あらすじ
上海大学のユアンは、国家科学技術局から召喚の連絡を受けた。「ノックスの十戒」をテーマにした彼の論文で確認したいことがあるというのだ。科学技術局に出向いたユアンは、そこで予想外の提案を持ちかけられる。
※本電子書籍は、紙書籍『ノックス・マシン』から「ノックス・マシン」「引き立て役倶楽部の陰謀」「論理蒸発―ノックス・マシン2」の3篇を収録し、電子版オリジナルコンテンツ【「引き立て役倶楽部の陰謀」の主な登場人物たち】を収録した電子オリジナル版です。
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Posted by ブクログ
『ノックスマシン』 ★★★★★
* 実在の文章である「ノックスの十戒」の第五項に「探偵小説には、中国人を登場させてはいけない」と書かれていた。この不可解な一項から発想を広げたんだろう。
* タイムマシンで過去に戻った時、世界は分岐してしまうという「多世界解釈」の通り、過去に行った人間が(元の世界の人間目線で言えば)戻ってきた例がないという。しかしある特定の日付だけは特異点として世界の分岐が起こらず移動できるという。その日はまさにノックスが「ノックスの十戒」を執筆した日だった。チンルウがノックスを訪れた際、ノックスはそのような項は書いていなかったが、未来から現れたチンルウを見て追加してしまったのであった。(実際にその文が未来でも存在しているということは、世界は分岐してないということ)
* ユアン・チンルウ:大学生
* ホイ教授
* リウ・フーチェン長官:国家科学技術局
* ロナルド・ノックス:イギリス人作家
『引き立て役倶楽部の陰謀』★★★★★
* 様々な探偵小説の引き立て役たちが所属する引き立て役倶楽部。今回も「探偵小説はかくあるべき」という鉄則に基づいた物語。(ここでは「ヴァン・ダインの二十則」が題材に。
* 『アクロイド殺し』をキッカケとしたフェア・アンフェア論争。
* アーサー・ヘイスティングズ:名探偵エルキュール・ポアロの友人
* ジョン・H・ワトソン:名探偵シャーロック・ホームズの相棒。ビッグ4。
* ヴァン・ダイン:名探偵ファイロ・ヴァンスを生み出したアメリカ人作家。「ヴァン・ダインの二十則」ビッグ4。
* ジュリアス・リカード:ガブリエル・アノーの助手。ビッグ4。
* M・P・シール:プリンス・ザレスキーの親友。ビッグ4。
* クリストファー・ジャーヴィス:議長。
* ライオネル・タウンゼンド:書記。探偵小説家。ウィリアム・ビーフ巡査部長のワトソン役。
* アーチー・グッドウィン:
* マーヴィン・バンター:探偵ピーター・ウィムジー卿の従僕。
『バベルの牢獄』★★☆☆☆
* 抽象度高め。
『ノックスマシン2』★★★★☆
* プラティバ・ヒューマヤン:原典管理オペレーター
* ナレンドラ・ヒューマヤン:父
Posted by ブクログ
「ノックス・マシン」★★★★★
「引き立て役倶楽部の陰謀」★★★
「バベルの牢獄」★★★★★
「論理蒸発 ノックス・マシン2」★★★
Posted by ブクログ
2014年版このミス第1位など、各種ランキングで上位にランクイン。法月綸太郎さんの作品は未読だったが、文庫版が薄かったので、手に取ってみたわけである。
結論から言うと、一般向け娯楽小説とは言いがたい難物だった。探偵小説研究会のメンバーでもあり、評論家としての顔も持つ法月さん。なるほど、業界人の評価が高いのはわかる。これは、ミステリーでもありSFでもあり評論でもある。
「ノックス・マシン」。一応本格ファンであるから、「ノックスの十戒」を聞きかじったことはある。その5番目に、「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」とある。真意はともかく、古典ミステリに精通していなければ、これをネタにしようとは考えないだろう。
「引き立て役倶楽部の陰謀」は興味深い。引き立て役倶楽部とは、ワトスンに代表される名探偵のパートナーたちの団体である。某女史の某作品が、彼らにとって由々しき事態だというのだが…。虚実入り乱れた内容であり、本作中最も評論色が濃い。僕は彼女の作品を未読なので、本当の面白さはわかっていないのだろう。
「バベルの牢獄」は、専門用語を散りばめられて煙に巻かれたような、日本語論でもあるような…つまり難解でした。その作品はもちろん知りませんでした。
「論理蒸発──ノックス・マシン2」。以前、北村薫さんの『ニッポン硬貨の謎』に手を出し、痛い目を見たが、その後にクイーンの国名シリーズを読破したので、何とかついて行けた…のだろうか。量子化されたテキストが、「燃えた」という。つまりは改竄である。仮想空間における発火点とは、何か? これは現代にもあてはまるテーマだろう。
古典ミステリに疎いことに加え、量子力学やホーキングの宇宙論まで出てきては、正直お手上げだが、設定に惹かれる点はある。物語はアルゴリズムで自動生成され、あらゆるテキストがデータベース化された時代。長期的には、電子書籍は普及していくだろう。でも、紙の本が愛おしい。難儀しながら本作を読み終え、そんなことを思った。
Posted by ブクログ
少し前の作品ですが、以前から読みたかったのをやっと着手できた。
短編だったけど、独特の設定のSF作品で無理やりの発想が面白いね。トンデモ設定(あくまで今の時代では)をそれっぽく書いてるのがまた面白い。
理系出身なので、量子力学の話もそこまで抵抗なく読めたけど、そうでないと結構マニアックに感じるかも。
あとは、昔の海外のミステリをどれだけ読んでるかで楽しみが変わりそうね。クリスティ好きなので二作品は特に楽しめた。
あと、最近の生成AIの物語の生成能力は本当にすごくなってきてるので、この小説の設定よりAIがノーベル文学賞とる日も前通しになるかも。。。
Posted by ブクログ
4編収録の短編集。SFの文脈でミステリが描かれることはしばしばあるが、ミステリの文脈でSFを描いたとしたらこんな感じになるのだろう。なんとも形容し難いが、不可思議な状況を科学的整合ではなくて、論理的整合性で物語っており、分かるけど、確かに面白いんだけど、もっと別のやり方があるんじゃないか、という感じ。2014年の「このミス」1位とのことだが、うーん。
Posted by ブクログ
法月綸太郎さんのミステリーと言う事だったのですが、読んでみるとこれはSF?
未来のタイムマシン的な話しなんですが、そこにミステリー小説の名作を愛情タップリに絡めた話しで、さらには専門的な物理用語もいっぱい出て来ます。
「ノックス・マシン」「引き立て役倶楽部の陰謀」「バベルの牢獄」「論理蒸発__ノックス・マシン2」の4編
ミステリーをアルゴリズムの数値化にしてる話しや、パラレルワールドの話しなど理解しようと読んでたのでは、意味がわかんなくなる作品でした。」
そこでふと感じたのが、あっ、昔のSFだ~ そう言えば中学の頃は宇宙や時間や空間が好きで失われたシリーズや、タイムトラベル物などを好んで読んでたなぁっと
そこでは、理論は付け合わせで理解するものじゃなく、結果がこうだ!って読まないと変に考え込むとストーリーの方がつまらなくなるので、あの時は考えずに読んでましたw
こちらも最初に読んだときは、なんだこれって思ったけど、深く考えずにストーリーを楽しむと結構面白くなってきて、子供の頃のような感覚で読めました。
エラリー・クイーンやヴァン・ダイン、ブラッドベリなどお馴染みの作家や作品を絡めてるところがミステリーなのかな?
でも、最初はなかなか前に進まなかったです。
Posted by ブクログ
書評を読むと賛否両論。スゲーという人と意味分からんわという人。確かにこれはオモロがる人を選ぶ小説ではある。19世紀~戦前にかけてのミステリー史とちょっと複雑めのSF理論をかじっておかないとオモロさは分からないだろう。
と言ってる俺にしたって、どっちも苦手なジャンル。残念ながら「これはスゲー」と思うことはできず、「ここをオモロいと思わそうとしているな」という雰囲気を感じるのがせいぜい。俺にはハードルが高い小説であった。
このミス1位を取ったことを嘆くレビューも多くみられるが、これを選べるのは「ミステリー賞」しかないだろうと思うし、これを選ぶ選者のいるコンテストがあることは、正しい姿勢だとも思う。自分の理解できない小説ではあるが、これはこれで書かれるべきジャンルだろうし、これを評価する人たちの気持ちもよく分かる。ミステリーってジャズの世界と似てるのかも知れないなぁ。