【感想・ネタバレ】天皇と東大(1) 大日本帝国の誕生のレビュー

あらすじ

なぜ日本人は、あのバカげたとしかいいようがない戦争を行ったのか。
日本が大破局への道を歩き始めた昭和戦前期、歴史の大転換を中心的に動かしたのは、天皇という存在だった。
その大転換が起きた主たる舞台は東大だった。
天皇イデオロギーと反天皇イデオロギーとの相克が最も激しく起きた舞台も東大だった。
「東大という覗き窓」を通して、近代国家成立の前史から、大日本帝国の終わりまでを見渡した著者、畢生の大作。

<第1巻の主な内容>
東大は勝海舟が作った/初代学長・加藤弘之の変節/『国体新論』と「天皇機関説」/慶応は東大より偉かった/早大の自立精神、東大の点数主義/「不敬事件」内村鑑三を脅した一高生/天皇「神格化」への道/日露開戦を煽った七博士/戸水事件と美濃部達吉/元白虎隊総長・山川健次郎の奔走/沢柳・京大総長の七教授クビ切り事件/東大経済は一橋にかなわない/大逆事件と森戸辰男

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

題名とは内容が少し乖離しているようです。明治に東大が誕生した経緯、私学の雄として発足した兄貴分・慶応、そして東大の分家とも言うべき経緯の早稲田との関係。一橋だけでけではなく、全国の高商に頭が上がらなかった東大経済学部。大学が法学部を中心として発達してきた歴史も面白いです。東大の場合には経済は法⇒文⇒法と移った後、独立したというのは面白いです。そして、日露戦争のときの7博士の征露強硬論、特に戸水寛人教授の荒唐無稽ともいうべきバイカル進撃論など、それが政府の干渉により教授休職に追い込まれたときが最初の学問の自治の経緯であったというのも、今にして思えば皮肉を感じます。強硬論へ日本を煽るのは昨今の情勢も全く同じ危険を感じるからです。京大にも詳しく、沢柳総長による7教授首切り事件、河上肇の共産党との関係などは新鮮でした。大学制度が発足して僅かの間に教授会の自治などの考えが確立していたことも驚きです。そして美濃部達吉、森戸辰男などへの迫害を経て、日本が右傾化していき、東大にも右翼学生が跋扈する時代の記述が圧倒的になります。血盟団事件へ到る経緯が詳しいです。ここら辺りになると、昭和史そのものですね。なんと782頁の大作で、著者のバイタリティには感心します。

0
2013年08月21日

「社会・政治」ランキング