あらすじ
数々のベンチャーを世界的企業に育成したシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストが、日本を舞台に未来を語る。アメリカ発の金融危機は、市場万能・株主至上の金融資本主義の欠陥を露呈した。2003年時点ですでにこの事態を予見していた著者は、格差も恐慌も打ち破る究極の解決策を提言する。「ストックオプションは即刻禁止せよ」「エネルギーと食糧は自由競争だけに任せるな」「5年以上株式を保有する人だけの市場をつくれ」「投資減税で新技術開発への資金を促せ」「コンピュータに代わる新たなテクノロジーを生み出せ」。マネーゲームに明け暮れるファンドの横暴を止め、終焉が近いパソコンに代わる新しい基幹産業の創生をめざす。バブル頼みの「幻の好景気」から、みんなが恩恵を受ける「本物の好景気」へ。日本こそが、この新しい資本主義の担い手となれる!処女作『21世紀の国富論』(平凡社)で一躍、時の人となった著者の第二作。
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シラフで電車乗り過ごした恐るべき本です
((((;゚Д゚)))))))
冗談はさておき来週著者の講演会に参加してきます。
参加前に読めてよかったです。
とても共感できる本でした。
一節を挙げるとすれば
「会社の持つ技術を使って世の中に貢献し、その結果として利益も上がる。
利益が上がるから、また貢献できる。」
まさにここに日本型の資本主義の真髄があると思います。
大きなことをするために内部留保を上げてるのに先人の積み上げを今の株主で食い潰そうとするハゲタカファンドは個人的に受け入れられません。
Posted by ブクログ
良書だ。本書のマインドにとても共感。こうなりたいと強く思う。
著者の原丈二氏は、日本人ベンチャーキャピタリストのパイオニア。「21世紀の国富論」を読んでたので、同じ著者の本を見つけて購入。
感想。今現在、万人うけしてはいないが、こうなりたい、こう生きたいと強く思う。
備忘録。
・ヘッジファンドを代表とするアクティビストの配当要求は、過去の利益の蓄積を搾取する行為だ。株価至上主義がこれを助長。
・金融工学の理論は、完全競争とか、経済学の前提を設定したうえで成り立っている。絶対的判断を与えてくれるものではない。
・コア技術→産業の源泉。できた当初にはそれを何に応用したらいいいかわからないような。exエンジン
・アプリケーションン技術→コア技術を具現化したもの。ex自動車、トラック、船、飛行機
・テクノロジーサービス→アプリケーションを使った産業。ex運送業、流通業
・エンベデッド→コア技術を具現化する技術
・bracNet→@バングラディッシュ。NGOと事業会社の合弁で、利益のNGO持分は非課税
・公益資本主義→事業を通じてステイクホルダーに貢献することが価値として認められる資本主義。(株価至上主義とは異なる)
「あとがき」がいい。ぐっとくる。
Posted by ブクログ
欧米型市場万能主義へのアンチテーゼ
著者はタイトルにある「新しい資本主義」のモデルを実現実行しているベンチャーキャピタルの最前線を行く人物である
「端的にいおう。「幸せ」を数式で表すことができるだろうか 。」
【第一章 金融資本主義の何が間違っていたのか】
から始まり
「私が経営するXVD社の技術者は,途上国で遠隔医療や遠隔教育に役立ち、自分のつくった技術で貧困を撲滅できることを誇りをもっている。」
【第五章 公益資本主義の経営へ】
・・・まで読み進んでもしかしたら忘れかけていた本来の価値観を取り戻すかもしれない
裕福な人が行う寄付も否定しないが採算のとれる援助活動・・・それをビジネスとして成立させるホンモノのベンチャーキャピタル
そこには日本の目指すべき道が見えてくる
それは新興国の熾烈なシェアを勝ち取る競争ではなく
途上国援助の画期的実践、まるで「ブルーオーシャン戦略」そのものである
世界中の先進国が目先の得を追い求めるのならば
日本は目先が損に見えても長期的視線では得と徳を手に入れれば良いのではないだろうか?
こんな価値観もしかしたら日本人だけかもしれないし金融資本主義の現在に残る奇跡なのかもしれない
Posted by ブクログ
■産業をつぶすIRRとROE
アメリカ発の金融危機は、本来は脇役の金融が拡大しすぎた
まず産業ありでなければならない
・IRR(内部投資収益率)
投資に対してどれだけのリターンがあるか
この指標ばかりに捉われると、研究開発に多額を投じてリスクを取るよりも
短期間で儲かる仕事ばかりに注力してしまう
・ROE(株主資本利益率)
株主の投資に対して、どれだけのリターンをあげたか
経営陣は短期間で株価を上げることを意識しすぎてしまう
ストックオプションもあって在任中だけの株価上昇をめざしてしまう
研究開発から利益を生んでROEを上げるには7~10年はかかるが、
平均在任期間が5年程度のCEOは資産圧縮など
財務諸表をスリム化して目先のROEを上げ、株価上昇に結び付けようとする
金融、株価のみがクローズアップされ、産業自体が衰退してしまう
■ファンドを規制せよ
村上ファンドのようなアクティビストファンド(もの言う株主)の行為が
原理自体は正しいと日本で考えられているが、それは誤り
内部留保の金額を配当に回せと言うが、内部留保はこれまでの経緯でたまったもの
(内部留保を蓄えるべきだと過去に判断された結果である)
ある時点の株主のみに配当するのは正しくない
・過去の株主にさかのぼって配当金を配分する
配当金を取ることを目的とするファンドの取り分を減らす
・株主権を行使できるのは5年以上株式を保有しているものだけとする
会社経営は中長期的視点に立つべきで、
その方向性を支える株主だけを株主とする
・中長期の資本市場を作る
欧米における資本市場は短期資金の利益を最大化するためのマーケット
中長期を視野に入れたマーケットメカニズムを日本は作るべき
■コア技術を開発せよ
IT産業のコア技術はTCP/IP、これによって単なる計算機が
ネットワークを構築し、コミュニケーションが可能になった
次の時代を担う新技術に投資することで、次の時代の中心となるべき
IT産業ではシリコンバレーによるイノベーションが原動力となった
・ベンチャーキャピタル
テクノロジーリスク:本当に技術が実現するのか
マーケットリスク:本当に売れるのか
この両方のリスク引き受け、可能性のある開発者の夢を
資金と経営で実現する
・アメリカが次の時代の中心になることはない
アメリカはイノベーションのスピリットを失ってしまった
①ベンチャーキャピタルの気風が崩れてしまった
シリコンバレーの成功で膨大なファンドが流れ込んでしまい、
リスクを取って新産業を育てる志が希薄になった
リターンだけに関心を持つファンドマネージャーや経営コンサルタントが
資金運用の主体になってしまった
90年代の資金は4000億円/年だったが、2000年に10兆円を越えた
「会社は株主のものだ」という短期思考が幅を利かせてきたため、
株価の時価総額を上げることが重視されるようになった
②時価会計、減損会計
この会計基準はファンド投資家からは保有株価がわかりやすいが、
ベンチャー企業には不利益が大きい
ベンチャーへの投資が損失計上され、株価が下がってしまう
③アメリカ移民の歴史が変わった
アメリカの発展は、アイデアとやる気、
ハングリー精神のある大量の移民がなしとげてきたが、
9.11以降は外国からの移民に大きな規制を敷くようになった
④コンピュータ産業の成功体験で自縄自縛に
マイクロソフトはOSを新しくすることで設けようとしている
今後のポストコンピュータの産業を妨害する動きがある
実際にかつてGMは公共交通機関を買い占めて市電を廃止してしまった
■ポストコンピュータの時代
万能と思われるコンピュータには「解けない問題」がある
コンピュータは「構造化」されたデータを扱うのは得意だが、
「半構造」「非構造」のデータを扱うことは苦手である
「構造化」されたデータはその属性がほぼ固定化されている
名前、勤務先、電話番号・・・
リレーショナルデータベースの考え方
・IFX(インデックス・ファブリック)
独自のツリー構造でインデックスを構成し、
「半構造」データを効率よく柔軟に扱う考え方
自動的に属性をどんどん加えることができ、
さまざまな項目を自由に足したり引いたりできる
きわめて柔軟なデータベースを作ることが可能になる
デジタルは素晴らしい点も多いが、いずれ限界に行き着くと思われる
どんなスーパーコンピュータよりも人間のほうがはるかに優れている
効率のよい「アナログ制御」が見直される時代が来る
・PUC(パーベイシブ・ユビキタス・コミュニケーション)
著者が考えたコンセプト、「使っていることを感じさせず(ペーベイシブ)、
どこにでもあり(ユビキタス)、コミュニケーション機能」
①「相互通信機能」に特化したDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)チップ
②組み込み型のソフトウェア
③ネットワークセキュリティ
④ピアツーピア型コミュニケーション用のIFX理論に基づくデータベース
⑤ソフトスイッチ機能(中継用電話交換機の機能をIP網とソフトウェア処理で代替)
⑥動画処理リアルタイムデータ圧縮技術:XVD
XVDなら通常電話回線でも高画質な映像を送れる
・実業立国日本へ
アメリカは付加価値の高いソフトウェアを手元に残し、
付加価値の低いハードウェアをアジアに譲ることにした
これからはエンデベット(組み込み)技術が必要になる見込みが高い
それに対応できるのは日本
中国もインドも統計上は人口が増え、富裕層が増えてきているが、
金持ちはほんの一握りで、貧民層の増え方の方が著しい
日本は自分の優位性を高める努力を重ねるべき
■途上国援助の画期的実践
・バングラディシュで教育・医療貢献
デフタ・グループと現地NGOであるBRACが組んで
ワイヤレス・ブロードバンドインターネット会社を設立
ふたつの「しかけ」
①利益の40%を教育・医療貢献に使えるしくみ
通常の会社では、税引き前利益から税金、配当金を分配し、
内部留保に残るものはわずかで、社会貢献になかなか回せない
BRACはNGOのため寄付金控除などの税制上の優遇を受けられる
bracNETの配当金はBRACへ還元し、非課税扱いで社会貢献に回せる
②新しい技術で投資金額を劇的に安くする
XVDの動画リアルタイム圧縮技術を使い、インフラ投資金額を軽減できる
会社のもつ技術を使って世の中に貢献し、その結果利益も上がる
利益を上げることでまた貢献できる
・スピルリナ・プロジェクト
世界で深刻な「飢餓」の問題
スピルリナは長さ0.5ミリほどの微細な藻
35億年前から環境を生き抜いてきた生命力があり、
高たんぱく、高ビタミン、高ミネラルである
たんぱく質眼中量
牛肉20%、大豆35%、スピルリナ65%
生産性も極めて高く、悪条件でも育成が可能
理想的なたんぱく源となる
ボツワナ、ザンビア、モザンビークで開始する
・マイクロ・クレジット
貧困層に対して、貧困から抜け出す少額資金を無担保で貸し出す仕組み
BRACでの返済率は99%
返済を助け合う数人のグループを結成した人だけに融資する方式で
返済率を上げている
■公益資本主義
著者の提唱する資本主義の考え方
「会社の事業を通じて、関係する経営者、従業員、仕入先、顧客、株主、
地域社会、環境、地球全体に貢献すること」が価値として認めれる資本主義
日本では当たり前の考え方だが、世界では金融至上主義の考えに近年蝕まれてきた
市場は「自由」であればいいというものではない
冷戦時代が終わり、資本主義の理論ばかりが暴走し、
株主至上主義に走ってしまった
発展途上国は資本主義の枠組みに加わることで、さらに貧しくなってしまう
Posted by ブクログ
未来を作るには、大きな事を成し遂げるには、どうしたらいいのか?計画を立て、段階を踏んで実現可能なことをひとつひとつ行っていく。それで、びっくりするような、国だったり、社会が長期にわたって、生存していくために大きな助けになることを実現させる。すでにあるシステムや制度を壊すのではなく、それを活かし、うまく利用して、破壊を最小限にするやり方がまたすばらしい。
Posted by ブクログ
著者の非常に熱い思い、日本への誇り、大きなビジョンが込められた本。支えになるような素晴らしい本だった。
中長期投資のみを対照とした資本市場の話、おもしろかった。
IFXというデジタルによる計算技術の次のコア技術の話。
非常に熱い思いがつまっており、心地よかった。
章構成
第一章 金融資本主義の何が間違っていたのか
第二章 大減税で繁栄する日本
第三章 コンピュータはもはや足枷
第四章 途上国援助の画期的実践
第五章 公益資本主義の経営へ
第一章
株主権を行使できるのは、五年以上株式を保有しているものだけとし、それ以外の短期は配当金およびキャピタルゲインを得るだけとする規定の提案。中長期の企業の方向性を支える株主だけを株主と定義する。
歳入を増やすには、金の卵を産むガチョウを生み出しておかなければならない。経済はその時々の基幹産業が新たな価値を創造して富を生み、雇用を促進し、生活を豊かにする。クリントン政権は8年間で名目GDP6兆6千億ドルから9兆8千億ドルへ財政収支も2900億の赤字から2300億の黒字に転じた。要因はIT産業であった。
リスクキャピタル制度 リスクキャピタルに該当の投資をしたら、有価証券ではなく、強制減損して、損金でその年の利益と相殺できるようにする。そうすれば本業が儲かっていて利益があがっているときに投資をすれば節税につながるため。事業会社は将来事業に役立つ分野を見つけ、新技術に投資するようになるはず。ただ税金を払うより夢があるはず。
デジタルはすべてを分解し制御する。だが、それは無駄が多い。将来、デジタルではどうしようもない、デジタルの延長線上ではできないと結論づける時代がくるはず。アナログが見直されるはず。
アメリカはハードウェアをアジアに渡しており、ソフトウェアで儲ける仕組みをつくっている。しかし、組み込みが必要とされた時代には痛い目にあう。ハードウェアとソフトウェアを自らの手でつくりあげ、統合して高度な知的財産を築きあげられるインフラ基盤があり、トップに躍り出るのは日本である。寺子屋により昔から教育は進んでおり、識字率も高く、ものづくりに誇りを持っている。中国やインドが発展しているが、富裕層はほんの一部であり、それ以上に貧困層が急激に増えている。格差はますます開いていくはず。そこにお互いに知恵を出し合う現場はできるのだろうか。日本はそのような国に対処するより、もっている優位性を高める努力をする方が有益である。
コア技術をもとにシステムを作り上げ、そのシステムで稼ぐ。これは利益が還流される。技術の議論なくして、高いサービスは成り立たない。
いつまでも欧米のビジネスモデルや新技術の尻馬に乗るのではなく、より強い力で新しいビジネスモデルを生み出し、世界へ流れる仕組みをつくり、一代基幹産業へ育てあげること。それが肝要。実業立国である。
ザンビア駐日大使は公益資本主義こそアフリカの歩む道であると強調。日本人は先人たちの歩みが大きな叡智を与えてくれている。市場万能主義を突き詰めたあげく、今も市場は破たんの危機にひんしている。公益を考える資本主義に誘導されるべき。
太陽電池費用を税額控除できるとか、生活に必要な農産物を一定の価格で供給することにするとかしていくべき(質で自然淘汰が起こる。)国民の安心安全な生活のため、必要最低限のエネルギーと食糧の二つについては自由競争のマーケットに任せておくべきではない。
公益資本主義の指標として「公平性」「持続性」「改良改善性」。
社員がモチベーション高くしるために公平成が必要であり、長期的に発展していくために目先だけを考えない自足性が必要であり、柔軟性を失うと、変化ができなくなり、衰える。
まずじぶんにできることをやっていくのが重要。一足とびの空想にふけっても何もことは始まらない。希望を掲げて、目の前の会談を一歩一歩上がることにより理想は実現する。
日本は長い歴史の中で独自の倫理と資本主義の精神を培い、高い技術力をみがき、ものづくりを中心に実業をコツコツを積み上げてきた。みずからの持ち場でゆめを描いて努力を積み重ねれば必ず大きな成果が生まれるはず。
目的は必要な金額よりちょっと少ないくらいのお金をもっているときにこそかなえられるもの。ありすぎたら目的は絶対にかなわない。残り物には服があるという言葉があるが、これはアングロサクソンにはない。自分でコツコツ経験したことは必ず一生のうちで無駄にはならない。基本的な姿勢を忘れないこと。
Posted by ブクログ
ポスト資本主義としての公益資本主義についての話。金融資本主義がいかにあやうい制度であるか、そして今後の社会制度というのはどのようなものであるべきかという考察と提案。実際に事業を行っている人間の話なので単なる絵空事ではない。
経済学の本ではなく、日本の将来のビジョンを示すという意味でビジョナリー的な本である。
おそらく似た様なコンセプトの本の中では新しさそして実現した時の日本の存在価値の絶対量では群を抜いた考え方ではないだろうかと思う。
具体的な内容については本を直接読んでいただく方がよいだろう。
「会社はだれのためのものか」という疑問に一つの答えを与えてくれる本である。
Posted by ブクログ
8年ほど前に書かれた本だが、内容はそれほど古くなく、今読んでも正しいと思えることが多い。金融工学はダメ、現在のコンピュータアーキテクチャはダメ、まさしくその通り。RDBは(今でいうところのIoTに)そぐわないので、半構造データを柔軟に扱う技術が必要と、嬉しいことも書いてくれている。ただ、この本で触れられているIFX(インデクス・ファブリック)技術よりは、うちでやっている技術の方が原理的に(おそらく実装としても)優れているんだけど、世の中に出ることなく消えていくんだろうな…。
Posted by ブクログ
014
非常に面白い本だった。「ベンチャーキャピタリストとは未来を予測する仕事である」と昔言われたことがあるが、原氏の本を読んでいると本当に「未来を予測する能力」に長けていると思う。
特に「基幹産業をみつける」という件はまさに目から鱗。時代はITなどではなく、むしろITは人間の可能性を広げる類のものではなく、むしろコンピューターに思考を依存させてしまうことで、思考の自由が制限されてしまうということ。そんなこと考えもしなかったよ。
あと「途上国だからこそ、インフラが整っていないからこそイノベーティブな変革を」というくだりもやはり素晴らしい意見だと思う。実際にはサプライヤーが海外にいたりして、なかなか難しいんだけどね。
Posted by ブクログ
エンゼル投資家として名高い原丈人さんによる、日本経済の未来。グローバリズム批判と日本のポテンシャル強調はともするとお花畑な理想論の典型なのだが、この人が話すと説得力がある。マネーゲームの時代に決別し、真っ当なモノ作りとサービスの国として新しい資本主義を世界に問いかける。
Posted by ブクログ
21世紀の国富論も読んだことがあり、今思えば、金融危機以前にアメリカ型の資本主義に対する危惧を明解に提示していた。
この本は、さらにわかりやすく、また日本人を力づける内容である。
金融資本主義、株主至上主義の誤り、欠陥の理由を指摘するだけでなく、この本には「公益資本主義」という概念で解決策が述べられている。
また、その中で日本の持つ強み、可能性が力強く展開されている。
「公益資本主義」=「会社の事業を通じて、公益に貢献すること」。
つまり、「会社の事業を通じて、会社が関係する経営者、従業員、仕入先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献すること」
これは、まさしく日本の江戸時代の近江商人の三方良しの考え方そのものである。
経営者と一般社員の平均年収の差が400倍。(1990年には100倍程度でこの10年ちょっとの間に急速に格差拡大。)
2007年のヘッジファンドマネージャー上位10人の個人所得の合計は、日本円で1.74兆円で、トヨタ自動車の2007年度当期純利益1.71兆円を上回る数字。
そんなアメリカの歪んだ現状。
対して、日本は長い歴史の中で、
・新しい技術による新しい基幹産業の創出(ポストコンピュータ産業)
・民間の力による顔の見える途上国支援
・新しい公益資本主義
すべてにおいて、資質を持ち、実現可能性に満ちている。
来るべき次代で、日本こそがリーダーシップを発揮するにふさわしい、と大いなる希望を感じさせてくれる。
著者は、公益資本主義の有効性を訴えていくために、今後、必要な要素を明確に打ち出し、指標化し、「数式化」し、理論を構築するという。
この「公益資本主義」が、多くの者に対して説得力をもち、当たり前のものとなることを大いに期待したい。
Posted by ブクログ
今、世界を席巻している、金融資本主義というものに対して、
その悪いところを指摘し、ポスト資本主義として公益資本主義というものを
示唆することを主軸とした本でした。
お金がお金を産む資本主義、金融工学の進歩によってそうなった資本主義の在りように
異を唱えてその論拠を次々と述べていくさまは胸がすかっとするし、
もともと自分はそういう話を待望していたのだということに改めて気付かされました。
著者の原丈人さんについては糸井重里さん主宰の「ほぼ日」に登場されたときに知りました。
その糸井さんとの対談を読んで、なんてスケールが大きくて素晴らしい人なんだと、
そんときも胸がすくような痛快な思いがして、それが忘れられずに今回この本を買って読んだのです。
読んで、勇気とやる気が湧いてくるのは、
彼が説く論説のどれもが、世の中の「なんか変じゃないかな」というベールを剥いでくれるものだからです。
そこまで、「ほんとうのこと」に迫ったならば、あとは個々人が頑張ればいいのです。
世の中、このままの資本主義では、ヘッジファンドのみならず、すべての人がハゲタカに
なりさがってしまいます。そうはならない、新しい資本主義のヴィジョンをみんなが持って、
世の中に貢献することで利益を得て、その利益でまた世の中に貢献するというスタイルを
浸透させていくことが大事なんだと、当たり前のようなことですが、
その当たり前の心理に戻してくれるのです。
もしかすると、そういった心理さえ、当たり前じゃなくなった人たちというのが、
金融資本主義にどっぷりつかった人の中にはいるかもしれないです。
でも、それはおかしいということです。
経営者と一般労働者の間の所得格差が大きすぎることなどを考えても、そのおかしさは
伝わりますよね。
元気もやる気も出て、知識も増えて考える力の源にもなる本です。
お金の流れ、世の中の企業のありかたや自分の働く会社のありかたに違和感を感じるかたは、
この本を読んで自分の視点がクリアになるのを感じるでしょう。
Posted by ブクログ
かつて基幹産業といえば繊維産業である。それが鉄鋼になり、現在はコンピューター産業がこれに取って代わっている。交代のサイクルは概ね40年。成熟期に入ってくると産業の伸びが落ち、景気も悪くなるため、金融を緩和することから、新しい基幹産業に移行する端境期にはこれまで金融の過剰流動性が発生してきた。また、経済指標に使われているGDP等経済統計は、ファンドの活動や超過過剰流動性が世に広まる前の定義で市場を測っているため、大きく膨れ上がる過剰流動性によって、数値が実態の景気以上に高くなるという統計との乖離状況が起きている。本物の好景気にするためには、過剰流動性をつくるのではなく、新しい基幹産業を育成する方向に資金を回すことである。バブル的な投資ではなく実業にお金が入っていくようなメカニズムである。ポスト金融資本主義としての新秩序の構築は喫緊の課題だ。アメリカではIT産業が新たな基幹産業となり経済規模を拡大し財政黒字に転じたが、アメリカではもはやコア技術を開発することが困難となっている。リターンだけに関心を持つファンドマネージャーや経営コンサルタントが資金運用の主体となってしまっているからである。ポストコンピューターの基幹産業を創出していくためには、安心して投資できるリスクキャピタル制度をつくることが鍵となる。新しいコア技術を開発し新しい基幹産業をつくりあげていく取り組みに対して投資支援を行うとか、リスクキャピタルに該当する投資を行った場合は損金参入できるようにするという制度である。次の時代のコア技術のほとんどは知的財産であり、高度な知的財産をハードウェアとして実現できるだけのインフラ基盤があるのは日本のみである。著者は、法律、規制、倫理観など、個人の自由を守り経済の活力を高めながら資本主義と公益を両立させる新しい資本主義、公益資本主義を提唱している。会社の事業を通じて地域社会、環境、人、雇用、株主、地球全体に貢献することこそが価値として認められる資本主義である。昨今、アメリカ資本主義が金科玉条となり、金融で儲けるのが賢いあり方の風潮を生み、産業資本主義は低くみられるようになってしまった。しかし、アメリカ発の金融危機は産業の中心になりえない金融業が我が物顔でバブルによって拡大したがために必然的に崩れが起きたことを忘れてはならない。あくまでも主役は企業家であって金融は縁の下の力持ちにすぎないのである。日本には、日本の先達経営者たちがつくりあげてきた経営理念、企業哲学の中に脈々といき続けている。バブル頼みの幻の景気から、皆が恩恵を受ける本物の好景気へ導くことができるのは日本のみと信じる。是非、新しい資本主義の担い手として世界をリードしてもらいたい。
Posted by ブクログ
「ビジョン本」。
考えうる世界の A big picture を描いている方だと思う。
批判するのであれば、
・根拠が薄い部分がある(緻密な議論や立証がなされているかといえば疑問符かもしれない)
・現実味に欠ける
・そんなこと言われたって明日の支払いが・・・
そうは言っても
「飛行機が発明される前、誰が飛行機の存在なんて予見しただろうか?」
その理屈で吹き飛ばされてしまう。
眉に唾をつけつつも、信じたくなるような。だから、ビジョン本。「七つの習慣」のような自己啓発書との違いは、視点が社会全体の未来に向いているところだと思います。
Posted by ブクログ
公益資本主義。いいことだと思います。かつての日本は渋沢栄一等、このような考え方をする方が多かったのではないでしょうか?(イメージで書いております。)著者のそのような気持ちだけではなく、ご自分で今後の先端技術を模索されていること。拝金主義のきらいのある金融業界を啓蒙しようとしている姿勢に心うたれました。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
アメリカ発の金融危機は、市場万能・株主至上の金融資本主義の欠陥を露呈した。
二〇〇三年時点ですでにこの事態を予見していた著者は、格差も恐慌も打ち破る究極の解決策を提言する。
「ストックオプションは禁止せよ」「五年以上の株主だけの市場をつくれ」「投資減税で新技術開発を促せ」。
マネーゲームに明け暮れるファンドの横暴を止め、終焉が近いパソコンに代わる新しい基幹産業の創成をめざす。
バブル頼みの「幻の好景気」から、みんなが恩恵を受ける「本物の好景気」へ。
日本こそこの新しい資本主義の担い手となれ。
[ 目次 ]
第1章 金融資本主義の何が間違っていたのか-幸せは「数式」では表せない(金融資本主義の崩壊は必然だった ファンドを規制する具体的な方法 あの「幻のような好景気」の理由)
第2章 「大減税」で繁栄する日本-次なる基幹産業の覇者となる方策(「金の卵を産むガチョウ」を生み出せ 「コア技術」を開発できる理由 「投資減税」で夢ある日本を)
第3章 コンピュータはもはや足枷-新ビジネスを生み出す画期的コア技術は何か(「解けない技術」を解く技術 コミュニケーションの大進化 「実業立国」日本が世界を制する)
第4章 途上国援助の画期的実践-日本人によるおもしろくて、採算も取れる活動を(最新テクノロジーで「貧困」に挑む 国連旗の下での民間による支援 マイクロクレジットを日本人の手で)
第5章 公益資本主義の経営へ-市場万能・株主至上の弊害を斬る(世の中への貢献こそが価値 すべての会社は「中小企業」になる)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
お金は、世の中に価値あるものを生み出してこそ得られるもの。
しかし、近年はマネーゲームでお金を稼ぐことがもてはやされている。なにか違うんじゃない?と漠然と感じていた。とんでもない額を手にする人がいる一方で、餓死している人が毎秒いるなんて世界、おかしい。本当に資本主義がベストな理論だなんて思えない。
本書は、まさにその点を指摘しており、かつ具体的な打開策があげられています。著者自身の経験に裏付けされており、説得力あり。
貧困の問題にしても、環境の問題にしても、これから私たちが対処しなければならない問題は、地球上の”みんな”が取り組まなかったら解決できない。他人が負けても自分が勝てば良いというシステムは、時代にあわなくなっていく。
そういう意味では、和の心で自然にみんなの価値の最大化を目指すことができる日本的発想は、今後とても重要。
Posted by ブクログ
単なる金儲けのためのベンチャーキャピタリストではなく、
日本のみならず、世界の成長を意識した投資やシステム構築に力をそそぐ。
評論家が言葉だけで経済を語るような机上でできた本ではなく、
実際に行動し実現可能と思うことしかかかれていない本。
しかも実際に先頭をきって行動されている。
実現可能な夢が書かれていて、
あらゆる問題を解決できる説得力がある。
よって夢が鮮明。
多くの人が国富論とともに読むべき本。
Posted by ブクログ
産業を潰したIRRとROE。
アクティビストが内部留保を狙う。アクティビストの弊害。
中長期の資本市場が必要。
コア技術の必要性。
アメリカはコア技術の革新が困難。
ベンチャーキャピタルの気風が崩れた。時価会計、減損会計で長期投資ができない。9.11以降、移民のシャットアウトで優秀な頭脳が集まらない。
投資減税。
IFXという理論(データベース)。
強いものの論理に合わせて相手を無理やり改宗させようとする、のが欧米の論理。
バングラデッシュのデフタbracNETモデル。
スピルリナプロジェクト(タンパク質)
公益資本主義=会社は社会に貢献するもの。その尺度で評価する。
市場万能主義でいいか。
ストックオプションは毒。悠長な研究開発はやっていられない。
実は短期的なことより長期的に考えたほうが株主のためになる。これを指標化する。公平性、持続性、改良改善性。
エネルギーと食料は市場に任せないこと。
Posted by ブクログ
原さんの著書とということで読んでみたシリーズ2冊目。
タイトルにもなっている新しい資本主義とは
“新しい資本主義”=“公益資本主義”である。
最近の資本主義は株主至上主義、金融経済優先、市場経済推進であった。
それらは“人”の存在を忘れた幻であり、それらの暴走が今の社会、経済を混乱に導いているとした。
そんな中、白人社会にはない日本的な考え方や実業主義的側面が次の経済を作っていく可能性があるとしている。
んだけども・・・。
個人的には原さんの言いたいこと、取り組んでいることは素晴らしいと思うんだけど、今世界が、日本がそうなっているかというとなかなかそうは見えないのが本音のところで。
日本が新しい資本主義のお手本になることは難しいと思う。最近では某大手家電メーカーの粉飾決算?問題やらなんやらと。
より数字が支配する経済になっているように感じます。
東日本大震災がその流れに人々の意識レベルでは少し歯止めをかけたとは思うけど。
それと基幹産業を作るべき!という提言に関しては賛成だが、だからといって、ネットサービスのような応用部分をdisるのはなんか違うと感じた。
Posted by ブクログ
金融危機を引き起こした金融資本主義から脱却し、社会に新しい価値やソリューションを提供し、世界を変えるような事業に着目する公益資本主義を提唱する。
ただ、非常に崇高な理念だと思うが、著者が例として紹介したケースを読むと若干トーンダウン。結局は地道な草の根活動から始まり、劇的な変革とはいかないのだとも感じた。
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経済・技術・社会、の3つを組み合わせて持続的に社会問題の解決をしていくスキームを提案しています。この3つを意識してビジネスを考えるときに、頭のバランスを保つ一定のガイドになる本だと感じました。
経済の項では、株主価値最大化の問題点として、新しいアセット(たとえば新技術)は、短期的には株価に反映されないので育成が難しいことを挙げています。
技術のところは、例として新しいデータベース技術や画像圧縮の技術に触れています。すでに4年経っていて技術の位置づけが変化しているので、ここは考え方だけ受け取って、ささっと読み飛ばせばよいです。
社会のところは、途上国の飢餓と貧困を、地球規模の課題であるとして、それを解決するように経済の仕組みを変えて、新技術を積極的に適用していくことを提案しています。
上記3項のすべてを理解して実行するバックグラウンドを備える日本はこれからチャンスがあるという締め方になっています。
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この方が代表を勤めるNPOと関わる機会があったので手にとりました。
日本が持つ潜在力を使って世界の問題を解決する、という切り口に興味があったので、他の金融云々というところは飛ばし読み気味。
著者のアプローチは以下の通り。
・最新テクノロジー活用による貧困撲滅
・民間からのアプローチによる栄養失調改善
・マイクロクレジットによる生活向上
新書なのでさらっとしてます、もちょっとちゃんと読み物が読みたいひとは同じ著者の「国富論」をどうぞ。ほとんど内容は同じです。
個人的には国連の旗の下での民間による支援、スピルリナプロジェクトに興味あり。
テクリスクとマーケリスクを引き受けて、テクに価値を見出して世に送り出していくベンチャーキャピタル。ほんと考古学者みたい。
こういう代表の思いのたけが、実際に組織としてのアウトプットって形だとどう実現されるか興味あり。
【メモ】
ザンビアのPaViDIA「ザンビア孤立地域参加型村落開発計画」
WAFUNIF日本アジア機構(World Association of Former United Nations Intern and Fellow, Inc) (NGO of UN)
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仕事の関連で読みました。本能的には手を出さない分野。
マーケティングや経営についてMBA的知識はうっすら…
という程度ですが、ずっと感じていた少なからぬ違和感を、
振り払ってくれました。日本流だって良いじゃないの、と。
「旧くて新しい」とオビにある通りの印象を受けました。
著者の素晴らしさは、有言実行なところだと思います。
そして、圧倒して気落ちさせるのでなく、読んでいる者を
鼓舞して、「自分も何かできるかも」と考えさせるところ。
パワフル過ぎて、論理がやや断定的なのが玉に瑕ですが…。
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短期的な株主利益の最大化を目指す米国型市場経済システムでは、長期的な成長の源泉となる技術革新を生み出すことができない。
コア技術の創出に注力する必要がある。エンジンといった動力システムの開発がコア技術であり、自動車、船、飛行機の開発はアプリケーション技術に過ぎない。アプリケーション技術は常にプロダクトライフサイクルの問題に直面し、長期的な利益に必ずしもつながらない。現在はインターネットを中心とした産業構造となっているが、インターネット自体はコア技術ではない。インターネットショッピングやゲームなどで新たな市場を開拓する日本企業は多いが、プロダクトライフサイクルが成熟期に入れば成長は鈍化せざるを得ない。しかし、日本にはハードとソフトの融合を可能にする技術力がある点で、日本の底力を高く評価するのが、著者の主張である。気持ちとしては納得できるが、現実は厳しい。短期的な利益の最大化に走る米国が未だに技術革新の中心地であり、著者が期待するハードとソフトの融合(エンベディッド技術)は日本が最も弱い面ではないか。個々の技術は一流であり、アフターサービスの品質やきめ細かな対応など個々のソフト面のサービスも一流であるが、それらを総合化する能力が最大の弱点だと思われる。この部分をどうすれば強化できるのか、具体的かつ実践的な処方箋を提供することが急務なのではないか。
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話題の図書だったのでよんでみた。コンピュータが基幹産業の時代はもはや終息しつつある。新たな基幹産業の担い手として中心になっていくのは日本である。という話。その基幹産業の説明は難しくてよくわからなかったけど。サスティナビリティとマイクロファイナンスはこないだ別の本でちょっと触れたのでわかりやすかった。
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実産業の成長なく、行き過ぎたマネーゲームの結果として、リーマンショックは来たるべくしてきたものである。これからの日本は、新たなイノベーションを起こし、ソーシャルビジネスを含めて国際的な公益資本主義を立ち上げていこうではないか、という筆者の出張にはかなり同意できました。
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株式資本主義に異を唱える本。決してロジカルではなくて理想論なんだけど、なんとなくベンチャーキャピタリストの著者の熱い情熱が伝わってくる。バングラデシュにワイヤレスブロードバンドを、というプロジェクトには非常に共感!