あらすじ
バター不足が続いている。農林省は、その理由を原料となる生乳の生産量が落ちたうえ、多くを飲用牛乳向けに供給したせいだと説明した。だがこれはうわべの事情に過ぎない。実際は、バターをつくる過程で同時に生成される、あの【脱脂粉乳】が強い影響力を持っていた。使い道が少なくなった脱脂粉乳が、生乳の価格、酪農経営、そしてバターの生産量をも左右していたのだ。これまで外部にさらされることのなかった酪農をめぐる利益構造と、既得権益者たちの思惑。隠された暗部をえぐる。
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複雑で根が深い利権
元農水省の役人だった人が書いた、バター不足のからくりについての解き明かし。
本一冊使っての説明が必要なほど、農水政策の利権の根は複雑で深い。これまで何兆円もつぎ込んで来たけど、関係する人たちの懐に収まっただけで何の役にも立っていない。どころか、国民がバター不足で困っていても、この人たちはそんなこと自分たちの利権の大切さに比べたらどうでもいい。
その他の98%の国民の人たちはもっと怒っていい。
Posted by ブクログ
一時期、バターが市場に行き渡らずに話題になったことを思い出して読んでみましたが、農政も絡んだかなり複雑な状況だということが分かりました。高関税と減反政策により高どまりしたままの米価により、国民が不必要な出費をしている現実。酪農や畜産についての認識も改めねばならないと切に思いました。
Posted by ブクログ
解っているようで解っていない、日本の農政。農家の保護のため、いろいろな施策がなされているのはわかるがその実態はわかっていなかった。米とは違う、酪農の世界。
Posted by ブクログ
バター不足の時にマスコミで報道された「加工向けの牛乳の買取価格が安いから」というのは間違いである、という事を農政や生産上の問題、貿易環境等色々な面から分析した本。著者は元農水官僚で統計なども紐解きながら解説。
Posted by ブクログ
酪農家は朝夕は忙しいが昼間は暇。地元の役職が多い。
牛乳には低温保持殺菌と超高温瞬間殺菌がある。
牛乳は生乳からつくられるものだけ。乳脂肪分3%以上。
低脂肪は0.5~1.5%、無脂肪は0.5%未満。
成分調整牛乳とは、成分の一部を除いたもの、という規定があるだけ。
加工乳はバターと脱脂粉乳など乳製品からつくられる。生乳以外の乳製品が入れば加工乳。
生乳の価格は飲料向けと生クリーム等向けでは違う。
牛乳をバターと脱脂粉乳に加工したのち、水を加えると牛乳に戻る=加工乳。
以前は生乳の3.2%以上の脂肪からバターを作っていた。
その後乳脂肪の基準が3.5%になり濃厚になったため売れ行きが延びた。
バターの関税率は300%。エシレバターが高い理由。
不足しても輸入されない。
牛乳や乳製品は、製造は安定しているが消費が天候に左右される。直接消費者には流通しない。多様な乳製品がある。国の政策に左右される。生乳の価格はいくつもある。
脱脂粉乳が雪印事件で人気が落ちたため、バターの生産量も落ちた。余った脱脂粉乳から加工乳が作られるため脱脂粉乳の需要に合わせてバターを作ることになる。
TPPでホエイの関税が撤廃されると脱脂粉乳の需要がさらに減る=バターの生産がさらに減る可能性がある。