あらすじ
景気回復の実感はいまだ薄い。にもかかわらず、東京では空前の大規模再開発が進行中だ。林立する高層ビル、変貌する街の風景。これは、本当に“東京の再生”につながるのだろうか? 「都市は失敗の集積にほかならない。失敗を重ねた都市ほど偉大な都市だ」と語る建築家が、21世紀TOKYOを象徴する、5つのスポットを巡った。汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田。そこに見えてきたのは、どんな「失敗」と「未来」の姿だったのか?【目次】都市開発の手法を概観する/第一回・汐留 悲しい「白鳥の歌」が響き渡る二一世紀の大再開発/第二回・丸の内 東京の超一等地に三菱の「余裕」がどこまで肉薄するか/第三回・六本木ヒルズ 森稔の執念が結実した東京の蜃気楼/第四回・代官山 凶暴な熊に荒らされる運命のユートピア/第五回・町田 「郊外」かと思っていたら「都市」だったという逆説/対話篇・そして北京/あとがき
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、現在の都市、都市開発について論じた本。
納得感のある話がたくさんあった。
<メモ>
・都市の巨大化は資金獲得の手法を激変させ、資金調達のテクノロジーが飛躍的に発展した。複数の主体から調達しなければならなくなった。一人のクライアントが建築家のデザインを評価して設計を依頼するという古典的関係性は過去のものとなった。顔の見えない複数の投資家から集金するために必要とされるのは、創造性の芸術家ではなく、すでにブランドとしてエスタブリッシュされた建築家。投資家は芸術品に対しては投資しないが、ブランドに対してならば割高でも安心して投資する。都市のイメージを決定するほどに重要な大プロジェクトであればあるほど、このようなやり方をせざるをえないのが今の時代。
・逆向きの都市計画。ルールや資本という媒介を用いずに直接自らの生活をデザインする。生活の場がおのずから都市という形をとる。生活とデザインが密着している状態。
・フランス人の得意。よその国の才能を買って、加工して、世界へうる というプロデュース力。アメリカ人もプロデュース力が高いが最終到達点がカネ。フランス人は文化として国家戦略にまで高める。
・都心の再開発と一般人を結ぶ接点は飲食を含めて「買い物」につきる。
・日本人は都市から「村」を排除してきた。現代は「村」が持つノスタルジーこそが余裕の証となる。
・伊藤滋による四つのゾーン分け
北は明治維新の負け組の居住地。貧しい農民が住み着いた場所。南は明治維新の勝ち組(薩長)の居住地、近代的価値観を持つエリートの場所。西半分は地形的にも山の手で武家的。東半分は下町的。その組み合わせにより西北を「学者ゾーン」東北を「職人ゾーン」西南を「実業家ゾーン」東南を「商人ゾーン」と整理した。
・最も有効なリスク管理。それは歴史の継続性とクリエイティビティ