【感想・ネタバレ】女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアルのレビュー

あらすじ

女子大生が風俗業界に大量流入している。そこから見えるいまの大学生の意識、広がる貧困──経済事情がままならないなか、「充実した学生生活を送りたい学生」ほど、体を売って学費を稼いでいる衝撃的な現状をリポート。著者の新境地。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)2015/10/13

今の大学生たちは明らかに社会的弱者である
2016年8月16日記述

中村淳彦氏による著作。
中村淳彦は日本のノンフィクション作家、ノンフィクションライター。
1972年東京都目黒区生まれ。
明治学院中学校・明治学院東村山高等学校、
専修大学経済学部卒業。編集プロダクション、出版社を経て、フリーライターとなる。

日本の風俗嬢という以前の作品に女子大生も風俗嬢になる実態が広がっていることを指摘していた。
本作はそれを更に深く掘り下げ、日本の学生達、それを支える親たちの現状が描かれている。

昔にも風俗嬢をする女子大生がいたことは事実ではある。
しかし、今は普通に授業料を支払う為に行う苦学生なのだ。
遊ぶ金を稼ぐ為になっている者はほとんどいない。
この日本という国は本当に貧しくなったと実感する一冊となっている。
また女子大生だけではなく、男娼になる大学院生も紹介している。
その彼は早稲田大学に通学している・・・しかし日本学生支援機構からの借金が480万円を越えていて、大学院に進学するには他に手段が無かった・・

他の章に沖縄県に住む学生の苦境も描かれている。
大半の私大に進学するだけで借金(奨学金)で人生詰んでしまう現実・・・
そして地元の雇用は月給13万円~16万円ほどでは返済に行き詰まるのは当然だ。

彼氏に騙される女性も含め目を背けたくなる現実が日本に広がっている。
著者も指摘するように大学という名のレジャーランドは既に崩壊したと言って良い。
中京大学の大内裕和教授の指摘も頷けるものばかりだった。

1975年の国立大学入学金は5万円
授業料は3万6000円だった。
私大平均、入学金9万5584円。授業料18万2677円。

2013年の国立大学入学金28万2000円
授業料は53万5800円
私大平均、入学金26万4390円。授業料86万0072円。

国立大学の学費は15倍近く。私大も4倍。
40年前(1975年)の大卒男子初任給9万1272円。
2013年は20万2469円。
貨幣価値はおおよそ2倍強の上昇にとどまる。
その中で大学学費だけが4~15倍になっている。

年金の給付額の世代間格差もよく問題とされるものの
それにこの大学授業料の負担問題を加えると
信じがたい世代間格差が生じていると再認識した。
今の大学生たちは明らかに社会的弱者である。

不幸なのは日本の歴史上最大の苦学生の多い時代にも
関わらず、大学の夜間課程、2部の多くが廃止されていることも不幸だ。
自分が大学受験をしていた時期(2003~2004年)頃に関西でも多くの私大で夜間主コースの廃止、フレックスコース制度の創設、2部の廃止が行われた・・・
しかし廃止は全く不必要だった。
夜間過程が残っていれば、苦学生の受け皿になったことは間違いない。
しかも夜間なら学費も半額だったのは大きい。
それを廃止した私大は市場原理主義、営利第一主義としか言えない。
ウォール街を批判する資格など日本の大学には無いのだ。

著者は最後に大学進学への投資が回収できないと思うなら
通学生の大学ではなく通信制大学への進学の検討をすすめている。

しかしそこまでしてまで大学に進学する意味とは何なのか。
そしてブラックバイト、風俗も含めてそこまでして得るものが
大学の授業、ゼミにあるとは到底思えない。
高卒で正規雇用を増やす、高卒であっても大卒を同じような
就職活動が出来るように規制緩和を行うこと。
給付型奨学金も増やせれば良いけれども限界を感じる。
またこれまで受益者負担をいう名で負担を国民に押し付けてきた
自民党政治に過大な期待をするべきではないだろう。

0
2021年12月22日

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