【感想・ネタバレ】アルファベット・ハウスのレビュー

あらすじ

ポケミス一九〇〇番記念作品。第二次大戦中、戦地で相棒と生き別れになった英国軍パイロットは、友の行方を探してドイツを再び訪れる。だがナチ残党の魔手が! 著作が全世界で一千万部突破! 「特捜部Q」作者による傑作小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 戦争に赴く若き兵士たちと、戦地での悪夢のような体験。戦争を挟んで、30年後出会った幼な馴染みは、地獄のような体験により狂気という犠牲を払って待っていた。

 ひどく簡単に本書の概要を記すとこうなるが、こうしてみると1970年代に劇場で観た強烈なベトナム映画『ディア・ハンター』を思い出す。主役のロバート・デ・ニーロとその周りを固める同郷の戦友たちの物語であって、ベトナムという地獄がもたらした人間性破壊の悲劇でもあった故に、若かった魂を心底揺すぶられた作品である。

 本書は、あのディア・ハンターが持つ細密で長大な描写に近いディテール力を持つ。映画『ディア・ハンター』は、徴兵前夜の若者たちの一日を執拗なまでに描き、それに代わる唐突な戦場の描写は中盤にエピソードのように挟まり、しかし強いインパクトを観客に与える。映画は、戦争によって変わってしまった人間模様の戦後・後半部へと様相をがらりと変えてゆく。そこで友情や男女の愛を溶鉱炉のように変化させてしまった戦争の影響が陰影深く辿られ最大の悲劇に向かってゆく。

 本書は、戦前部分よりも戦時部分のある特殊な悪夢体験を執拗に描くことでスタートする。第二次大戦末期、出撃した爆撃機の墜落により、パラシュートで脱出した二人の英国軍兵士が、ドイツの奥深くに逃げ延びる。追い詰められた彼らは病院列車に飛び乗り、死んでゆく親衛隊将校らに成り代わって生き延びるが、彼らはそのまま精神を病んだ者として、<アルファベット・ハウス>と呼ばれる過酷な施設での日々を余儀なくされる。さらに命を狙う四人組、脱走、死闘、空爆による施設の壊滅……と、これだけで第一部は終了する。

 作者はしかし、「これは戦争小説ではない」と書いている。その通り、第二部は、生き別れた友のことを人生の十字架として感じている兵士が30年後のドイツへ赴くことで展開する新たなストーリーである。日々、死を意識させられて心まで病んでいたアルファベット・ハウスの記憶を軸に、あの四人組の残党と、置き去りにしてきた友との罪と贖いと許しの物語である。

 人間の心を弄ぶ病院施設というと映画『カッコーの巣の上で』を思い出す。何と、作者は父が精神科医だったため幼少の10年間を精神病院で育ったそうである。そこでは患者が本当に精神を病んでいるのではなく、ふりをしているかもしれないという疑惑を常に感じていたそうである。それゆえ仮病が可能な病気としての精神病院という施設、そこでしか起こりえない陰謀、恐怖などがスリラーのモチーフとしてこの物語を構成しているようである。

 精神への打撃を受けた友と、彼を救い出しに来た幼な馴染みは、少年時代の痛烈な思い出を共有しつつ、もう再生があり得ないような悲劇と犠牲を交感する。ナチというなんとも重たい歴史的題材に、人間を心身ともに支配するという最大の悪を表現してみせた力作である。これがデビュー作とは、そしてこの本の完成に8年を費やしたとは。作家としての活躍が光る『特捜部Q』シリーズ以前にこれほどの傑作をものにしていた作者、やはり只者ではなかったのである。

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2015年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

割と関係にもえつつも、
もし友人を置いてくることがあったら、至急且つ速やかに助けにいくべし、と思いました。
深夜プラスワンを読みたくなる雰囲気。

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2016年05月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第1部は汚いし残酷だし、読むのが辛かった。裏表紙のあらすじがなかったら、読み切れなかったかも。
第2部からも、ひどい暴力でどうなるのか先が気になるから、読み続けたけど苦痛だった。
恐怖にさらされて生きていくことが、心に いかに悪く作用するのか分かった。
ジェイムズとペトラが今後幸せになればいいけど。

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2015年10月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特捜部Qの作者のデビュー作。第二次世界大戦中にイギリス空軍のパイロット2人が不時着したドイツで精神病院に偽患者として隠れて過ごし、一人だけが脱出に成功。そして二十数年が経った後の物語。
スリリングなアイデアと予想もつかない方向に展開するストーリーは素晴らしい。相変わらず名前を覚えるのが苦手なのが悪いのだが、登場人物たちが本名以外に偽名を持ってたりするので本当にややこしい。途中で人物を特定するのを放棄したので、やや面白さを味わうことができなかったかも。
七四式銃にまつわる話は、まさか東の果ての国で、文化教養溢るる自国の小説が読まれるとは思ってもいないからああいう描写になるんだろうな。少し悲しい。3.2

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2021年09月29日

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