【感想・ネタバレ】Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学のレビュー

あらすじ

愛、臓器、人気企業への就職、有名大学への進学・・・世の中には「お金」では買えないものがある。互いが互いを選ぶ「組み合わせ」が必要だ。最適・効率的な「組み合わせ」はどうすれば実現できるか。マッチメイキングとマーケットデザイン研究で世界をリードするノーベル経済学賞受賞者が、従来の経済学が扱わなかった新領域を分かりやすく解説します。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

今まで漠然と、概念として知っていたこと。
どうしたらもっと良くなるのだろう。
そういった疑問の幾つかを、この本は解決してくれた。

「一人の臓器提供者から、臓器を求める複数の人たちに提供する方法。」

「合コンパーティーのような形で、男女が互いに、第一希望第二希望・・・第N希望を出し合った時、誰もが納得する方法」

この方法の素晴らしいところは、パソコンに「この方法でマッチングを行う」と、予め入力さえしておけば、参加者が自分の希望を出し次第、直ぐに処理してくれる。
とにかく早いのだ。世の中には無駄なマッチングで溢れてる。そのせいで不幸になる多くの人がいる。
今後、様々なケースに適したマッチング方法が確立され、広がっていくことを予感させる、未来が楽しみになる本だ。

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2018年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

価格では需要と供給が一致しない市場の存在。臓器移植の患者とドナー、研修医と病院プログラム、人気企業への就職、公立学校の割り振りなど。そうした市場にある、抜けがけ、混雑などの問題、ネットやコンピュータの利便性や処理速度によって拡大している一方、最適・効率的なマッチメイキングを目指すマーケットデザインの工夫もITを通じてなされていることが分かる。
現実の役に立つ経済学だと感じるが、例えば人気企業への就職でも双方のグループとも相手方の十分かつ平等な情報を持ってはいないし、結局のところ就職・採用してみて改めて分かること・変化することもありうるので、最適はモデルでしかないとも感じる。
16-85

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2016年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マーケットデザインでノーベル賞を受賞した著者自身による本書はかなり具体的な例をたくさんあげており、数学的な話もなくかなり読みやすい。マーケットというものの存在意義自体についても考えさせられる点が多かった。

例えば小麦なども、もともとは相対での取引であった。そこでは実際に小麦の質を見聞し、農家の素性を調べ、、、ということが必要であったが、市場が「十分に厚みを増す(買い手はどの売り手からも買え、売り手はどの買い手にも売ることができる)」ことによって小麦市場はコモディティ化した。コモディティ化してしまえば品質や種類は格付けされ、買い手は実際に確かめなくても安心して買うことができるようになった。

コモディティ市場の対極にあるのがマッチング市場である。こういう市場ではデザインによって市場がうまく機能したり厚みを増すように改善できる。

物々交換取引が難しいのは「自分がほしいと思うものをもっていて、かつ自分のもっているものをほしがっている相手を見つける」という点にあり、これが「欲求の二重の一致」という難問である。貨幣を媒介とできる場合は解決が簡単である。自分がほしいものをもっている人さえ見つければよい。しかし、腎臓移植のように金銭を解することが望ましくない場合は
金銭を介さずに効率的に機能する、クリアリングハウスをデザインする必要がある。

・腎移植
腎臓の場合はドナーAからレシピエントAに移植すればそれで終わりだが、ドナーAとレシピエントAの組織型が適合しない場合も多く、そのような場合、別の腎移植ペアを見つけてきてドナーAからレシピエントB、ドナーBからレシピエントAとすることで、0件の腎移植が2件に増える。このペアの数をどんどん伸ばせばそれだけ恩恵を受けられる患者が増える。ただし、自分のレシピエントが移植を受けたらドナーになるのを拒否するというペアが出ても困るので、通常はすべてのペアを同時に手術する。そのため、チェーンをあまり長く伸ばすことができないでいるが、レシピエントが腎臓を受け取ってから同じペアのドナーが提供するまでに数ヶ月の期間が空いたことも何度かあり、約束を反故にするような人はこれまでいなかったという。

・抜け駆け
研修医のフェローシッププログラムの責任者はできるだけ優秀な研修医を採用したいと思っている。どのプログラムも同じことを考えているため、早期採用がどんどん進み、三年間の研修医生活の一年目でプログラム先が決まることが常態化してしまい、その結果、採用側も人となりがわかりやすい地元の研修医の採用にかたよるということになっていた。
著者らは早期採用の中止を提案したが、これは受け入れてもらえなかったため、早期オファーを受けた応募者は、後でクリアリングハウスを介してよりよいオファーがあれば断ってもよいということにした。この方式であれば、研修医の資質を見極める前に抜け駆けして青田刈りをすることのインセンティブがなくなるため、早期採用がなくなった。囲い込んでも優秀な研修医ほどよりよいオファーを後で受けて断ってくるため、プログラムとしては期待を下回る効果しかあげられないからである。

・早すぎる市場
証券市場ではサーバーのすぐ近くに端末を置き、ミリ秒単位の取引を繰り返すトレーダーがいるが、リアルタイムの取引をやめ、一秒ごとに板寄せする方式にすればよい

・シグナルを送る
就職や大学(米国では)の出願は、近年随分簡単になっており、数百件の応募を一気にすることもできるようになっている。受け取る側も多量の応募を受け取るため、有能な応募者を見附、本当に関心を持っている(面接をするに値する)者をよりわけることが困難になっている。カバーレターに志望動機を書いたり、見学に行ったりすることは本当に関心を持っていることを相手に示すシグナルとして働く。オークションなどは、最高入札者が「自分はその品物を他の誰よりも高く評価している」というシグナルであり、しかもそのコストが無駄にならないため、オークション形式は古くから重宝されてきた。

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2016年06月30日

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