繰り返し、それを国家の財産として持ち帰っていてのちの東インド会社も海賊から構成されているという事実には驚いた。ドレークがいかにして無敵艦隊を撃ったか、国力が明らかに劣っていても地道な作業が今のイギリスを作り上げたことをわかりやすく説明している。
文体もあまり堅くなくてスラスラを読めたのでとても楽しかった。これを機に17世紀のイギリス史学びたいと思ってみたり・・・
Posted by ブクログ
後進国だったイギリスは、エリザベス女王の公認の下で海賊を利用した略奪行為を進めて富を蓄えた。後に貿易立国に転換するものの、大英帝国を築くに至った礎は海賊行為だったことがよくわかる。
・1655年、イギリスがジャマイカを軍事領有してスペインのカリブ海支配が幕を閉じた。1670年のマドリード条約において、スペインはイギリス海賊の対策を条件にジャマイカを英領として認めた。
・1651年、イギリス本国と植民地の港からオランダを締め出すことを目的に、貿易をイギリス船または原産国の船舶に限定する航海法が成立した。これに反発して1652〜1672年の3回にわたる英蘭戦争が勃発したが、イギリスが勝利して貿易立国として発展することになり、海賊収入に依存する経済から脱却した。
・スペイン植民地の需要を狙って、イギリス海賊が奴隷の密輸を行ってきたが、イギリスがスペインから奴隷貿易の独占権を獲得したため、海賊に依存する必要はなくなった。1560年代から奴隷制を廃止する1833年までの270年間にわたって奴隷貿易を続けた。
・15世紀末の中国でスパイスを医薬品として消費されていることに目を付けたポルトガル商人がヨーロッパ大陸への貿易を開始した。「中世ヨーロッパ食の生活史」には、スパイスを食肉の保存用に利用した記述はほとんどなく、スパイスを購入することができた富裕層は、保存した食肉ではなく新鮮な肉を食べていた可能性が高い。
・コーヒーの原産地はエチオピアの高原地帯とされ、オスマン帝国がアラビア半島のモカ周辺からサヌアの山岳地帯で栽培するようになった。15世紀初頭、イエメンのスーフィー教団で夜間の修行のために飲用されるようになり、16世紀にカイロ、イスタンブールに広まった。
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16世紀ごろ欧州列強の中にあって、弱小国であった英国がどのように国力増強を財を形成していったかが、海賊行為を通じて理解ができる良書。
弱小国であったがゆえに大国であったポルトガルやスペインに正面から対抗するのではなく、エリザベス女王らの英国王達はゲリラ戦である海賊行為を通じて国力を増強。海賊行為にあたっては、周到な諜報(インテリジェンス)活動を行い常に自分たちが優位な局面に立つよう腐心していた点などは現代にも参考になる。
海賊またその後に成立する東インド会社を通じた海上貿易の歴史についても、理解が深まる。
当時主要な貿易品の一つであったスパイスは、一般的に肉などの保存料として使用されていたと教科書には記載されているが、実際には医薬用として用いられていたなど当時の様子を知るうえでのエピソードも面白い。
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ヨーロッパ、殊イギリスの発展のウラ事情が書かれている本。歴史を紐解いてみると、いまの世界の形とその起源のギャップに驚かされる。
・海賊が王家と密接に繋がっていたこと
・略奪と貿易という2つの機能を海賊が果たしていたこと
・スパイス、コーヒー、お茶、砂糖と黒人奴隷、という貿易の大きな流れがあったのがメインの学び。
そこから派生して、
・奴隷貿易を含めた貿易でも受けたお金から、蒸気機関を発明したワットへの投資となっていた可能性というのは、今後の世界の動きというところで見ると、考えておかないといけないテーマだと思う。
・スパイス、コーヒー、お茶、砂糖と黒人奴隷、のどれもが、先進国ではない国々に起源があるということも、考えさせられる。ついつい今の世界のイメージでモノを見てしまうけれど、世界にはそれぞれの国の誇りがたくさんある。
・実はヨーロッパの新興国などに対する寄付文化や貢献活動は、過去のアジア諸国、西アフリカなどに対する罪に対する償いという側面もあるのだろうかと思ったり。
・イギリスがそもそも弱い国だったこと、スペインとポルトガルが大国だったこと、現状と反対で驚いてしまった。
・そしてイギリスという国が這い上がっていく、その始まりとしての16世紀は最高に面白い時代だっただろうと思った。やっていることが犯罪とは切っても切り離せないけれど、限られた資源でどうやって勝っていくかという考え方は、ビジネスでも大切なことで、ワクワクする。こんな昔から、国の外に飛び出していくひとたちがいたのも感激!スケールが小さくても、ドレークやホーキンズのように一旗上げてやる!という気持ちになった。
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大航海時代、世界最強の海賊とうたわれたフランシス・ドレーク。探検家であり女王陛下エリザベスの祝福を受けたかれがどうやってスペインの無敵艦隊を滅ぼしたか。その他、東インド会社の貿易振興も海賊がやってのけた功績。世界史に大きく影響を馳せた海賊たちの歴史に迫る。
海賊の視点から世界史をつく、ユニークな本。
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大航海時代あたりに活躍?暗躍?した海賊達についての本。比較的読みやすく書かれていて、面白い。イギリス繁栄の裏話的な感じ。ちょうど学校の授業内容とかぶったこともあり、世界観にのめり込めた。
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16世紀、エリザベス女王時代のイギリス海賊=「女王陛下の海賊」の話。現代の海賊のイメージはいかにして作り上げられたのか。
章によって時代を前後するので、時折前後が繋がらずに首を傾げましたが、イギリスが国策として行った、海賊ビジネスの概要を知る格好の一冊かと思います。
資源の少ない島国が大国へのし上がるため、大国スペインによって作り上げられたヨーロッパのカトリック秩序に対抗するため、イギリスは国策として海賊を使ってのビジネスに乗り出します。
海賊と言えば粗野なイメージが先行しますが、富裕層から貧困層まで、海賊の出自はさまざまです。
大海賊は女王からナイトの爵位を賜っていたし、ただ単なる略奪だけではなくビジネスをする上での交渉術にも長けていました。新大陸からジャガイモやタバコを持ち込んだウォルター・ローリーという有名な海賊は、オックスフォード大学出身のエリート海賊だったそうです。
イギリスに富をもたらした遠洋航海と貿易も、「冒険商人」という名の海賊の功績です。東インド会社なんかは学校の世界史でも習いますが、彼ら商人は海賊です。
そうやってイギリスへ富をもたらし、自らも富豪となった海賊たちが、現在までも続く有名企業の創始者である例はいくつも見られます(「リプトン」や「ロイズ」など)。
国家と密接な関係を保ち、「女王陛下の海賊」として国家の繁栄の先兵となった海賊たち。
現在まで語り継がれる冒険者としての海賊の裏には、そのイメージを作り上げた国家の強かな政策がありました。
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現代の海賊をテーマにしようと思ってたら,なぜか16世紀の海賊の本になってしまったらしい。現代のって「海賊戦隊ゴーカイジャー」とか「ワンピース」じゃないよね…。
海賊と言えばイギリス。エリザベス一世の庇護のもと,スペイン船やポルトガル船を略奪しまくったフランシス・ドレーク,ウォルター・ローリー,ジョン・ホーキンズたちの活躍をまとめている。大航海時代に遅れてきたイギリスが,産業革命を経て栄光の大英帝国を打ち立てるには,海賊の貢献が欠かせなかった。16世紀の終わり頃,スペインの無敵艦隊を撃破した立役者も海賊たちだった。
海賊をやったのは,香辛料とか黒人奴隷の貿易で出遅れてしまい,船ごとかっさらうのが手っ取り早かったから。とはいえ乱暴だな…。ま,海賊だからしょうがないか…。というより乱暴だから海賊なのか。奴隷なんか単にアフリカに行っても何百人も捕まえられない。先行者ポルトガルは,奴隷海岸を拠点に,地元の部族長と結託して効率よく集めてた。そういうのをひっくるめたシステムがものをいうから,新参者はまともな手では勝ち目がない。(人身売買自体まともな手ではないが…)
なので,イギリスの海賊は奴隷船ごと拿捕して,砂糖農場で猫の手も借りたいカリブの島々に奴隷たちを売りさばき,船はわがものにして次の海賊行為に利用する。それがカリブの海賊。著者も執筆のためTDLに足しげく通ったとか(必要か?)。イギリスは,当初略奪をこととしてたが,返り討ちにあって拠点の必要性を痛感し,ジャマイカを分捕る。アフリカー奴隷→カリブ・新大陸ー砂糖・煙草→イギリスー銃・毛織物→アフリカ,という三角貿易。
海賊の活躍で国力をつけたイギリスは,次第にまともに貿易で儲けるようになってくる。香辛料が値崩れしてくると,コーヒーが,その後は茶が重要な貿易品になる。コーヒーと茶,それぞれに一章が割かれて受容史がつづられる。紅茶だけでなく緑茶も人気だったらしい。へぇ。
内容もおもしろく,著者がおちゃめなのもよい(テーマ変更とかTDLとか)。いい本だった。
Posted by ブクログ
16世紀、貧しい二流国家イギリスが海賊行為という手法で豊かさを追求し、一流の国家へと変貌していく過程を描いた本。
イギリスでは、国家戦略として海賊が機能していたことがわかります。
学校の教科書とはかけ離れた印象(ただ私がちゃんと勉強してなかっただけかもしれませんが)を受けました。
第一章 英雄としての海賊―ドレークの世界周航
第二章 海洋覇権のゆくえ―イギリス、スペイン、オランダ、フランスの戦い
第三章 スパイス争奪戦―世界貿易と商社の誕生
第四章 コーヒーから紅茶へ―資本の発想と近代社会の成熟
第五章 強奪される奴隷―カリブ海の砂糖貿易
Posted by ブクログ
大英帝国の礎は大海賊達によってつくられた。
掠奪、奴隷、麻薬、現代の価値観で考えるとどれもこれもあり得ないけど、当時は立派なビジネスであり、その担い手である海賊は英雄だった。ナイトもらってるわけで。
価値観は変遷する。現代で英雄扱いされてるものも、実は。。
Posted by ブクログ
ヴァイキングとか世界史に登場する海賊全般を扱うのかと思ったら違った。タイトルは作中でも何度も出てくる「女王陛下の海賊」でよかったのに。
サー・フランシス・ドレーク…マゼランに次いで「世界周航」という偉業を成し遂げた。しかもマゼランと違って生還したので指揮官としては史上初。この結果女王に多額の配当金をもたらした功績でナイトの称号を授与された。幼少期をホーキンズ家で過ごす。
ジョン・ホーキンズ…"女王の金庫番"。王室御用達のエリート海賊。
フランシス・ウォールシンガム…女王の秘書長官(国務卿)。イギリスのスパイ組織の原型を作った。
エリザベス女王下の資金源:
①海賊に盗ませた略奪品の転売
②大物海賊とタイアップした黒人奴隷の密輸
③貿易会社の設立と海外貿易
スパイスが高値で求められた理由について、食肉保存のためというのはあまり根拠がなく、病気や治療のためであったというのが有力。
Posted by ブクログ
大航海時代の大英帝国、特にエリザベス女王期の王室と、海賊との共存関係 を深く描いている。無敵艦隊の撃破、植民地拡大など、暗躍し成り上がった海賊と、帝国の繁栄に利用した王室。『海軍』が実は『海賊』で、『英雄』が『海賊船長』である事のグレーゾーン。 公私を使い分けた王室の“したたかさ”が結果残った。 腐敗しない飲料として、当時の航海に重用されたと言うワイン。なるほど、海賊が大体酔いどれて描かれるのはそう言う事だったのかと。
Posted by ブクログ
女王エリザベス1世の時代、発展途上だったイギリスがスペインやポルトガルのような強国にどうやって対抗していったのか? 「海賊」をキーワードに様々な取り組みが紹介されています。 それにしても現在だったら考えられないような乱暴なやり口だけど、意外と今でもやってることは変わらないのかも。 その他にはスパイスやコーヒー、紅茶の話などが興味深かった。
Posted by ブクログ
大英帝国発展の基礎を作った先人達の無法ぶりがよく理解できたが、現代の倫理感でこれを断罪することには慎重になる。
スペインやポルトガルが新大陸から得た富のすべてがイベリア半島を潤した訳ではなかったというのが如実に理解できた。
まさしく海賊たちは歴史を変えたと言える。
面白い本に出会った。
Posted by ブクログ
イギリスは王室と海賊がタッグを組んで悪いことをたくさんやった。
それで大英帝国の繁栄の礎を築いたんだな、と。
まあ、そうだよね。ルールを破る、人道的にすれすれのところをいく。
多かれ少なかれ、それくらいしないと国家は繁栄しない、というのは事実だろう。
という勉強になりました。
Posted by ブクログ
子供の頃、テレビドラマで「キャプテン ドレーク」という番組があった。もちろん、このような冒険に満ちたドラマは大好きだったので欠かさず見ていたもの・・・・そんなことを思い出しましたね。
竹田いさみ「世界史をつくった海賊」、掛け値なしに面白くて一気に読んでしまった。もちろん、フランシス・ドレークはイギリス海賊史上のもっとも有名な海賊だと云っていいのだろう。二番目のために余り知られてはいないが世界周航を成し遂げた人物であり、そして何よりも世界の海を股にかけてスペイン船を襲い、銀、胡椒、などの財宝をイギリスに持ち帰ってエリザベス女王の時代をつくった海の英雄、というのはイギリスの歴史の話。スペインの歴史から見れば、スペイン没落の張本人、悪党の中の悪党というべきかも知れない。
それにしても、エリザベス女王というのも本当に「ワル」な人物だといわなければならないだろう。スペイン、フランスなどのカトリック教国に囲まれ、スコットランドからも脅威を受けるという四面楚歌の中で、貧しい小国イングランドが生き延びるにはこれしかないという国策。ヨーロッパ中にスパイの情報網を張り巡らし、裏で海賊を操ってスペインを疲弊させ、ついには無敵艦隊を破って世界の海に覇権を唱えるほどの強国の基礎をつくってゆく。イギリスの歴史は海賊によってつくられた!? と云ってもいいくらい。ホントにひどい国? だったんだなあ、と今更ながらに驚くようなことだ。とは云っても歴史とはもともとそのようなものに違いない。下克上は当たり前だし、大虐殺の歴史なども枚挙に暇がないほど。でも、イギリスとしてはあまり暴露はしたくない話ではあろうね。
そうそう、トレビアの話が一つ。イギリスと云えば現在は紅茶の国だが、17-18世紀はコーヒーが全盛でロンドンにはコーヒーハウスが8000もあったのだとか。変われば変わるものだね。