あらすじ
花火には、二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校を卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日、祖父から電話があり、四年ぶりに帰郷する。そこには花火職人として修業中の風間絢がいた。十二年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。花火に託された思いとは――。希望と再生の物語。
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夏になると思い出す、どこか優しい物語です。
とある事故をきっかけに家業である花火から逃げ続けていた主人公が過去と向き合い、再び花火と関わっていくようになる定番なお仕事物語、、といってしまえばそうなのですが、「花火」の描写がもの凄く丁寧で、読んだ後には花火を観たくなってしまう一品です。
ちなみにタイトルは「銀冠」という花火から来ているとのことで、開いた後に枝垂桜のようにひろがってくる種類になるのかな、個人的には一番好きな花火の種類だったりします。余韻に浸れるのが好きなのかなといったところ、ついつい、見上げて、見入ってしまいますかね。
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『 星降プラネタリウム』がおもしろかったので気になっていた作家さん。これまた大好きな花火がテーマということで読んでみました。
花火が美しく見えるのは、花開いたその数秒間の裏にある、関わった人達の目に見えない想いがあるからなんだろうね。
芯の強さを感じる物語。
カバーのイラストも美しい。
これも出会えたことに感謝の一冊です。
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小説はいかに読み手に情景を想像させるかが面白さの鍵となっていますが、これに出てくる花火の描写はリアリティを伴って脳裏に映像として浮かびあがりました。天頂に到達するまで五秒間、開いて消えるのは二秒間、花火の見方が少し変わった気がします。
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夏の風物詩・花火。夜空に大きく咲いて、散る。それは一瞬であるからこそ、儚く美しいのだと思う。
ただ、その花火を打ち上げる花火師の仕事はもちろん一瞬ではない。様々な下準備があり、いろいろな想いがあり、狂おしいほどの情熱と覚悟がある。
そこに登場人物を取り巻く謎が相まって、物語に力強さを与えている。
きっと、大切な人と花火を見にいきたくなると思う。
一面の花火――できるなら、濁りなく白銀に輝くギンカムロを。
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秋田の大曲で花火競技大会というものを初めて見て、花火師の職業に興味を持ち購入しました。
閉鎖的な街ならではの関わり合いや苦悩、反対にみんなで作り上げる祭りへの思いが込められている、読ませる物語でした。
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花火の季節になったら読もうと思いながら5年以上積んだまま。今年こそ!と思ったのに、コロナのせいで花火大会ないやん。
花火工場の息子として生まれながら、訳あって家を飛び出した主人公。祖父に呼ばれて戻ってみれば、そこには自分とさほど歳の変わらない女性の花火職人がいた。
花火を見られなかったところで死ぬわけじゃなし、なのになぜ人は花火を見たがるのか。打ち上げ花火の演出を求める個人客の想いがちょっとした謎、かつて村で起きたことにこの花火職人がどう関わっているのかが大きな謎。ちょっぴり軽めの遠田潤子作品のようにも思えます。
せめて本の中だけでも打ち上げ花火。
Posted by ブクログ
凋落した花火工場を舞台に、花火職人たちが奮闘する物語。作者さんの文章やテンポが好きです。 かつて両親を奪った事故から逃げ出すように一人暮らしをしていた主人公。祖父からの連絡で帰郷し、花火職人として修業していた風間と出会います。彼女と花火の依頼をこなしていく中で、自身の中にあった花火への思いに気付き、また風間の思いに触れていく連絡短編集です。 花火の色や作り方、仕組みなど様々な方向から物語を描き、感動へと繋がっていく魅力的な作品でした。
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花火師という特殊な職業故に起こる衝突、苦悩を軸に主人公の成長を描いたお仕事小説
花火師は一瞬にその人生の全てを賭ける。
この本の主人公は過去のある事件がきっかけで家業である花火師から逃げ続けている。そんな彼が、だんだんと逃げ続けていた過去と向き合っていく姿が花火と共に描かれていく。
物語の中で大きな役割を果たす、花火の描写は音や光、色のみではなく、振動といった部分まで含まれ描写されている。その為、過去に見た花火を思い浮かべることができる。さらに、普段知ろうともしない花火の雑学もわかりやすく、また自然に解説され、物語の背景が容易に理解できた。
主人公の回りを取り囲む登場人物たちもそれぞれに思いを抱え、それぞれが主人公と関わり合うことで成長し、また主人公を成長させていく。この本にはドラマでいうエキストラは不在だが登場人物の多さで悩まされもしない。背景にある物語の奥深さがそう感じさせているのだろう。
しかし、話ができすぎているとは言えるだろう。職人7年目に高難易度の花火を作らせて良いのか、またその玉貼りを素人同然の主人公に任せて良いのだろうか。などなど疑問を感じる箇所はいくつかあった。しかし、花火師という題材の斬新さ、魅力ある登場人物など考えれば、荒削りに思えるストーリー展開も許容範囲ないだろう。
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花火師の世界を知るということで面白かったのですが、個人的には純小説くらいにただ花火師の世界を書いてもらって、ちょっとした謎や特異的な登場人物がいなくてもよかったのに、と思ってしまいました。
美奈川護さんの文体は独特なことが多くて好きだったのですが、本作ではそこが抑えられているような気がしました。
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まっすぐな花火職人を描いたお話。
お仕事&田舎の伝統文化のお話。
花火の名前や苦労話も知ることができました。
ギンカムロとは花火の名前で「銀冠」と書く。
そしてこの花火会社の技術をもってして作れる花火とのこと。
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この季節に読むのがピッタリなのは、美奈川護さんの書かれた「ギンカムロ」という一冊。花火職人を主人公とした物語だが、花火職人の一家だけではなく、花火に関連した町全体の悲しみや苦しみや喜びや幸せを描いた物語だ。
《あらすじ》
幼い頃に実家の花火工場で起きた爆発事故で両親を亡くし、父と同じ花火職人お祖父に育てられた昇一は、高校卒業後に生まれ育った町を飛びだし東京でアルバイトをしながら一人暮らしを続けていた。そのまま東京に住み続けるつもりだった昇一の元に、ある日届いた祖父からの電話。何かあったのかと驚きながら四年ぶりに帰郷した昇一の前に、祖父の元で花火職人として修業中の風間絢がいた。12年前に起きた様々な不幸な出来事。それぞれの悲しみを抱えながらも、それを乗り越えるために打ち上げられる花火。昇一の祖父が、町の人々が花火に託している想いが交錯しながら物語は進んで行く。
花火職人を題材とした物語はそれほど多くはないと思うが、職人としての苦悩や葛藤が見事に描かれているとともに、夜空に輝く打ち上げ花火がどのようにして作られているのかということも知ることができて興味深い。
「ギンカムロ」とは何のことなのか、何のためにあるのかなど、題名に込められた意味も深い。
夜空に打ち上げられた花火が明るく輝くのは、作られる期間の長さと反対にほんの数秒のことだ。その短い時間のなかで輝く花火は、素晴らしい輝きと音とで、見ている者の記憶のなかに永遠に刻み込まれるものもある。
そんなことを思い浮かべながら読み進めることのできるこの物語は、読後に心のなかに爽やかな風が吹き抜けるような素敵な物語だ。真夏のこの季節に読みにはぴったりな一冊だと思う。皆さんもぜひ。
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花火師さんのお話。
恥ずかしながら、この本を読んで花火に名前があることを知りました。
「昇群光小花付五重芯引先銀乱」という本書の肝になる花火ですが、まるで呪文のような名前です。
この名前はその花火の一生を表す名前なんだそうです。
そして、何よりタイトルにもなっている銀冠(ギンカムロ)。
鎮魂の花火ということで、花火一つに込められた想いを紐解くと、郷愁のような、寂しさのような、哀しみのような…なんとも言えない思いが込み上げてきます。
銀冠、多分今までにも見たことはあると思うのですが、今度はちゃんと意識をもって見てみたい花火です。
この本は小説、あくまでフィクションですが、それでもこの銀冠という花火に魅せられてしまいました。
この花火のことをもっと知りたいと思い調べてみたら、長岡の花火師さんで嘉勢誠治さんという方のドキュメント『白菊』という本があることを知りました。
この『ギンカムロ』の後に読みたいと思います。
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死亡事故を起こし廃業同然だった花火会社に風間という女性が職人として頑張る姿を、会社の4代目となる青年の目を通して描く。はじめは、クライアントからの依頼に基づいた花火を作るといった感じの話だてだったのだが、最後は風間のおいたちに焦点が当てられ、まあどうなのかな、感動的なのか、そうでもないのか、まあまあというところか。
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とある町の花火工房の、花火師の話。
ひとつの花火に突き動かされた女性と、事情で花火を直接見れなかった主人公が、客の求める花火を、そして自分たちの求める花火を求める話。
先輩社員たる女性のキャラの勢いが良い。物語を強引に突き動かす勢い。それを最後の話で主人公が勢いを持つところが、好きなところ。
花火には二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。
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大阪駅ビルの三省堂ルクア店が閉店する際に、最後に購入した本。何の予備知識もなく、ジャケ買い・帯買いでしたが、いい買い物でした。
作者がラノベ作家だとは、解説を読むまで知らなかったが、男性登場人物のキャラ作りなど思い当たるフシも多々あって納得。
硬すぎず柔らかすぎずの読みやすい文章でした。
お仕事小説+日常の謎、という感じでしょうか。
今度は夏に読んでみたいと思います。
カラー写真で花火の紹介をつけてほしかったなー。
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解説で知ったのだが、ライトノベル作家で、しかも今作が集英社からの初の出版でいきなりの文庫本化。これだけで期待が高まる作家の作品。読んで成る程、これは良い。切なさや希望をすっと心に染み込ませる、夏の終わりの時期にぴったりの作品だった。
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花火には2種類ある
永遠か一瞬か
打ち上げから花開き散るまでわずか7秒に命を吹き込む花火職人たちの魂を感じる作品。
夏の終わりに読めて良かった…
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久しぶりに祖父が経営する花火工場を訪れた
昇一。過去の事故により花火からも祖父からも
遠ざかっていた昇一だが、祖父の下で修業中の
女性花火職人・風間絢の頼みで半ば無理やり花火
製造の手伝いをすることになり…
僕は花火が”ドーン”と空に広がる様子も好き
ですが、一発目の花火がヒュルルルーと空に打ち
あがっていく音も好きです。
ヒュルルーという音を聞いている時、その音以外
の時間がゆっくりと流れるように感じられ、それが
ドーンと空に花火が広がる瞬間、その時間が動き
始めたかのように感じるからだと思います。
そしてこの小説ですが、この小説もそうした
花火のような小説のように思いました。
事故後の昇一と伊織の間の時間、そして過去に
あるつらい出来事を抱えた絢の時間。どちらも
実際の時間は流れても、心の中の時間は止まって
いてしまったのではないかと思います。しかし
その時間を動かすのが花火に懸けるそれぞれの
思いなのです。それぞれが新しい一歩を踏み出した
瞬間はまさに長い打ち上げが終わり、空に花火を
打ち上げた瞬間と言ってもいいのではないかと
思いました。
美奈川さんの作品を読むのは『特急便ガール』
以来の二作目。『特急便ガール』が明るく元気、
でもしんみりさせるところはしんみりさせる、
エンタメ度の高くキャラも版元の影響もあって
元気さが印象的だった作品だったのに対し、
この『ギンカムロ』は全体的にしっとりとした
落ち着いた小説で、登場人物たちも個性が強い
わき役はいるものの、昇一や伊織、絢など
地に足突いた登場人物たちをシリアスに描いて
いてそのふり幅の広さに少し驚きました。