あらすじ
いかにすれば歴史の真実に辿りつき、いかにすれば真実を伝えることができるのか……。本書はヘロドトス、司馬遷、吉田松陰、福沢諭吉ら、古今東西の歴史を紡いできた人々を取り上げ、彼らがいかに時代と向き合い、そしていかに歴史をとらえたかを、イスラム史の第一人者が解き明かしたものである。外交評論家の岡崎久彦氏は、本書解説でこう評す。「歴史哲学に関する古典を全て渉猟され、それの読み方を指導していただける本である。まさに表題通り、『歴史とは何か』を共に思索出来る本である」読者は、歴史学の使命と意味を知るとともに、世界といかに向き合うべきか、そのヒントを得られるに違いない。『歴史の作法』を改題。◎目次より◎『史記』から学ぶ四つの教訓/『ローマ帝国衰亡史』の運命的瞬間/『平家物語』とカフカの世界/クレオパトラの鼻・ルイ十四世の痔瘻・バヤズィトの痛風/海舟・松陰・晋作、危機に思う/孔子とアリストテレスの歴史観/トインビーが「指導的歴史家」と評価したエジプト人
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Posted by ブクログ
歴史学者である著者が、歴史を学ぶことの意義について論じている本です。
著者は、司馬遷やヘロドトスから現代の歴史学者にいたるまでのさまざまな歴史にかんする議論を紹介し、人間が歴史に対してどのようにかかわり、歴史からなにを学んできたのかということについて考察をおこなっています。
まず目を引くのは、著者が社会史に代表される現代の歴史学の動向に対して批判的なスタンスをとっていることです。著者は、歴史の叙述が生き生きとした文章によってわれわれにその魅力を示すということは、歴史にとって些末なことではなく、むしろ歴史の本質に属するものであると考えており、頼山陽の『日本外史』のような作品についても無礙にあつかうべきではないと主張しています。その一方で、中国の史学史を参照しつつ、経学を史学より上に位置づける立場にも異議を提示し、偶然的な歴史の事実により添いつつ、歴史のうちになんらかの道理を見いだそうと努めてきた歴史学者たちの試みを高く評価しています。
さらに、そのような態度で真摯に歴史から学ぼうとすることが、けっしてわれわれが現実において直面しているさまざまな問題と無縁のものではなく、むしろ現実の問題の解決を求めるうえでも有益であると主張しています。とくに著者は、こうした立場から歴史を学んだ人物として陸奥宗光を紹介し、そのしたたかな知性のありかたが、彼の歴史から学ぼうとする態度と密接なつながりをもっていることを明らかにしようとしています。
Posted by ブクログ
PHP文庫は、現世利益を求めるサラリマンハウツーばかりかと思っていたが、たまにこういう重厚な内容の本も出している。
この本も、誰でも読めるようにやさしい形式で書かれているのだが、内容はきらびやかで歴史研究を広い目で行ってきた著者の思いがいっぱい詰まっている。ふつうのサラリマンには受け止められないくらい重くて濃厚だ。何が書いてあるかわかるようになるだけでも一生モノの作業かもしれない。