あらすじ
地方のキャバクラで働く愛菜は、同級生のユキオと再会。ユキオは意気投合した学と共にストリートアートに夢中だ。三人は、一ヶ月前から行方不明になっている安曇春子を、グラフィティを使って遊び半分で捜し始める。男性を襲う謎のグループ、通称“少女ギャング団”も横行する街で、彼女はどこに消えたのか? 現代女性の心を勇気づける快作。
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山内マリコは一貫して、田舎のくすぶってる欲求不満の若者、やるせない倦怠感、反逆する女の人を、あくまでキャッチーに書いてくれる。少女ギャング団、アズミ・ハルコ、どちらの語感も発想も好き。
なんとなく、松田青子の「持続可能な魂の利用」を彷彿させた。時代遅れな固定観念をもつ男性や暴力や性的な男性集団を排除して、女性のみで楽園をつくる。女子高生とおじさんの相性ってバツグンに悪いよな!
いつまでも思春期恋愛を引きずるのは心地いい。自分の青春が、まだ終わっていないような気になるから。恋愛だけじゃなくて、自分の可能性が丸々残されているような気さえするから。(p119)
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これは爽快!
ほんとにみんなみんな、元気で楽しく生きていてほしい。
山内マリコさんとは同世代なので、「あの時あの時代のあの感じ」みたいなのやフェミニズムに対する考え方の変遷みたいなのが、他の著作を読んでてもよーく分かる!!という感じなんだよなー
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はちゃめちゃな展開のようで、女性たちの抱えてる問題や、男たちの身勝手な慣習たちはとても現実的で、実は簡単に起こり得るような出来事なのかもしれないと思ったり。
人物の設定、絶妙なセリフ、展開の気持ちよさなどなど、とても好き。
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閉塞感漂う地方都市に起こった小さい奇跡と大きな奇跡。男子は相も変わらずで、女子はやっぱり元気だという快作。
デビュー作の『ここは退屈迎えに来て』の女性たちがどちらかというと受け身だったのに対して、本作に登場する女性たちは、希望を喪う寸前ながらも流されることなく本当の生き方を見つける。女神のような存在の今井さんの神々しさが眩しい。前作の椎名くんとの違いが面白い。
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山内マリコさん作品記録7
読み終わった後、
何となくスカッとした気分になれる作品。
山内マリコさんの作品はありふれた日常の
シーン一つひとつがとてもセンチメンタルに
描かれていて入り込んでしまう。
個人的には春子と曽我氏が好き。
登場人物たちのその後も見てみたい。
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読もうと思った理由
著者の描かれる世界が面白いため
地方で青春をすごし、都会で生活している著者から描かれる若者特に女性の閉塞感、心情、たくましさが生き生きとして面白くワクワクしながら読みました。
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アイナの気持ちがよくわかる。誰からにも相手にされないと自分には価値がないんじゃないかと思えてくる。他者からの評価が自分の評価だと思い込んでしまってるがゆえに彼女は誰かに依存し続けなければならない。でもなぜそういう思考になったのか?私にはわかる。小学生低学年まで私たちは人間として扱われてきた。しかし、中学にあがると自分がどういう人であるかの前に女という目で見られる。親も先生も周囲の人たちも女としての行動を少女たちに求めるようになる。そうしていくうちに女としての評価がイコール自分の評価なのでは?と思う。少女向けの本にだって モテるにはさすが〜!すごいね〜!ってオーバーリアクションで言うと記載されてる。ティーン向けの雑誌だって男ウケが良いメイクはこうって特集が組まれている。はぁ〜私たちはやっぱり女として評価されてこそ生きてる価値があるんだって思い込むのも当たり前な気がする。ラストは現実味がないけど世界の少女たちに「あなたたちは生きているだけで価値があるし美しいよ」って言ってるみたいで好き。
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どういう展開にするつもりなのか最後まで全然予想できなかったんだけど読み終える頃には元気になれる。こんな町でも、誰かがいなきゃ死んじゃうキャバ嬢も旦那と絶縁したシングルマザーも暴れ回る少女ギャング団もアズミハルコも女の子は等しく逞しい。目覚めよ女子たち!
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なにもない田舎で何か刺激を求める若者たちがリアルでした。
少女ギャング集団のくだりとか今まで読んだ山内マリコさん作品に比べるとファンタジックな要素もあり、不思議なかんじでした。
今まで短編しか読んだことがなかったので初の長編&ちょっとミステリーっぽい?で最後そうなるか!っていう結末が。女万歳!ですね。
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阿部和重の書くもののような似た雰囲気を感じた。読みやすいし面白かったけど、なんだか力弱いというか…。孤独な女性がたどる道ってなんだろう。孤独になったときわたしたちはどこへ行くのだろう。この物語のような救いは見当たらないだろう。ラストはあまりにも楽観的でちょっと興醒めた。
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◾️record memo
愛菜は困ったように笑う。この店での愛菜は年下の道化キャラだから、自分を卑下したり自虐したりはお手のものだった。もちろんあとで、ちょっと死にたくなるけど。
地元を離れたものの地元の仲間との縁が切れるのが心配で、SNSでしきりに帰省をアピールし同級生と会う約束を取り交わした。連日郊外のファミレスに集い、深夜までぐずぐずとダべった。そのときにユキオは気づいたのだ。つまんねえって。もう賞味期限が切れている人間関係にしがみつこうとしている自分がみっともなくて嫌だった。それっきり地元には帰っていなかった。
ユキオはあまりに空虚なそのメールを無言で見つめた。自分の便利さを強調して安く売り込むなんて、まるでデリヘルのチラシだな。
あのころ『青春アミーゴ』はクラス中で流行っていた。ユキオも意識して、わざとイケメンと名高い同級生と絡んだりしたものだ。その方が女子にウケるから。女子が背格好の似た相手を友達に選ぶように、ユキオも外見のレベルが同じくらいの奴と意図的につるんだ。クラス替えのたびに相方は入れ替わり、全員いまではほとんど音信不通だけど。
今井さんは突然、思い出したように言った。
「小学校のときさぁ、将来もし誰かと結婚したら、自分の親とかきょうだいと、同じお墓に入れないって知ったとき、あたしとあんたと、あとひとみで」
今井さんは、みんなに囲まれながら花束を抱えて、幸せいっぱいの笑顔を浮かべている杉崎ひとみを指し、
「この三人でさぁ、抱き合ってうわああんって泣いたの。憶えてる?」
そうだ、そんなこともあった。
まだほんの十歳ばかりのとき、宇宙が怖いとか、死ぬのが怖いと戦慄するブームの次に、それはやって来た。お父さんとお母さんと一緒のお墓に、自分だけ入れない。それを知ったときのあの、心と体が真っ二つに引き裂かれるような感覚。春子はその記憶を思い出した瞬間、またあのときみたいに、三人で抱き合って、びいびい泣きたい気持ちになった。こんなふうにひとみの結婚式の二次会に、他人行儀な顔で突っ立ってるんじゃなくて、おめでとうの代わりに抱き合って思いきり泣きたいと思った。女の子特有の、ヒステリックな感情の昂りをダダ漏れにさせて。
洋服にかける情熱は年々薄まっていき、最近はユニクロとしまむらでクローゼットの大半がまかなわれるようになったものの、可愛い系OLの通勤ファッション着回し一ヶ月分を眺めると、抵抗感でいっぱいになった。こんな女になりたくない。これはわたしじゃない。
この違和感はなんだと思いながら、春子は雑誌をパタリと閉じて、平積みのいちばん上にそっと戻した。普通のOLになるのってほんと難しいんだな。でも、難しいだけで、決して楽しくはない。なんでこんなに楽しくないんだろう。
でもそれじゃあ、自分は一体、なにになりたかったんだろう。どういう大人になりたいと思っていたんだろう。
愛菜はあの旗に使われていた行方不明の女の子たちが、本当はみんな、ムカつく現実から逃げただけで、誰に殺されたわけでもなく、変質者に監禁されているわけでもなく、みんなどこかで元気に楽しく、へらへら笑いながら生きていることを祈った。
祈り、そして確信する。
そうでなくちゃ。
絶対にそうでなくちゃ。
だってそうでなきゃ、悲しすぎるでしょ?
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地方都市の悲哀を感じる。世界が狭すぎて、恋愛と言っていいのかどうかわからない人との関係。その人に頼りたい訳でもないのにその人しかいない。狭すぎる。ある時自分でもその狭さに驚き、絶望し、ここからもう逃げてしまいたい、いなくなりたいと思う。
バラバラとした話の中で、アズミ・ハルコはふわっと現れて、特段深刻な、暗い影を負わず、知らない間に話と話をつないでいる。
最後にはすこしだけ、女性の強さとしぶとさが光り、希望が見える。
この作家はそういう終わりが好きなのかな。
Posted by ブクログ
偶然見かけた行方不明者「アズミハルコ」のグラフィティを中心に、地方に住む"必要とされたい"人たちそれぞれを描いた話。
愛菜たちと春子たちの2つのパートがあったが、年齢が近いこともあり、私は春子の気持ちにとても共感した。
曽我氏との、あったかなかったかわからないような関係性が切れた時の無力感、そして無力感から来る喪失感。社会人になると、学生ほど良くも悪くも距離が近くなりづらい。普段はさほど気にならないが、ふとした拍子にすごく大きなダメージを与える。そんな普段言いえない気持ちがとても明確に描かれていたように思う。
愛菜と春子は全然違う性格だが、言葉を選ばずにいえば男に必要とされたいという点で共通していて、最終的に今井さんも含め女性たちで力強く生きていく描写が良かった。
また、最後の愛菜のセリフ「行方不明の女の子たちが、辛い目にあっているのではなく、ムカつく現実から逃げて、ヘラヘラ楽しく生きていることを祈った」というのが前向きな結びとなっていて、作者からのエールというか、この作品の核のメッセージじゃないかなと思った。
山内マリコさんの作品はこれで二作目だが、具体的な名称(「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」など)の使用、特に繊細な女性の心理描写、いわゆる"地方"に生きる人達の描写がすごくリアリティがあり、ページをめくる手が止まらなかった。
Posted by ブクログ
曽我氏みたいな自分が傷つかないポジション取りをして会話する人いるよね…
春子がそれに屈しなかったときはスカッとしたけど、春子は恋人がいるというカードを手に入れるために曽我氏とデートするようになってしまうし、きっとそんなことも見透かされていて春子の方が立場が下。
最後のシスターフッド的な展開は、いや現実だとそんなうまくいくかなあとも思ったけど、それでも山内マリコさんは徹底的にわたしたちの味方なんだと思えて嬉しい。
少女ギャング団も可愛かったな。女子高生ってだけで楽しかったよね。普段は喋らないタイプの子ともなんでか一緒に遊ぶみたいなイベントがときどき発生して、普段は喋らないのに、なぜかそういうときは一致団結できちゃって、そういうことがまた楽しかったんだよなあ。
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ジャンプとマガジンとpspで育った人間が、決して逃れられないセンスのようなものが、いつのまにか自分の中に染み付いて、呪いのようにそこから出られない。
春子の話なんて誰も聞かない。春子が言わないから。
小さな毒を摂取してやりたくなったのだ。
あの日々は何だったんだろう。
あの人は誰だったんだろう。
似たり寄ったりな方向性のまちづくりや村おこしによって再び画一化されていく皮肉な展開
どの女の子も居場所がなくて寂しがって、どうしようもなくなってたけど、最後に女同士でつよく手を握り合ってた。
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アズミ・ハルコの表情は、昨日の夜と打って変わって、全然寂しそうじゃなかった。それどころかむしろ、キリッとして力強い、ちょっと生意気そうな顔に見えた。嫌なことを言われたら『うるせー』って言い返せる、タフな女の子に見えた。
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これは、最後の3人の晴れやかな心なんだろう。
山内さんの小説は、気怠い感じが漂うけど、一変して最後は清々しくなるものが多い。
テンプレートとして、弱者にされがちな女子を、全然そんなんじゃなくていいと引っ張りあげてくれるようだ。
男性が幼く描かれているのも、特徴なのかなぁ。
Posted by ブクログ
山内マリコさんなので購入。今まではそんな印象なかったけど、舞城王太郎ぽさを感じた。福井と富山、北陸という共通点のせいもあるかも。あと文体と展開の非現実感。
すごく感銘を受けたとか、展開がどうとか、そういう感想はあまりないけど、好き。文章を読んでて楽しい。
女の子をエンカレッジしてくれるというか、女の子が強い。
山内マリコさんの作品、残りは単行本。買おうかどうしようか。
Posted by ブクログ
さらさらっと読めた。女の強さやしたたかさ、特に集団になって団結した女のこわさ、強さをうまく描いていて、共感する部分もたくさんありました。ただ、少女ギャング団のくだりに関しては、?な部分も多かったかなー。田舎ならではの感じを描くのが相変わらずすごく上手だなぁと思いながら読んでました。映画きになる!
Posted by ブクログ
裏表紙の『現代女性の心を勇気づける快作』という言葉に惹かれて読んだのですが、辿りついた先は「女同士で頑張っていこうよ」的な締めだったので、今の私にはちょっと危険な思想。
明るいラストだったものの、そこに辿り着くまでの春子と愛菜のぐだぐだっぷりは辛かった。ここ最近比較的純粋な恋愛小説ばかり読んでいたので何となく自分もそれに引っ張られてふわふわしていたところにガツンと現実を突きつけられた気がした。
うん、しっかりしよう。
Posted by ブクログ
白黒の表紙とはうって変わって色彩の強いラストでした。
ここは退屈~のが好きかな。
この人の地方のさびれた感じ、生々しくてぎくっとするな。
愛菜たちから見れば、私は地元にしがみついてるくだらない人間なのかもしれないけれど、26になった今だからこそこの環境に抵抗なくしっくりなじんでいる。
もう昔みたいなぎらぎらした自分はいない。
それが大人になることなのかは解らないけれど、愛菜たちのようにフラストレーションを溜め、ぎらぎらしていた時も確かにあった。
ああ、大人になれたのかなあ、わたし。
Posted by ブクログ
展開が映画だった。映画化することを知ってるせいでそう感じるのかも知らないけど、アズハルは蒼井優でぴったりだった。
ちょうど今ナオコーラのと同時に読んでるけど、具体的の度合いはけっこうどっちもすごいのにリアリティは山内マリコのほうが100倍すごかった。
テンポよくて、読むのに1時間かからなかった。