あらすじ
稲盛和夫はじめ多くの経営者が傾倒する「江戸時代のドラッカー」に今こそ学べ!
「勤勉」「正直」「時間に正確」など、近代化と高度成長を支えた日本人の美徳と呼ばれるものは、江戸時代の思想家、石田梅岩によってつくられた。
日本は江戸時代の間に、相当の発展を遂げていた。その力の源は、名もなき庶民だった。町人や農民は、実に勤勉で、猛烈に働いていたのだ。
日本の民衆が、優れた労働者だったこと。これが、瞬く間に近代化できたことや、第二次大戦後、驚異的な速度で復興を遂げることのできた理由だ。指導者が、画期的な経済政策を思いついて、それによって経済力を向上させたのではない。優秀な労働者が、世界のどの国よりも多くいたことこそが、日本の経済的な強みだったのだ。
なぜ、日本という国は、そのような条件を備えることができたのだろうか。この疑問への一つの回答が、石門心学という思想にある。
石門心学は、京都の商人だった石田梅岩(1685~1744年)という人物が創始した学問だ。梅岩は、「人はどう生きるのが正しいのか」ということを、ひたすら考え抜いた。しかし、梅岩は人間のことだけを考察したのではなく、社会の構造や、さまざまな職業がどういった役割を果たしているのかについても、探求している。
元々は商人だっただけあり、梅岩は商業のこと、そして経済のことを、皮膚感覚で理解していた。そして、商人を引退し思想家となってからは、商業や経済を明確な言葉で説明することにも、大いに注力した。
梅岩の思想は、弟子たちによって日本中に広げられた。そして、さまざまな階級の人々が、これを熱心に学んだ。梅岩の思想は、毎日の仕事に大きな意味を付与してくれるものだったからだ。梅岩の考えを学んだ人々は、道徳的な向上を遂げ、感情と行為に自信を持ち、人間関係を和やかにすることに努めた。
そして、道徳的向上を遂げた人々の多くは、仕事の成果も、以前よりよいものとなった。真面目で、周りに気を使う民衆が、一国の経済発展に貢献し始めたのだった。
感情タグBEST3
解説が珠玉!
商売の本質に触れた本。
奥深いですね。
経営者が心に蓄積すべき内容だと思う。
石田梅安の考えを分かりやすく解説してくれた著者に感謝です。
Posted by ブクログ
良本。
人として大切なことを大切なことにすることが大事なんだなと実感。
経済、経営の本出るけど、数字や戦略のことが書いてあるのでなく、もっと根底にあるものが書かれていました。歴史から学ぶことは多い。
Posted by ブクログ
●石田梅岩について読んだ関連本は、この本で2冊目となることから、重複する部分もあり、『魂の商品 石田梅岩が語ったこと』よりは感動が薄れた感がある。但し、この本には、この本にしか書かれていない貴重な部分もあり、★4つとした。
●この本には、梅岩のもう一つの著書『斉家論』にも触れていることが特色である。
Posted by ブクログ
江戸時代の石田梅岩が提唱した石門心学からみる現代において見直すべき部分や筆者の考察について書かれた一冊。
梅岩の文献を引用したうえで商売や倹約の本質や助け合いの精神などがドラッカーやアダム・スミスとの比較を用いながら著者の考察とともに書かれていました。
社会という共同体で生きていくために利他の精神で仕事や商売に邁進することが自分の本性を正しく理解できる方法であることを本書全体を通じて感じました。
また、アダム・スミスの見えざる手に道徳感情論の議論が前提にあったことや士農工商の身分制度があった江戸において商の存在意義を提唱したことなど自分が知らない発見もありました。
また「形による心」や愛国心と市民性の話は非常に深いもので自分のなかで新たな視点を得ることができました。
梅岩の石門心学は個人の精神的な部分だけでなく、社会を形成していくうえでも現代に通用するものであると本書を読んで感じました。
戦後の日本経済が成長していくなかで失われたものが心学のなかにあるということも同時に感じました。
本書にある心学の教えを心にもって歩んでいくことがこの国の社会の進むべき道、あるべき姿に導いてくれるのではないかと感じた一冊でした。