あらすじ
昭和20年11月1日。南九州の沖は数千隻のアメリカ軍艦艇で埋まった。原爆製造の遅れた米国が、未曾有の規模で日本本土侵攻を開始したのだ!! 東京をめざし、怒涛のようになだれこむ米軍。首都防衛軍司令官・石原莞爾大将は、“秘策”を胸に迎え撃った……。 極秘資料を駆使し、一大スペクタクルで描く、“史上最大の決戦”!
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虚しさを通り越した何か
80年代に描かれた戦争シミュレーション。太平洋戦争を主題にしたこの手のシミュレーションは数多くあり、勝利も敗北も無数にあるが、今回はまさに本土決戦という現実にあと一歩で起こっていた最悪の「続き」をテーマにしている。
この小説の悲惨さは当時の帝国の国体、すなわちに命を懸けた尊皇意識のあまりの薄情さから来ている。作者は当時の帝国ナショナリズムをあえて真に迫るようなリアリティを持って描かない。集団心理による脅迫だったと解説しつつ、民間人が自決、ゲリラ戦を平然と展開し続け戦死していく様をアメリカ人視点で描いていく。
アメリカ側は日本に対して同情的すぎるきらいがあるが、これも日本人の狂信さの引き立てとなっているだろう。戦前を理解できないからこその虚無のイメージをこの作品は浮かばせる。
何一つ浮かばれない小説内だが、その中で昭和天皇の人格を立てる所は昭和の時代故か、それともこれだけは現実の日本で帝国が残したものと言えるのだろうか。虚しさだけが吹き荒れる後読感は辛いものだが一読の価値はあるだろう。