あらすじ
中学生の柏木幹彦が暮らす家は近所から桜屋敷と呼ばれる古い屋敷だった。ある日、幹彦は入ってはいけないと言われている西の土蔵にいとこの聡とともに近づき、得体の知れぬ声を聞いてしまう。そしてその翌日、家にある“中将桜”で首を吊った聡が発見される。さらにいとこのまさ枝も行方が分からなくなってしまう……。桜屋敷に秘められた謎が奇怪な殺人事件を引き起こす。大正時代を舞台に描くゴシック・ミステリ。
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Posted by ブクログ
栗本薫の作品には、桜がよくでてくる。
セイレーンは桜井だし、
緑の騎士は、桜を切る話から始まる。
栗本薫は、戦後の新人類(new generation)の日本人の典型なのかもしれない。
そう気がつくと、大正浪漫を書きたくなった気持ちも推測できる。
新撰組ものよりは、より現実味を帯びている。
あとがきの
「あまりに味気なく、そしてあまりにも色気も艶も、妖しさもふしぎな憧れも消えはてたいまのこの世であってみれば、なお。」
で想像がつく。
他人から見れば、栗本薫は味気があり、艶も妖しさもあり、
不思議ちゃんとして憧れる人なのに。なぜ。
Posted by ブクログ
栗本さんの中には「大正浪曼伝説」という大河が流れているらしい。
奥付を見て、以外と新しい作品であることに驚く。(2000年1ケタ台)
大正浪曼オタク(失礼!)と思われる栗原さんにかかれば、本当に大正の昔に書かれたような、そんなにおいの文章に驚く。
退廃的で、気だるげで、現代にはない雰囲気の作品。
Posted by ブクログ
えーとね、これ、後ろの説明文に「大正ゴシックミステリ」と書いてあるんですが。
結論から言うと、ちょっとトラウマになりました。
あの……いや……ミステリって書いてあって、主人公が掘られると誰が思うよ……( ゚д゚)
耐性がある私でさえこうなので、一般的な男性がよく考えず読んじゃったら、大変な心の傷を負いそうな話です。私読んでる間に妙な気分になっちゃって何回かオエってなったもん。そのくらい文章はきれいな話だったんですけどね……。
あとこれはミステリじゃない。
アリバイもトリックもなく、推理材料が何もない上、最後に出てきた犯人も唐突に告白されただけで、その人が犯人であると特定するものが告白以外に何もないため、単なる大正サスペンスと化しています。これは詐欺ではなかろうか。結局、全ジャンルまんべんなく書くなんて無理なんだな、と思った。大正耽美サスペンスって書いとけばおもしろく読めたのに。そう。これは美少年が妖しい情事にふける耽美小説なのでした。言ってよ! 先に言ってよ!! 油断して読んでえらい目にあったよ!(しばらく妙な気分が抜けなかった)(本に影響を受けやすいため)
あと大正だって期待したのに全然大正っぽい文化描写が出てこなかった。なんでいじめられて虐げられてるような娘がスカートはいてんの!
でも文章は美しくて心に染み入りました。いい文章であった。今度もうちょっと普通の題材で読ませてください。