あらすじ
コポリ、コポリ……「みずうみ」の水は月に一度溢れ、そして語りだす、遠く離れた風景や出来事を。『麦ふみクーツェ』『プラネタリウムのふたご』『ポーの話』の三部作を超えて著者が辿り着いた傑作長篇。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
いしいしんじ作品についてのおぼえがき
”みずうみ”をよんだあとは、水音が印象に残った。
水くみたちのみずうみから、タクシー運転手、分娩台まで全章にわたる水の気配。羊水ってどんな匂いなんだろ?としりたくなる。
ものごとはおこるだけ。みずのなかを漂っていくような。
”死産”というほんとのできごとをゆったりふくんで流れている物語がよかった。
実体験が入った小説はすきじゃないというひともいるけど、ただ受け入れるにはできすぎてて切なすぎる世界観だからこそ、人間臭さがあって安心できた。
いしいしんじ作品をよむと「湿度」や「気温」や「匂い」を感じる。
とくにみずの匂い。そしていつも羊水ってどんな匂いなのかなって知りたくなる。
ぬくい水の底から、水面にはいってくる日のひかりを眺めてるような。
大きな「ながれ」があって「ものごと」はおこるもの、という世界観が安心するような、でもこわいような。良いことも悪いこともなくて、ただ「ながれ」の中にいるだけ。
だからなにかうまくいかないとき、そんな雰囲気が親しくて、でも漂うにはこわくて、ちょっと反抗してみたくなる人間臭さが恋しくて、いしいしんじの本をよむ気がする。
麦ふみクーツェ、プラネタリウムのふたご、ポーの話、それから、みずうみ、ある一日、四とそれ以上の国と順々にもういちどたどりよみしたくなった。