あらすじ
舞台はロンドンのサロンと阿片窟。美貌の青年モデル、ドリアンは快楽主義者ヘンリー卿の感化で背徳の生活を享楽するが、彼の重ねる罪悪はすべてその肖像に現われ、いつしか醜い姿に変り果て、慚愧と焦燥に耐えかねた彼は自分の肖像にナイフを突き刺す……。快楽主義を実践し、堕落と悪行の末に破滅する美青年とその画像との二重生活が奏でる耽美と異端の一大交響楽。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
悪に徹していれば、美しいまま「堕落の象徴」として生きられたのに、「良心」とか「贖罪」なんて人間的な揺らぎを見せたからこそ、肖像画に逆襲され、結果として「美しさの仮面を剥がされた」残念だ。
Posted by ブクログ
いつまでも子供の頃のように純真無垢でいたい。
とびきりの美男美女じゃなくとも、魂の清廉さを求める心は誰にでもあると思う。
そして、そんな願いを叶えたのが本作の主人公ドリアングレイ。彼は自分の肖像画に我が身にふりかかる不浄の一切を引き受けてもらえるように願い、そして叶えられた。
どう考えても悲劇的な結末しか予感させない。
なによりわたしが一番恐ろしいのは、日々頽廃するドリアングレイよりも、ヘンリー卿だ。
彼が毎度唱える逆説的な台詞には、19世紀末の暇にあかした貴族の物憂げさ、噂好き、結末のない議論好きな雰囲気がよくあらわされている。
そして彼こそ、側でドリアンが侵す悪行の数々を目にしていたはずなのにもかかわらず、登場の最初からドリアンが死ぬ最期までまったく何も(風貌以外)変わっていないのだ。
彼の論説も人の真理をつくかと思いきや、ふらりと捉えどころもなく薄気味悪い。
ドリアンに最初の穢れをもたらしたのもヘンリー卿だった。
本作を読んで、あまりに彼の台詞に共感、陶酔するのはちょっと怖い。
けれど、不思議と魅力的で、一見ねじくれて理解しにくい彼の言葉を何度も読み直し、落とし込めようとしてしまう自分がいる。
怖い。
Posted by ブクログ
不思議な後味の残る小説だ。
過度に花に彩られた冒頭、これは美しいドリアンを導く演出だろう。ヘンリーの逆説もくどいほどに過剰。
ドリアンは終始利己的で、せっかく危機を乗り切ったのに自ら最期を招いてしまう。
結局何を描いたものなのか、よくわからなかった。
Posted by ブクログ
自分の代わりに肖像画が醜く老いていく。
自分は美少年のままで年齢を重ねる。
凡庸な善人、頭の切れる不道徳な人物
ドリアンは後者を選んでしまう。
不道徳に惹かれてしまう思春期。
ずっと思春期の中で過ごした顛末は
ハッピーエンドではなかった。
幻想的な物語でした。