あらすじ
儒教は、統治の基礎を個人の知的修養にもとづく秩序正しい家庭に置いていたため、近代に至るまで、為政者によって盛んに利用されてきた。それゆえ、個人を犠牲にし、家族よりも国家を優先させられた不幸な事例も多い。しかし、儒教は、同時に自然に根ざした人生の指針をわれわれに提示している。本書は、あまたある古典中の逸話を引きながら、矛盾に満ちた現実社会で生き抜く知恵を紹介するものである。
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Posted by ブクログ
儒教における社会の風習・習慣・人生観・家族観・政治観の説明。儒教が他の宗教と異なるのは、理想を掲げつつも現実社会に即した柔軟性を持つところである。人間性の高みを目指しつつも、決して仙人のような完全性を要求しない。だから儒教は宗教ではなく、実践道徳と言った方がいいかもしれない。
Posted by ブクログ
儒教の中のさまざまな思想やエピソードをわかりやすく解説しながら、教条主義的な態度からもっとも遠く離れた、現実のなかに生きて働く知恵を解説している本です。
儒教といえば封建的な道徳思想というイメージがつきまとっていますが、本書はそのイメージを覆すようなさまざまな事例を紹介しています。たとえば離婚の条件である「七去」は、女性を抑圧するもののように考えられますが、著者は離婚が認められない場合を規定した「三不去」という条件も存在していたことを紹介します。そして、男尊女卑の社会思想の背後にある現実主義的な側面に、読者の目を向けさせようとしています。
複雑な現実のなかで活かされてきた儒教の奥深さを知ることができたように思います。