【感想・ネタバレ】黒猫の回帰あるいは千夜航路のレビュー

あらすじ

パリで大規模な交通事故が発生。深夜、そのニュースを目にした「付き人」は、相変わらず連絡のない「黒猫」の安否が気になっていた。一年前、イタリアで二人の距離が縮まったと感じたのは、勘違いだったのか……。互いに研究で多忙な日々を送るなか、いつしか声を聞かない時間ばかりが増えていた。そんな時、大学院の後輩・戸影からペルシャ美学の教授が失踪したと連絡を受ける。黒猫のことが気になりつつ、付き人は謎を追いかけていくが――。待望のシリーズ第6弾!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

おかえりなさい、黒猫先生。

1話
暗黒舞踏を見てみたが、生を思い切り表現しているなと思った。と、同時に独特の世界観に怖さを持った。
ポオの魔術と科学の話といえば、心理出の僕としては催眠術を題材とした話のほうが先に出てくる。
ひとり死へと向かう、向かわせる絨毯よりも誰かと乗って旅をする絨毯のほうがいい。飛べたらの話だけど。

2話
心理学的な解釈では頭のない人間は個性の欠落を意味すると聞いたことがある。
トリックは、江戸川乱歩の「二銭銅貨」やアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」を思い出させる。谷崎潤一郎の「私」もそれ系らしいが。

3話
世界の声を聞くという言葉にドキッとした。相手の世界を知ることは、簡単なことではない。それが面白みになることもあるが。
絶望の中に幸福を見出すというのは実存主義的だ。

4話
奇遇ですね、僕も3月生まれなんですよ(
黒猫先生の子ども時代にニヤニヤがとまらない。付き人もきっと同じだったはず。
「タール博士とフェザー教授の療法」は、べてるの家をはじめとする当事者を中心とするアプローチやピアカウンセリングに通じるものがあると解釈していたので、喜劇的に見る発想は自然だった。どちらかと言うと、本文内の解釈はアハ体験に近い?
お笑いは、緊張感から予想外の事態が生じるから笑ってしまうと聞いたことがある。きっと「タール博士と〜」もそうで、冷花さんの体験もそうなのだ。

5話
料理と音楽の重なり合い。2つがそれぞれ良さを引き出し合いながら、1つの場を、空気を 、気持ちをつくっていく。おしどり夫婦とはこのことを言うかもしれない。

6話
ボーカロイドは心を持つかという話を思い出した。
多くの人にとってはどうでもいいことでも、その人にとってはとても大事なことになることはたくさんある。どんな稚拙なものでも、大きな力をもつことがあるのだ。
だから、音楽の世界はおもしろい。

総括
森晶麿作品の中で一番好きなのが、黒猫先生。今回はどこか不器用なところが見え隠れして思わずにやついてしまった。
1作目同様、ポー作品をベースにしているとこもまた回帰。メルツェルのチェスプレイヤー以外は未読なので、後で読もう。

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2016年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

付き人が表紙で微笑んでいるようにやっと、やっとです。もう沢山の絨毯爆撃の嵐に同じ行を何度も読んでしまいます。今までが今までだったのでいざこうなると疑心暗鬼です。黒猫はとりあえず、冷花さんに、ありとあらゆる登場人物からからかわれればいいと思います。謎とか色々あったのに最後の数ページとか途中の意味深な最後に全部もってかれました。

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2016年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒猫シリーズ第6弾。黒猫がパリから帰還。久しぶりに黒猫&付き人さんが日本で一緒に謎に挑む連作短編6編。

今作もポオの作品を解体しながら、日常のちょっとした謎を解いていく。美学談義の部分は難しいけれど、このシリーズは、黒猫と付き人さんの関係をメインで楽しむことにしてる。

エピローグまで読むと、今までの歯痒さがようやく一段落。このまま終わるのも綺麗だけど、まだまだ2人を見ていたい気もする。

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2018年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒猫シリーズ。フランスから帰ってきて、近くで過ごせる。
遠くに居て連絡が取れないと、途方もなく心配になる。不安が積み重なり、疑心暗鬼になる。黒猫の姉も出てきた。教授がなくなった。お土産をずっと渡せない人だと、知っていればそれだけで安心する。

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2017年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒猫シリーズ第6弾。
黒猫との関係性が一歩近づいたと見えた前作からあっという間に1年が経ち、無事博士の学位を授与された付き人は、未だに離ればなれの黒猫を思う日々。
そんな中、パリで起こった事故のニュースを見て心配に駆られていた付き人の前に現れたのは、帰国した黒猫だった。

「きゃ~、やっと帰ってきた~!」と完全に感情移入して思わず脚をバタバタ。
これで、二人の仲は一気に進むか!と期待したもののそこはこの二人、なかなか進まないのがじれったい。
だけど、第1弾からずっ~と見守ってきた二人が、一歩ずつだけど確実に想いを深めている姿に、胸が熱くなる。
もはやポオの作品に絡めた6つの謎なんてそっちのけで二人のシーンだけを楽しむのは、このシリーズの常です。

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2019年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリーって感じがしなくなってきた。そんなに悪い意味ではなく、もともとミステリー要素は他のことに内包されてしまっているというべきかもしれない。

登場人物たちは行きつ戻りつ(戻りはしてないかな)、というのをずっと繰り返してはいるんだけども、それでもちょっとずつちょっとずつ進んでいる。それを垣間見るのはここまで続いちゃうと、なんだかこっぱずかしい。

美学というのは、そういった下世話なモノから美しさを抽出することもあれば、逆に純粋な美しさの中に含まれる下世話をつまびらかにしてしまうこともあるんだろうかね。

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2018年07月29日

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