あらすじ
交際していた男性のプロポーズを、私、ミナ=アリス・原田は「父を置いていけない」という理由で拒絶した。私が五歳のときに死んだことになっている父、原田詩也は、不老不死の吸血鬼だ。母と出会い、恋に落ち……けれど母は、父のそばにはいられなかった。だから私が、ずっとそばにいる。そのために私はある決意をした。父を置いていった母に、負けたくなかった――。運命と別離、超克、そして永遠の恋。娘の視点から綴られる、ある吸血鬼の過去と現在の物語。
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Posted by ブクログ
ファミ通の方では残念ながら打ち切りになった物語の後日談……というか描かれるはずだったエピソードを詩也の娘ミナ目線で綴ったシリーズ最終巻。
うん、読んでよかった。
すっきりした。
野村さんらしく、実に切なく苦しく、それでいて愛おしい物語だよなあ。
詩也に永遠に生きることの目的を教えてくれたアリスちゃんのエピソードも
もう一人の吸血鬼の生き方の選択も
そして、雫と詩也との関係の真相と結末も
きっとシリーズでもっと詳しく描かれるはずだったのだろうけれど、でも、十分神髄は伝わった。
むしろぎゅっと凝縮されて心に響いてきた。
シリーズとして描かれた前半よりも、描かれなかったこの後半の方がもっと切なかった。
そして本作の語り手であるミナの心情も。
ただやっぱり永遠の命を持つ者の苦しさはどうしても考えてしまう。
たとえ詩也が綾音さんに永遠の恋をしているとしても、それでも、その思い出だけで永劫の時を生きていけるのだろうか?
いつか想い出が尽きて絶望に堕ちてしまうんじゃないか?
そんな風にやっぱり心配になるけれど。
なんにせよ、ちゃんとシリーズの結末まで読むことが出来てほんとによかった。
ありがとうございました。